コラム④ ドルトン・プランとプロジェクト・メソッド
【後藤 篤】
国際的な教育改革運動としての新教育のなかでは、教育方法の探究やカリキュラムの改造が進められていきました。ここでは、アメリカ新教育(=進歩主義教育)の代表的実践の一つであるドルトン・プランとプロジェクト・メソッドについて紹介してみたいとおもいます。
【ドルトン・プラン】
ドルトン・プランは、H. パーカースト(1887-1973)によって生み出されたアメリカ新教育を代表する教育方法です。マサチューセッツ州ドルトンの4年制中等教育機関(ハイスクール)を発祥として広がりをみせたドルトン・プランは、「自由」と「協働」の原理によるものとして知られています。
古屋(2020)によると、ドルトン・プランにおいてまず教師は、子どもたちにカリキュラムの全体像を提示します。それをうけて子どもたちは、一定期間の学習計画を教師との相談をふまえて立案し、「仕事」として請け負います(「アサインメント」)。自身の立てた計画にもとづいて子どもたちは、各教科別に設けられた「実験室」を自由に移動しながら学習をすすめていきます。その一方で、ダンスや工作、演劇、音楽をはじめとする協働的な活動も重んじられ、複数学年で構成された子ども集団(「ハウス」)が基盤となって活動運営が行われます。
子どもたちの自由な学習の過程と異年齢集団にもとづく協働を重視しようとするドルトン・プランは中等教育のみならず、初等教育のなかでも実践されました。
【プロジェクト・メソッド】
アメリカ新教育のなかでは、活動的な経験による単元学習が教育方法として取り入れられました。とくに、W. H. キルパトリック(1871-1965)によるプロジェクト・メソッド(The Project Method)はその典型と称されるものです。プロジェクト・メソッドは、子どもの興味や思考の過程に着目した教育方法として、1920年代に教育現場に普及を見せます。
田中・橋本(2012)によれば、キルパトリックのいうプロジェクトとは「一定の社会的環境のなかで行われる、[学習者が]全精神を傾ける、目的のある活動」であり、この「目的ある活動」は、「①目的設定―②計画化―③実行―④事後判断」という4つの段階に分けられます。子どもの学習とは、子どもが自らの目標を定め、その達成方法を計画、実行し、結果を振り返ることである。キルパトリックは、このように考えていたのです。
これら4つの段階を通してプロジェクト・メソッドは、目標の達成による知識技能の獲得のみならず、目標に向けて自己を制御する力を子どもたちに身につけさせようとしました。それは、当時のカリキュラム改造運動における教科中心と活動中心の対立に、「プロジェクト」という考え方を導入することで、理論的な総合を図ろうとするものであったともいわれています(市村 2017)。
参考文献
市村尚久(2017)「進歩主義教育」教育思想史学会編『教育思想辞典 増補改訂版』勁草書房)
古屋恵太(2020)「第10章 アメリカの教育思想 第1節 進歩主義教育運動の思想」(眞壁宏幹編『西洋教育思想史〔第2版〕』慶應義塾大学出版会)
田中智志・橋本美保(2012)『プロジェクト活動——知と生を結ぶ学び』東京大学出版会