y-knotシリーズ

一般の方向け

2023/3/8 最終更新

第2章

目次


Chapter structure

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キーワード

優生保護法 / マイノリティ / 当事者 / 差別 / 近代 / 能力主義 / 傷痍軍人 / ハンセン病 / クレペリン / 私宅監置 / ビネー / 隔離と収容 / 身体障碍者福祉法 / 更生 / 精神衛生法 / 精神薬理学 / 知的障害者福祉法 / 重症心身障害 / コロニー / 発達保障論 / ノーマリゼーション / 自己決定 / 地域 / 自立生活 / 自立生活運動 / 作業所 / 精神保健法 / 精神保健福祉法 / 早期発見・早期対応 / 乳幼児健診制度 / カナー / 障害者権利条約 / 就労支援 / 契約制度 / 障害者総合支援法 / 発達障害者支援法 / 特別支援教育 / 「私たち抜きに私たちのことを決めるな」 / 障害のあるアメリカ人法 / 社会モデル / インクルージョン / 障害者差別解消法 / ろう文化 / 当事者研究 / 相模原事件 / 障害受容 / 対話 / 関与しながらの観察 / エイブリズム

 

Quiz クイズ

Q2.1 私たちの過去に実際にあったのはどれでしょうか。
a. かつて日本では精神障害のある人は家の中の牢屋のようなところに閉じ込められていた。
b. 戦後,障害者施設の建設が進んだのは障害のある人の親の願いでもあった。
c. 障害のある人の合法的な不妊手術(断種)が世界各国で行われた。
d. 戦後,障害のある子どもが小学校に通えないことがあった。

 

Q2.2 障害者差別解消法で禁止されている「障害を理由とする不当な差別的取扱い」に相当するのはどれでしょうか。
a. レストランが,盲導犬を同伴していることを理由に入店を断った。
b. 病院の医師が,障害のある本人を無視して,付き添いの人だけに話しかけた。
c. 不動産会社が,アパートを探しに来た障害のある人に対して,「障害者向けの物件はない」と言って対応しなかった。

 

[★ウェブ追加分:書籍非掲載Quiz]
★Q2.3 「インクルージョン」を説明するものとして,正しいのは次のうちどれでしょうか。
a. 障害のある人をとにかく治していこうとする理念。
b. 障害のある人が,普通の生活を確保するという理念。
c. 障害のある人を排除し,孤立させるのではなく,包み込むという概念。

 

★Q2.4 障害のある人の人権保障の取組みはいつからでしょうか。国連は,第2次世界大戦後,世界人権宣言を採択して人権が世界秩序の基本原理であることを示した後,特に人権が侵害されやすい人たちの人権保障のために個別の条約を制定してきました。そのうち,最も新しくつくられたのはどれでしょうか。
a. 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女性差別撤廃条約)
b. あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)
c. 障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)
d. 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)

 

★Q2.5 障害のある人が,福祉支援のなかで働くことを福祉的就労といいますが,福祉的就労は「普通」の就労と異なり,最低賃金などを定める労働基準法などの労働法規の対象になりません。福祉的就労の主な場所である,就労継続支援(B型)というところで働く人の平均工賃は,月額どのくらいでしょうか。
a. 2万円未満 b. 2万円以上5万円未満 c. 5万円以上10万円未満 d. 10万円以上20万円未満 e. 20万円以上

 

Exercise エクササイズ

2.1 自分の立ち位置を感じながら,こころを動かすレッスンをしてみよう:相模原事件とは,2016年7月26日未明,神奈川県相模原市にある知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者など45 人が次々に刃物で刺された殺傷事件のことです。入所者19人が死亡,職員2人を含む26人が重軽傷を負いました。殺人事件の犠牲者数としては,戦後最悪とされる事件です。事件の動機について,逮捕された元職員は「障害者はいなくなればいい」などと,障害のある人の存在そのものを否定する供述をして,SNSなどではその供述に同調するような声も聞かれました。元職員は,2020年3月16日,死刑判決を受けました(2022年4月に再審請求)。被害者の実名は公表されていません。その理由の1つに,偏見や差別に苦しんできた遺族の思いがあります。被害者がどのように生きたのか,せめて少しでも感じられるような手がかりとして,家族や周囲の人たちがその人となりや思い出を記したサイト「19 のいのち」https://www.nhk.or.jp/d-navi/19inochi/(NHK)があります。胸の痛む内容です。無理はしなくてよいので,どなたか1人の記事だけでも読んでみましょう。自分の感じたこと,思ったことをなんでもよいのでことばにしてみましょう。

 

[★ウェブ追加分:書籍非掲載Exercise]

★2.2 障害者運動について掘り下げてみよう。
青い芝の会の運動のドキュメンタリーが以下のYouTubeで紹介されています。
街に出よう-福祉への反逆-(前編)https://www.youtube.com/watch?v=AOq2IgmbtB8
街に出よう-福祉への反逆-(後編)https://www.youtube.com/watch?v=O3WPcr1SGEw
動画を視聴し,以下のA, Bについて考えて,話し合ってみよう。

 A. 映像のなかで,障害者運動に携わる横塚さんが,テレビは鏡であって,テレビに映される街の人たちの様子から,障害者とはこのように扱われている存在なのだと知るのだと語っています。テレビは私たちにとっても鏡です。障害のある人を見て,街の人たちがどのような表情や振る舞いをして,何を言っているか,よく見て,感じたことを話し合ってみよう。

 B. 障害のある人が,この運動を通して何を伝えようとしているのか,テキストも併せて,考察してください。

 

引用・参照文献

  • 阿部あかね(2010).「1970年代日本における精神医療改革運動と反精神医学」『Core Ethics』6,1-11.
  • 荒井裕樹(2020).『障害者差別を問いなおす』筑摩書房
  • 綾屋紗月・熊谷晋一郎(2010).『つながりの作法――同じでもなく違うでもなく』NHK出版
  • 安積純子・岡原正幸・尾中文哉・立岩真也(2017).『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』第3版,生活書院
  • Blatt, B., & Kaplan, F.(1974). Christmas In Purgatory: A photographic essay on mental retardation. Human Policy Press.
  • 東田直樹(2014).『跳びはねる思考――会話のできない自閉症の僕が考えていること』イースト・プレス
  • 石川准・長瀬修編著(1999).『障害学への招待――社会,文化,ディスアビリティ』明石書店
  • 石川憲彦(1990).「幼児期・児童期の発達障害」鑪幹八郎・村上英治・山中康裕編『臨床心理学大系 第12巻 発達障害の心理臨床』金子書房
  • 伊藤亜紗(2019).『記憶する体』春秋社
  • 伊藤順一郎(2012).『精神科病院を出て,町へ――ACTがつくる地域精神医療』岩波書店
  • 鎌谷勇宏(2010).「社会保障領域における自己決定概念に関する一考察――医療と福祉における議論から」『四天王寺大学紀要』49,85-104.
  • 木村敏(2006).『自己・あいだ・時間――現象学的精神病理学』筑摩書房
  • 木村晴美・市田康弘(1995).「ろう文化宣言――言語的少数者としてのろう者」『現代思想』23 (3),354-362.
  • 厚生省(1956).「厚生白書(昭和31年度版)
  • 熊谷晋一郎(2009).『リハビリの夜』医学書院
  • 栗田季佳(2020).「排除しないインクルーシブ教育に向けた教育心理学の課題――障害観と研究者の立場性に着目して」『教育心理学年報』59,92-106.
  • 栗田季佳・星加良司・岡原正幸(2017).『対立を乗り越える心の実践――障害者差別にどのように向き合うか』大学出版部協会
  • 呉秀三・樫田五郎(1920).「精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的視察:附・民間療方ノ実況等
  • 松本雅彦(1996).『精神病理学とは何だろうか』増補改訂版,星和書店
  • 文部科学省(2002).「参考2『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査』調査結果」『今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)』
  • 本橋哲也(2005).『ポストコロニアリズム』岩波書店
  • 内閣府(n.d.b).「障害を理由とする差別の解消の推進
  • 中村高康(2018).『暴走する能力主義――教育と現代社会の病理』筑摩書房
  • 中西正司・上野千鶴子(2003).『当事者主権』岩波書店
  • NHK(2020).「知的障害者の施設をめぐって 第4回 コロニーの時代の紆余曲折」NHK福祉情報サイトハートネット
  • NHK(n.d.).「19のいのち
  • 日本精神神経学会(2015).「歩み3:私宅監置と拘束具」『写真で見る学会百年の歩み』
  • 西原和久・杉本学(2021).『マイノリティ問題から考える社会学・入門――差別をこえるために』有斐閣
  • 小川喜道・杉野昭博編著(2014).『よくわかる障害学』ミネルヴァ書房
  • 尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉編(2018).『標準精神医学』第7版,医学書院
  • 小澤勲(1984).『自閉症とは何か』精神医療委員会
  • 佐々木洋子(2011).「日本におけるADHDの制度化」『市大社会学』12,15-29.
  • 佐藤久夫・小澤温(2016).『障害者福祉の世界』第5版,有斐閣
  • サトウタツヤ・高砂美樹(2022).『流れを読む心理学史――世界と日本の心理学』補訂版,有斐閣
  • 澤田誠二(2008).「戦後教育思想としての発達保障論と『能力=平等観』」『東京大学大学院教育学研究科紀要』47,131-139.
  • 柴崎正行(2002).「わが国における障害幼児の教育と療育に関する歴史的変遷について」『東京家政大学研究紀要1 人文社会科学』42,101-105.
  • 清水貞夫(2010).『インクルーシブな社会をめざして――ノーマリゼーション・インクルージョン・障害者権利条約』クリエイツかもがわ
  • 清水貞夫(2018).『強制断種・不妊,障害者の「安楽殺」と優生思想――強制不妊手術国家賠償請求訴訟と津久井やまゆり園事件』クリエイツかもがわ
  • 愼英弘(2017).「障害者の歴史試論――本質と副次」『四天王寺大学大学院研究論集』11,5-21.
  • 篠原睦治(1979).「養護学校義務制化と親のねがい――就学要求を越える『共生 共育』願望」『教育学研究』46 (2),35-43.
  • 杉本章(2008).『障害者はどう生きてきたか――戦前・戦後障害者運動史』現代書館
  • 鈴木勉(2017).「脱貧困=共生社会のグランドデザイン――障害のある人々の平等回復に関する考察を通して」『佛教大学総合研究所共同研究成果報告論文集』5,121-133.
  • 鈴木勉・田中智子編著(2019).『新・現代障害者福祉論』法律文化社
  • 障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会(2021).「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会報告書
  • 田中千穂子(2021). 『関係を育てる心理臨床――どのようにこころをかよわせあうのか 専門家への手びき』日本評論社
  • 田中千穂子(2021).『関係を育てる心理臨床――どのようにこころをかよわせあうのか 専門家への手びき』日本評論社
  • 寺本晃久(2000).「『知的障害』概念の変遷」『現代社会理論研究』10,195-207.
  • 上田敏(1980).「障害の受容――その本質と諸段階について」『総合リハビリテーション』8,515-521.
  • 上田敏(2020).「『障害受容』再論――誤解を解き,将来を考える」『リハビリテーション医学』57,890-897.
  • 上野一彦(2017).「特集 限局性学習症(学習障害) 総論:教育より」『児童青年精神医学とその近接領域』58,343-350.
  • 浦河べてるの家(2005).『べてるの家の「当事者研究」』医学書院
  • 横塚晃一(立岩真也解説)(2007).『母よ! 殺すな』生活書院
  • 米本昌平・松原洋子・橳島次郎・市野川容孝(2000).『優生学と人間社会――生命科学の世紀はどこへ向かうのか』講談社

 

追加資料

★「表 障害小史(年表)」