y-knotシリーズ

一般の方向け

2026/4/27 最終更新

1章p35 web教材⑤

日本人の基本感情の表情表出

 

表情には,文化をこえて共通する側面がある一方で,その表し方や読み取り方には文化差もみられます。Sato et al. (2019)の研究では,日本人成人65名が,基本6感情について,①典型的な表情写真をまねる条件と,②感情を喚起する場面を想像して自然に表情を作る条件の2つで表情を表出しました。これらの表情は,FaceReaderという自動表情分析ソフトで分析され,感情の強さや顔の動きの特徴が比較されました。その結果,写真を模倣した条件では理論どおりの典型表情が比較的明確に現れましたが,場面を想像して表出した条件では,はっきりとターゲット感情が表れたのは主に喜びと驚きであり,その他の感情では理論上の典型表情とずれがみられました。これは,日本人も典型表情を作ること自体はできるが,実際の場面で自然に表れる表情は,理論上の標準形そのものではない可能性を示しています。

 

この知見は,「表情は世界共通か」という問いに対して,単純に肯定も否定もできないことを示しています。すなわち,感情と表情の対応にはある程度の共通性がある一方で,実際の表出は文化的慣習や対人場面の影響を受けて変化しうる,ということです。さらに,表情の読み取りについても,日本人は目の情報を,アメリカ人は口の情報を相対的に重視しやすいことが報告されており,表情の文化差は「どう表すか」だけでなく「どう読むか」にも及ぶと考えられます。佐藤らの研究は,こうした文化差を,実際の日本人の表情表出データから具体的に理解するうえで有用です。

 

以下の記事は,エクマンの基本感情理論―怒り・嫌悪・恐怖・喜び・悲しみ・驚きには,それぞれに対応する典型的で普遍的な表情があるという考え―を,日本人の表情データを用いて検討した研究をわかりやすく解説しています。

【有光興記】