【目次】→書誌情報はこちら
プロローグ
第Ⅰ部 基礎篇
第1章 ケアをするという倫理──二人称の科学とは何か
第2章 サイエンティスト・プラクティショナーとは何か──エビデンスに基づく心理学的な実践(EBPP)の基礎
第3章 職責としての多職種連携と資質向上──コーポレイティブでリフレクティブなスタンス
第Ⅱ部 展開篇
第4章 エビンデスに基づく心理学的実践(EBPP)
第5章 データとは何か──リフレクティブに自己検証する方法
第6章 データに基づいて「近未来」をサポートする
第7章 リサーチとは何か──「評価」との違い
第8章 リサーチの始め方──「問題解決の文脈に投げ込む」とは何か
第9章 リサーチの実際──「三方良し」で検討する
第10章 サイエンティスト・プラクティショナーにおける生涯学習
エピローグ
■Column コラム1「カレーのつくり方」から考えるEBPP/ コラム2 戦争,科学,そして心理学
■Lecture 講座①~⑥:ケアする人の対話スキル
第Ⅰ部 基礎篇
【第1章 ケアをするという倫理──二人称の科学とは何か】
Summary まとめ
・ケアとは,他者に導かれて,その他者の大切にしているものを共に大切にする営為全体のことである
・システムとは,道徳,規範,コードといった「社会的な決まりごと」のことである
・利他とは,自分の大切にしているものよりも,その他者の大切にしているものを優先することである
・倫理とは,ケアをする人が,システムから逸脱するような支援を実施するときに生じる葛藤や判断のプロセスのことである
・偽善とは,私が大切にしているもののために,相手の大切にしているものを利用することである
・二人称の科学とは,社会構成主義に基づいて,従来から使用されている科学的方法を使用することである。ただし,その目的は,あくまでもローカルな一般性の同定である
【第2章 サイエンティスト・プラクティショナーとは何か──エビデンスに基づく心理学的な実践(EBPP)の基礎】
Summary まとめ
・サイエンティスト・プラクティショナーとは,心理専門職を育成する教育モデルに付与された名称のことである
・サイエンティスト・プラクティショナーとは「科学と実践を融合させて運用できる者」である
・臨床心理学におけるサイエンス(科学)とプラクティス(実践)は,帰納と演繹が有機的に結びついた円環モデルとして捉えることができる
・エビデンスに基づく心理学的実践(EBPP)とは,患者(クライエント)がもっている特性,文化,そして好みの文脈のなかに,利用できるベストな研究知見(エビデンス)と臨床的な知識・技能を統合することである
・EBPPは,研究知見(エビデンス)の複数の流れを,トリートメント(支援・介入方法)に統合する意思決定プロセスである
【第3章 職責としての多職種連携と資質向上──コーポレイティブでリフレクティブなスタンス】

Summary まとめ
・「心理」は,「健康(障害)」に対する支援を総合的かつ適切に行うために,「生物(身体)」と「社会」を有機的にリンクさせるために欠くことのできない中軸的なものである。そのため,連携(コーポレイティブ)こそが,「心理」の主要な役割であると言える。
・心理専門職養成カリキュラム・システムが「技術的合理性」偏重を生むことにもなるため「行為のなかのリフレクション」によって,よりバランスのとれた心理専門職としての技能を発揮できる。
・心理職の「資質向上」のためには,データの収集・活用に基づくリフレクションティブが必要である。
第Ⅱ部 展開篇
【第4章 エビンデスに基づく心理学的実践(EBPP)】
Summary まとめ
・EBPP の手順はAsk(問う)→Acquire(得る)→Appraise(吟味する)→Apply(適用する)→Access(評価する)という5つの「A」で表現することができるような円環システムで記述できる。
・ステップ1(Ask)は,PICOという頭字語で表現される方法で検討される。Pは患者(Patient)や問題(Problem),Iはその問題に対する介入(Intervention),Cは比較(Comparison),Oはアウトカム(Outcome;結果や効果について検証方法)を意味する。
・STSの工夫点は,あるクライエントに対して,適切なトリートメントを選定する際に,⒜クライエントの特性をアセスメントして,⒝ ⒜に基づいて,セラピーの次元を適切に組み合わせることによって,その治療効果を最適化・最大化しようとした点にある。
・治療同盟の強さは「クライエント/セラピストの変数」と「治療同盟に影響を与える予測因子(望ましい/望ましくない)」の2×2のマトリックスで整理することができる。
・SDMとは,クライエント─セラピスト間における,トリートメントに関する意思決定であり,当該の「責任」をシェアする(双方が担う)というものである。
・WHOによる『心理学的介入の実行マニュアル─エビデンスに基づく介入を実際のさまざまなサービスに統合する』というマニュアルは,EBPPを社会実装するための提供システムの構築や運用を明示している。
【第5章 データとは何か──リフレクティブに自己検証する方法】
Summary まとめ
・データを得るには,その目的を明確にし,それに応じた適切な測度を決め,できるだけ正確に測定する方法を決める必要がある
・測度には,頻度,形態,強度,反応潜時,持続時間といったさまざまな次元が存在する
・データは,統計的な分析をする前に,必ず,図にする(グラフ化する)
・データを「読む」ときには,主として,水準,傾向,変動に注目する
・データは,反復測定であることが必要である
・データを自己検証するために,異なる条件を設定し,その条件間の結果について比較する
【第6章 データに基づいて「近未来」をサポートする】
Summary まとめ
・反復測定で得られたデータによって,異変に気づくことができる
・なぜ,そのような異変が起きているのかについての仮説を立て,新たな手立てを立案する
・データを逐次モニターしながら,その新たな手立てを微調整していく
・反復測定から得られたデータは「振り返り」と「見通し」の両方で使用できる
・EBPPにおいて「この人」のための一般化という捉え方が重要となる
・EBPPは「申し送り」を作成し伝達するまでのプロセスを含む
【第7章 リサーチとは何か──「評価」との違い】
Summary まとめ
・サイエンティスト・プラクティショナーとは「教育モデル」の名称である
・サイエンティスト・プラクティショナー・モデルに基づく実践家は,消費者,評価者,リサーチャーの3つの役割を果たすことできるよう努める
・リサーチと評価は,目的が異なる実証的な方法である
・リサーチとは,おもに科学的ニーズを探求するためのアプローチである
・評価とは,特定のプログラムなどの有効性を検証し,実践における意思決定のための判断材料を提供するアプローチである
【第8章 リサーチの始め方──「問題解決の文脈に投げ込む」とは何か】
Summary まとめ
・「なぜ?」「なにが?」「どのようにして?」の有機的な連関を実践においても重視し,リサーチにつなげる
・有効な手段を同定することができたら,そのメカニズムや原因を探究することで,さらに応用可能性を拡大させる
・医学的なアプローチは,①症候の類似性に基づいて特定のグループ分けをして,②その症候群にラベルを付け,③その症候が生じる原因を特定し,④その原因を除去・改善する,というプロセスが一般的である
・「なぜ?」と「なにが?」に対する解答が明確になれば,自ら問題解決に至るとは限らない(医学的アプローチが奏功しないときもある)
・問題解決を考えていく際には,二人称的なスタンスの保持が必須である
【第9章 リサーチの実際──「三方良し」で検討する】
Summary まとめ
・リサーチ・クエスチョンは,「個人的関心」「社会の関心」「学界の関心」という3つの観点から吟味する
・個人的関心とは,主として調査個人に限定される問題関心のことである
・社会の関心とは,実務上・実践上の問題解決に関わる関心のことである
・学界の関心とは,新しい知識,技術や理論の創造に関わる問題関心のことである
・構造化抄録とは,エビデンスに基づいた実践で利用されるデータベースを構築するうえで有効な抄録書式である
【第10章 サイエンティスト・プラクティショナーにおける生涯学習】
Summary まとめ
・大学院段階では,学部生の段階で得た知識を仕事で活かしていくために,実習を含めた実践を通して,一般知識としての心理支援と現実の心理支援とのギャップをできるだけ埋めていくことが求められています。
・ワーク・ライフ・バランスを保つためにもセルフケアを行うことが必要です。
・セルフケアは対人援助を行う者には必須であり,自分自身を守るためにも必要不可欠なものですので,自身のケアの方法を見つけていくとよいでしょう。










