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★六法の活用コラムvol.3~六法をどう使えばよいかというご質問について~

 新学期・新年度にあわせて小社六法をお買い上げいただいた方からよく六法を買ってみたものの,どう使えばよいのか分からないとご質問いただくことがあります。
 今回は,そもそも六法とは何なのか,法律の学習において六法がどう役立つのかをご紹介してまいりたいと思います。
 
~そもそも、六法とは~
 「六法を用意してきてください」
  大学の法学部に入学された新入生の方々のなかには,シラバスや講義などでこのようなことを先生から指導され,ご購入いただいた方もいらっしゃることと思います。
 そこで,六法とは何だろうと疑問に思われたかも知れません。
 「六法」とは,もともと憲法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法の六大法典を指しています。この言葉は,明治6年6月付のはしがきのある「仏蘭西法律書」で箕作麟祥博士が使用したのが最初だと思われます。同書には,ナポレオン制定の五法典(民法・訴訟法(今日の民事訴訟法)・商法・治罪法(今日の刑事訴訟法)・刑法)と憲法を収めており、それ以外のものは入っていません。六件の法という意味で「六法」と総称したにすぎなかったようです。
 今日「六法」というときには,上記の六大法典を指す意味と法令集を指す意味があります。

~六法を使う~
 法学部1年生での4月の講義では,法の理念を扱うことが中心で具体的な条文を細かく見ることはあまりないかもしれません。そのため,何のために六法を講義に持参するのだろうと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 その疑問に対するひとつの回答を示しますと
 「法律を学ぶということは,まず法律に何が書いてあるのかを知るところから始まるから」ということになりますが,かといって,もちろん,法律の条文を丸暗記してればよいわけではありません。
 法律の条文はさまざまな場合に対応できるように,抽象的に書かれている場合があるからです。
 例えば,民法709条には「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定されています。
 不法行為による損害賠償を定めた条文ですが,これを見ただけでは,どういう場合に損害賠償責任を負わなければならないのか必ずしも明らかではありません。
 この条文を知った上で,この条文をどう解釈すべきなのかという法学者の議論や実際の裁判での判断を学び,初めて709条とはどういう内容なのかを理解することができます。 

 仮にA氏がうっかり落とした高級時計をB氏がうっかり踏んでしまい,高級時計が壊れてしまった事件があったとして,A氏がB氏に対して民法上の損害賠償請求ができるのか考える際,民法709条の条文が不法行為による損害賠償に係る規定を定めていることをまず知らなくてはなりません。
 そのうえで,「B氏がうっかり踏んでしまったのは条文上の「過失」と評価できるのかどうか」「高級時計が壊れてしまったのはA氏が落としたことによるものなのか,B氏が踏んだことにより壊れたと評価できるのかどうか」「A氏もうっかり時計を落としてしまったことによる「過失」があるとB氏は主張し得るのではないか」・・・等々の法への当てはめや解釈に係る議論を吟味していかなければなりません。
  つまり,条文にこう書いてあるということを知ったうえで,その文言はどう解釈すべきなのか考えていくのが法律の学習です。
  その意味で六法を使って法律の条文を見るということが,学習の出発点になるわけです。

 結局,単に条文を読むだけなのかとがっかりされた方もいらっしゃるかもしれません。
  小社の六法には,単に法律の条文情報を載せているだけではなく,学習を深めるための編集上の工夫をしています。
 例えば,総合事項索引と参照条文がありますが,長くなりましたので別ページにて紹介いたします。