ポケ六フォローバックナンバー一覧

◆比較的大きな文字で表記された法律に施されている工夫

 ポケット六法では,憲法,行政手続法,行政事件訴訟法,国家賠償法,民法,刑法,商法,会社法,民事訴訟法,刑事訴訟法など参照度が高い法律を他の法令より大きな文字で表記しています(以下,大文字法令と称します)。 
 この大文字法令は,単純に大きな文字で掲載されているというだけでなく,次のような工夫も施されているのです。

1 準用規定の説明が付いている。

 準用規定に関して必要に応じて編集上の注記を付けて,分かりやすくしています。
 条文には,他の条文の規定を準用するという規定がおかれることがあります。準用というのは,本来は元の規定の対象と同じものではないけれども,性質からみて同様の取扱いをしたいときに用いられる手法です。
 例えば,民法372条では次のように注記しています(原典には〈〉=山括弧の部分はありません)。

(留置権等の規定の準用)
第三七二条 第二百九十六条〈留置権の不可分性〉、第三百四条〈物上代位〉及び第三百五十一条〈物上保証人の求償権〉の規定は、抵当権について準用する。

準用する条文の内容は,その都度条文にあたれば分かりますが,必要に応じて〈〉内に小文字で説明してありますので,準用規定が読みやすくなっています。
※より詳しくは,「有斐閣六法の使い方・読み方」16頁をご覧ください。

2 改正経過が付いている。

 条文の条・項・号について,その条・項・号がいつ改正されたか分かるようになっています。これにより,いつその条が改正されたのかを確認する手間が省けることがあります。
 ※より詳しい説明は本コラムvol.6及び「有斐閣六法の使い方・読み方」17頁をご覧ください。

3 参照条文が付いている。

 ある条文を読むときに,参考とすべき条文が掲げられています。
 本コラムvol.3でも紹介しましたように,条文と条文のつながりや関係性を考えて,法律全体を見渡すことにもつながりますので,学習を深めたいときや知識の確認作業にお役立ちいただけるかと思います。
 ※具体的な読み方については,本コラムvol.3及び「有斐閣六法の使い方・読み方」19頁をご覧ください。

 以上のほか,大文字法令では改正欄に全ての改正履歴を掲載しているなど(改正欄につき本コラムvol.4及び「有斐閣六法の使い方・読み方」13頁)さまざま工夫を施しています。

 六法を買ってみたけれど,いまいち活用方法が分からないという方は,まずはこれらの編集上の工夫をご利用いただけますと幸いです。

 

◆小社ホームページ内の六法情報!

 「ポケット六法に○○法は載っていたっけ?」
 「参照条文に【建物区分】って法令名の略語があるけど,正式名は何だろう?」

 ポケット六法にどんな法律が載っていたか,法令名略語の正式名が何だったかを確認したいとき,どうされていますか。
 もちろん,本体に総目次・法令名索引・法令名略語索引が付いているのでこちらをご利用いただければすぐに確認することができます。
 ただ1度に複数の法律について,収録の有無等を調べる際には手作業だとちょっと面倒だと思う方もいるかもしれません。
 そんなときには小社ホームページをご活用ください。
 ポケット六法のみならず,小社で刊行している全ての六法についてそれぞれ収録一覧が付いているので「ページ内検索」で,すぐに収録の有無をご確認できます。

 http://www.yuhikaku.co.jp/six_laws/index/criteria_back/1

  また参照条文内で使われている「法令名略語」を索引で探すのが面倒だという方も,検索できるようになっているので,すぐに略語と正式名称を照合できます。

 http://www.yuhikaku.co.jp/static/ryakugo.html

 さらに,このポケ六フォローvol.1[◆六法に載っている条文が現在効力をもっている規定とは限らない!? ] で紹介しましたように,「有効な改正前の規定」をご確認できるようになっています。

 ※「有効な改正前規定」とは↓ 「有効な改正前規定」を見てみる↓
 http://www.yuhikaku.co.jp/static/yuhikaku/HOI/po_html/phf.html

 その他,小社の公式キャラクター「ろけっとぽっぽー」が本書の活用法を紹介している誌面もアップしています(このページはご自身で探してみてください)。
 六法に関するFAQなどもご覧いただくと「六法に関するマメ知識」が入手でき,学校の友達や職場などの仲間に小ネタとして使えるかもしれません。

◆別冊の刑事訴訟法改正案が成立しました!

 ポケット六法附属の別冊に掲載している刑事訴訟法改正案が平成28年5月24日に衆議院本会議で可決され,同年6月3日官報号外123号により平成28年法律第54号として公布されました。
 「どこが改正されたのか」のご確認など,この機会にぜひ別冊をご利用ください。
 前々回(vol.5)に引き続き,別冊の見方を紹介します。

 vol.5はこちらから

~改正された条文を確認~

 今回の刑事訴訟法の改正ですが,改正情報にも記しましたように,「司法取引」と「取調べの可視化」に関する規定の新設がポイントです。
 →刑事訴訟法の一部改正
 改正情報では改正の概略を説明していますが,それぞれの文末に付してある【第●条関係】を手がかりに,別冊で該当条をご覧いただくと条文上ではどういう表現になっているかご確認いただけます。
 なお,ご覧いただくとすぐにお分かりかと思いますが,別冊の刑事訴訟法-改正案織込み-(97頁~)に掲げられている条文は,今回改正された条文・追加された条文のみです(第9条が番号移動で,第10条になっただけで条文内容には1文字も変更がないものなど,単純な条項の移動などは改正前の○○という形式などで略しているものもあります。)

 ~施行日を確認~

 それぞれ条文の後に点線枠のなかに,「第●条(政令●年内施行)による改正」などと注記されていますが,これは97頁の冒頭に説明書がありますように,施行日(今回の話でいえば,当該条の改正が効力を持つ日にち)について記したものです。
 ※法律は成立したからといって,すぐさま効力を持つとは限りません。ある一定の周知期間や当該法律に関係する政令や省令を定めるための準備期間が置かれることがあります。施行日の詳しい説明についてはポケ六フォローvol.1有斐閣六法の使い方・読み方をご参照ください。

 施行日ということは分かったけれども,「第1条(政令6月内施行)による改正」「第1条(20日経過日施行)による改正」などに関して,そもそも「第1条による改正ってどういうこと?」「同じ1条による改正なのに,施行日が違うのはどうしてだろうか?」などという疑問を持たれるかもしれません。

 ~改正法の成り立ち~

 ある法律が改正されるというときには,典型的には「A法の一部を改正する法律」を立法することで,A法を改正するという形が多いです(他の形式については,使い方・読み方の9頁をご覧ください)。
 A法の一部を改正する法律の中身の条文は,『第○条中「□□」を「■■」に改め,「△△」の下に「▲▲」を加え,「☆☆」を削る』といった内容です。
 もっともA法の一部を改正する法律において,「A法」のみが改正されるとは限りません。
 A法において,別な法律を引用している場合やA法に関係ある制度を定めている場合などはA法の内容が変わるのに伴い,必然的にA法に関係する他の法律も改正しなければなりませんので,そのような場合,A法の一部を改正する法律に,A法以外の法律の改正内容も含まれていることがあります。
 今回のケースでいえば,「刑事訴訟法の一部を改正する法律」という法律が成立しており,その中には刑法など関係法律の改正も含まれています。

 ~分割施行~

 突然話が変わりますが,法律の成り立ちとしまして,本則と附則があります。
 本則は皆さん見慣れている部分で(民法でいえば,第1条~第1044条,刑法でいえば第1条~第264条),法令の主体をなしているものです。
 一方,附則は,本則に対して施行日や法改正にあたっての経過的な措置など付随的な規定を設けています。
 「刑事訴訟法の一部を改正する法律」にも本則と附則があり,附則第1条において,施行日を定めています(別冊108頁参照)。
 ここをご覧いただきますと,本則第1条にて定めた改正の規定のうち,

・「刑事訴訟法第90条,第151条,161条に関する改正規定」は,公布の日から起算して20日を経過した日から施行されること(附則第1条第2号)
・上記以外は公布の日から起算して6か月を超えない範囲内において政令で定められる日において施行されること

 が読み取れます。

 比較的大きな改正の際には,このように段階的に改正が施行されることが多いようです。
 今回の改正でも司法取引に係る規定の新設に関する施行日は,「平成30年6月2日までに政令で定める日施行」などと施行までに長い準備期間(又は周知期間)が予定されています。
 複雑な話で恐縮ですが,結局ここで申し上げたいことは「ある改正法が効力を生じるのは必ずしも一斉ではなくて,段階的に効力が生じることがあるのだ」ということ,そして「今回の刑事訴訟法の改正はまさにそのケースである」ということです。
 施行日がいつかということをご注意いただきながら,改正情報及び別冊をご覧頂ければ幸いです。
~~

◆改正条には傍線を引いています!

 「この条は昨年あたりに改正があったんだっけ?」
 六法をご覧いただくなかで,ふとこんなことを思ったことはありませんか。
 過去1年くらいの間に,改正があったのか,なかったのか。
 今回は,ポケット六法本体で改正経過について施している編集上の工夫を紹介したいと思います。
 
 まずポケット六法をご覧いただくなかで,第○条の横に傍線が引っ張ってある部分とない部分があるのにはお気づきでしょうか。
 例えば,公職選挙法第9条(ポケット六法64頁)のところをご覧ください。
 第9条には傍線があり,第10条の横には傍線がありません。
 これは,前年版から改正があった条に対して傍線を付して,当該条文に改正があったのかなかったのかを明らかにしたものです。
 つまり,28年版でいえば,平成27年版ポケット六法基準日後(2014年9月1日以後)から平成28年版同書基準日(2015年10月1日)までの間にあった改正条に傍線を付しています。

  ここ最近(約1年間)にある法律が改正されたことを知っている場合などに,どの条文に改正があり,改正がなかったのか知るのに役立てていただけるのではないでしょうか。

  また,ポケット六法のうち,目次で◎のマークがついている法令(大文字法令)には,条文の条,項,号がいつ改正されたのか分かるようにそれぞれ末尾の( )内に改正した法令番号を注記しています。
 その注記には,次のようなものがあります(以下は条の場合ですが,項・号でも同様です)。
 第○条 削除(平成○法□)
 第○条……(平成○法□本条全部改正)
 第○条……(平成○法□本条改正)
 第○条……(平成○法□本条追加)

 ただし,次の3つの注意が必要です。
①一つの条・項の中ですべての項・号に改正があった場合には,個々に注記せず,条や項の最後に別行で改正経過を注記しています。

②条文に改正があった場合でも,形式的な改正(例えば,第2条が単に第3条に繰り下がったなど,単純な条文の引用条・項数の改正など)は省いています。したがって,刑法,民法のひらがな・現代語化についても各条への注記は省いています(一部のものは,現代語化以外の実質的改正があったと判断して改正注記を加えています)。なお,民法第1編から第3編までの部分に関しては,上記ひらがな・現代語化(平成16法147)により全部改正される以前の改正表示も参考のため残してあります。

③昭和20年8月14日までの改正の注記は,講学上必要と思われるものにとどめています。また,ある編・章・節などの全部が改正あるいは追加されたときには,その編・章・節などの題名の下に一括して注記しています。

  以上のように,条文の改正経過について,編集上の工夫を施していますので,機会があれば,ご活用いただき,読者の皆様の学習や調査研究活動にお役立てていただけますと幸いです。

◆別冊の読み方・使い方

~現行の法律ではありません~

 ポケット六法買ったら,緑色の冊子が付いてきたけれど,これは一体どう使うのかと思った方もいらっしゃることと存じます。
 表紙に民法改正案,刑事訴訟法改正案と書いてありますとおり,あくまで「改正案」であり,現行法ではありません。
 このように聞くと「法律を調べるための六法なのに,現行法でもないものを別冊にして付けてくるなんて,なんとも紛らわしい,けしからん。」とお怒りになる方もいらっしゃるかもしれませんが,その前にもう少しご辛抱いただき,おつきあいいただければと思います。

~なぜ掲載されているか~

 別冊の表紙をめくっていただくと「まえがき」がございます。
 そこには,「9月に閉会した第189回国会(通常国会)において継続審査となった法律案のうち、「民法の一部を改正する法律案(債権関係)」「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(取調べの可視化・司法取引の導入等)」による改正規定を織り込んだ民法と刑事訴訟法を別冊にまとめました」などと記載されていますが,平たく簡素に言い換えますと「昨年(2015年)の通常国会では成立しなかった改正案だけれども,今年の通常国会でも審査する=成立する可能性が残されていて,民法と刑事訴訟法という主要な法律の改正案なので,掲載しました」ということです。
 つまり,ポケット六法刊行時点(2015年10月時点)で,刊行後に重大な改正が入るおそれがあったため,その場合にも備え,別冊として,改正後の規定を掲げたのです。

 ~その後の状況~

 ここで「えーっと,では結局その後,今年の国会でその民法と刑事訴訟法の改正案は成立したのでしょうか(あるいは,改正案は成立するのでしょうか)」ということが気になると思います。
 残念ながら,2016年4月末現在では,上記2つの改正案とも成立までには至っていません(報道などによりますと,刑事訴訟法の改正案は今年の通常国会で成立するのではないかとする見立てもありますが,国会運営は政治に左右されるため,確実なことは言えないというのが現状です。2016年6月追記:刑事訴訟法の改正案について5月24日に衆議院本会議にて可決,成立。6月3日付けの官報にて法律第54号として公布されました。民法の改正案については衆議院にて閉会中審査とされています)。

~結局,どう使うとよいのか~

 この別冊の改正案は未だ成立していませんので,特別今すぐ役にたつものではないかもしれません。
 ただ,「改正案」があるということは,現行法を修正しようという動きがあるということです。
 なぜ改正しなければならないのか,どういった趣旨で新たな規定を定めようとしているのか,この別冊に掲載されている改正後の規定(民法で第○条の横に傍線が引いてあるもの)をパラパラと眺めながら,現行法の問題点を探ってみると逆に現行法への理解が深まるかもしれません。

 また,さらに勉強を進めたい方向けですが,参照条文が現行法と比べどのように変化するかを調べてみると,体系的な学習に役立つかも知れません。(※民法のような主要法律を改正するときには,民法の規定の引用をするものや民法の例外規定を定める他の法律も改正する必要が出てくるときがあります。そのようなときには,「民法そのものの改正案」だけでなく,「整備法」という形で,「多数の関係法律を改正する改正案」も同時に国会に提出され,審議されます。今回の別冊民法の参照条文は,民法改正に伴う整備法による改正を反映しているので,現行法とは異なります)。
 何にせよ,「へえ,民法と刑事訴訟法は,将来改正される可能性があるのだな~」くらい気楽にご覧いただければ幸いです(2016年6月追記:刑事訴訟法の改正案について5月24日に衆議院本会議にて可決,成立。6月3日付けの官報にて法律第54号として公布されました。民法の改正案については衆議院にて閉会中審査とされています)。

◆六法を手がかりに改正遍歴などを辿る

 「六法で法律を引くと,法律の題名の下や脇のほうに「昭和●●法○○」「平成△△法□□」等々,書いてあるけれど,これは何だろう?」と思われたことはありませんか。
 これらは法令番号と呼ばれるものです。
 例えば,ポケット六法755頁の会社法をご覧ください。「会社法」との題名の直下に(平成17・7・26法86)との記載があることと思います。
 これは平成17年7月26日付けの官報で会社法が公布されたことを示しています。
 次に法86ですが,これは法律第86号を略したもので,(平成17年に制定された法律のうち)86番目に制定された法律という意味合いになります。

 題名のヨコ側に目をやると「施行」「改正」という項目立てがあり,ここにも暦年と番号が並んでいます。
 「施行」欄では,平成18年5月1日から施行されたということは一目瞭然かと思いますが,下に(平成18政77)との記載があります。これは,平成18年の政令第77号によって会社法(平成17法86)の施行日が定められたということを示しています。
 「改正」欄に目を向けると「平成18法50」を筆頭にぞろぞろと記載がありますが,これはもうお分かりかも知れません。平成18年の法律第50号…平成27年の法律63号によって,改正がなされたことを示します(ご覧の通り,同じ年に2回以上改正があるときは,最初に年号を示し,ナカグロ(・)で区切って法番号だけにしてあります。また,「平成26法90」のように重要な改正は,ゴシックで示しています)。
 ※なお,法令番号のより詳細な解説については「有斐閣六法の使い方・読み方」(12,13頁)を,施行欄及び改正欄の見方につきましては,ポケット六法本体「凡例」(3頁)及び「有斐閣六法の使い方・読み方」(13頁)もあわせてご覧ください(「有斐閣六法の使い方・読み方」は下記PDFからもご覧いただけます)↓↓
 https://www.yuhikaku.co.jp/yuhikaku_pr/pokeroku2016/wp-content/themes/yuhikaku_wp_pokeroku2016/howtoroppou.pdf

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 では,いったいこれらの法令番号が分かることで何が便利なのでしょうか。

1 官報の記事を探すのに使える。
 官報(六法の原典)で公布されたときのママの条文を見たい,○○法の一部を改正する法律(一部改正法)で具体的な改正箇所を知りたいといった場合にこれらの法令番号が分かっていれば,官報の目録を使って何月何日のどの官報に見たい法令が掲載されているかをすぐに確認でき,検索に便利です。

 ※官報・・・・・・法令などの公示事項を掲載している国の機関誌で,独立行政法人国立印刷局が発行しています。

2 同一法令名のものでも区別が付けられる。
 例えば,公職選挙法の改正欄において,同法を改正する法律名を書き出してみるとすると,過去3年だけでも「公職選挙法の一部を改正する法律」という同一名の法律が4件出てきます。
 これを列挙するよりかはシンプルに法令番号があった方が便利ではないかというわけです。
 また,法令が全部改正された場合にも改正前と改正後で同じ名称の場合があります。例えば,平成26年に全部改正された行政不服審査法。同改正前の法令番号は昭和37年法律第160号,同改正後の法令番号は平成26年法律第68号。法令番号を見れば,どれが改正前で改正後かもすぐに見分けがつきます。

 3 法令の題名に改正があった場合においての確認作業に使える。
 さらに,法律の題名が変わってしまった場合においても有用です。
 いわゆる安保法制によって「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(改正前の名称)」は「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」と題名改正されました。
 題名改正のことを知らなければ,一瞬,別な法律かと思ってしまいますが,法令番号が平成15年法律第79号と同一なので,題名が改正されたものだとすぐに気づけます。
 ※もっとも,ポケット六法では題名に改正があった法令は,改正法令の法令番号とともに旧題名を示しています(353頁参照)。

  このように見てみると法令番号はある種法令の“戸籍”のような役割を果たしているように思います。
 法令の改正遍歴を調べる際などには,まずは六法に記載された改正欄の法令番号をご確認いただくとスムーズかも知れません。

◆六法を広く深く読むためのお役立ちツール

 昨年12月の最高裁判決を受けて民法の改正が検討されている「再婚禁止期間」。
 今夏の参議院選挙から適用されることで話題の18歳の「選挙権」。
 最近,著名人のスキャンダルなどで取り上げられる「不貞行為」。
 日常生活でさまざまな法律に関わる用語を見聞きすることもあるかと思います。
 
 そのような用語と関係が深い法律や条文を知りたいときにポケット六法の最終ページ(2010頁)にある「総合事項索引」が役立ちます。
 例えば,「再婚禁止期間」の項を引くと民733.744.746とあります。これは民法733条,744条,746条を参照せよという意味です(法令の略語については,ポケット六法巻末をご覧ください)。
 そこで民法733条を見てみますと「女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」と定められています。これが昨年の最高裁判決を受けて改正が予定されている再婚禁止期間の規定です。
 では他の条文はというと,民法744条は不適法な婚姻の取消しの請求について定められており,民法746条には再婚禁止期間に違反した婚姻であっても,所定の場合にはその取消しを請求することができないと書かれています。
 つまり,この3つの条文を参照すると,再婚禁止期間そのもののみならず,再婚禁止期間に違反した場合に係る規定について知ることができます。

 ここでもういちどポケット六法で民法733条を見てみますと,条文の末尾になにやら小さな数字や文字などが掲載されていることかと思います。
 これらは民法733条を読み解くうえで参考となる条文を示しているものです。(※記号の読み方については,ポケット六法本体の凡例(4頁)中にある<参照条文>の項又は「有斐閣六法の使い方・読み方」の19頁をご覧ください。「有斐閣六法の使い方・読み方」PDF版をこちらからご覧いただけます↓↓)
 https://www.yuhikaku.co.jp/yuhikaku_pr/pokeroku2016/wp-content/themes/yuhikaku_wp_pokeroku2016/howtoroppou.pdf
 
 さて,参照条文中に白抜き数字1の次に【前婚の解消又は取消しの日→764.739.770.743という記載があるかと思います。これは民法733条第1項の条文中にある「前婚の解消又は取消しの日(すなわち,再婚禁止期間の起算日はいつか)」について,民法764条,739条,770条,743条を参考にせよとの意味です。例えば民法764条を読むと,739条の婚姻の届出に係る規定は協議上の離婚について準用するとありますので,協議離婚の場合には,離婚の届出の日が「前婚の解消の日」とされていることが分かります。
 
 このように参照条文を辿っていくと,条文と条文の関係性などがよく分かり,個々の規定のみならず法制度全体に関する理解を深めることができます。気になる用語があったとき,より条文を読み込みたいときなど「総合事項索引」と「参照条文」をご活用いただければ幸いです。

◆○○法は六法に載っている?載っていない?

~法律の“通称”いろいろ~

 遅くなってしまいましたが,読者のみなさま,あけましておめでとうございます。
 改めて2015年を振り返ってみますと年始に“人名漢字”に関する話題(人名漢字に「巫」を追加する等の戸籍法施行規則の改正)があり,年末に“姓”に関する話題(夫婦別姓に関する最高裁の判決)があがるなど,“名前”に関する法令について触れられる機会が多い1年だったように思います。

 夫婦別姓に関しては,通称使用に関する議論もありましたが,法律の名前においても通称と正式名称があります。
 例えば,昨年9月に改正された「労働者派遣法」「派遣法」等と呼称される法律の正式名は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」です。
 また「独占禁止法」の正式名は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」。テレビや新聞などの報道では,正式名よりも通称の方が多く用いられているので,「労働者派遣事業の適正な…」「私的独占の禁止及び…」などと聞いてもピンと来ない方も多いかもしれません。

 一方で,一般的な六法では国の機関紙である官報で公布された法令名(正式名)を掲載しているものが多いことと思います(目次などで「独占禁止法」を探しても「独占禁止法」が見当たらず困ったという経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか)。 小社の六法も正式名にて掲げていますが,もし探したい法令の正式名がわからず,通称は知っているという場合は「法令名索引」を利用してみてください。
 「法令名索引」は,法令の正式名のほか通称や略称の主なものも五十音順で引けるようにしています。ただし,「債権法」「家族法」など法令の一部を指す通称は掲げていませんし,ありとあらゆる通称や略称を掲げているわけではありませんのでご注意ください。
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☆通称”安保法案”とポケット六法

 さらに昨年話題となった“安保法案”。文脈にもよりますが,多くの報道では「自衛隊法などの法律を改正する法案」と「国際平和支援法と通称される新法案」をまとめて“安保法案”と呼称していたように思います。
 「“安保法案”はポケット六法に掲載されていますか?」というお問い合わせを頂くことがありますが,その回答は以下のとおりです。

(1)自衛隊法などの法律を改正する法(案)〔平成27・9・30法律第76号〕
 正式名は「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律(案)」です。
 これにより改正された法律のうち,ポケット六法では
 ○自衛隊法(抄)
 ○国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(抄)〔通称:PKO法など〕
 ○武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律〔通称:武力攻撃事態法,事態対処法など〕(改正前は「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」)
 ○道路交通法(抄)
 ○内閣府設置法(抄)
 を収録しているので,これらの法律に改正内容を反映させて掲載しております(なお,収録形態が「抄」になっているものは,一部の条文が略されています)。

(2)国際平和支援法(案)〔平成27・9・30法律第77号〕
 正式名称は,「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(案)」で,これについては全文収録しています。

 小社六法にある法律が載っているかいないかは,各六法の索引の他,下記のウェブページの右端で検索できますのでお試しください↓↓
 http://www.yuhikaku.co.jp/roppo/index.html
 
 また小社六法における法令の引き方は「六法の使い方読み方」(3頁目)をご参照ください↓↓
 https://www.yuhikaku.co.jp/yuhikaku_pr/pokeroku2016/wp-content/themes/yuhikaku_wp_pokeroku2016/howtoroppou.pdf

 六法を使って調べものをするときの一助となれば幸いです。

◆六法に載っている条文が現在効力をもっている規定とは限らない!?

 小社の六法では,改正法令が公布されれば,その改正法令が定めている改正内容を現行の条文に織り込み,改正後の条文を掲載することを原則としています。しかしながら,改正法令が公布されたからといって,ただちに改正後の条文が効力をもつとは限りません。現実に改正法令が作用し,改正後の条文が有効となる「施行」まである一定期間を置く場合があります(つまり,公布日と施行日は必ずしも一致しないことがあります。改正内容を国民に周知するための期間,改正法に関係する政省令の整備のための準備期間等が必要となる場合があるからです。例えば,平成26年に成立した会社法の一部改正法の公布日は平成26年6月19日,施行日は平成27年5月1日でおよそ1年の周知・準備期間が設けられました)。

 そのような場合,改正法令の効力が発生するまで効力をもっているのは改正を織り込む前の規定になりますが,ポケット六法に掲載している条文は既に改正が織り込まれた規定であるため,ポケット六法の本体で,実際に効力をもっている規定を見ることができないときがあります。
 これに対応すべく小社では改正を織り込む前の規定(小社六法の凡例等では「有効な改正前規定」と呼んでいます)をご覧いただけるように以下のウェブページを用意しております↓↓
 http://www.yuhikaku.co.jp/static/yuhikaku/HOI/po_html/phf.html

※なお,平成29年4月1日以降から平成30年3月31日までの間に改正の効力が生じるものはポケット六法の本体に改正を織り込んだ上で,改正前の規定を小さな文字で並列表記しています。また,施行日がさらに先になる平成30年4月以降に改正の効力が生じるものは,改正を織り込まず,改正後の規定を現行規定の後に小さな文字で掲げています。

 改正前の規定と改正後の規定を読み比べる際などにぜひご活用ください。
 上記の改正織込みの基準については,ポケット六法本体の凡例(3頁)に掲げておりますので,そちらもご参照ください。
 最近では,平成26年に成立した行政不服審査法の全部改正の施行期日を平成28年4月1日と定める政令が11月26日に官報で公布されました。
 平成28年3月31日までは改正前の条文が有効ですので,改正前の規定をご覧になる場合は以下のページをご覧ください↓↓
 http://www.yuhikaku.co.jp/static_files/yuhikaku/HOI/po_PDF/117-1.pdf