文献紹介
*本書の次に読むとよい書籍を,章ごとに1~2点ずつ紹介しています。
第1章 複式簿記に基づく会計──財務三表,会計等式,取引8要素
桜井久勝・須田一幸(2025)『財務会計・入門――企業活動を描き出す会計情報とその活用法(第18版)』有斐閣アルマ.
→会計の全体像を手早く把握したい人に最適な一冊です。財務諸表の読み方といった基本的な内容から,会計基準の成り立ちなど応用的な論点にまで踏み込んでおり,学部初学者はもちろん,体系的に学び直したい社会人にも有用です。
第2章 財務諸表と財務報告制度の全体像
斎藤静樹(2016)『企業会計入門――考えて学ぶ(補訂版)』有斐閣.
→企業会計の基本理論を「どのように捉えるべきか」という観点から丁寧に掘り下げた入門書です。企業会計の枠組みは時代とともに変わりうるものですが,その背後にある基本的な考え方は不変であることを示しています。単なる知識習得にとどまらず,会計について思考を深めたい読者におすすめできる一冊です。
第3章 さまざまな利益とその意味
浅田孝幸・頼誠・鈴木研一・中川優・佐々木郁子(2017)『管理会計・入門――戦略経営のためのマネジリアル・アカウンティング(第4版)』有斐閣アルマ.
→本章で紹介した損益分岐点分析は,管理会計の領域において重要なツールです。管理会計の知識は,本書が取り上げるファイナンスの内容とも関連しています。管理会計の基本を学べる一冊です。
矢部謙介(2020)『粉飾&黒字倒産を読む――「あぶない決算書」を見抜く技術』日本実業出版社.
→財務諸表を理解するための基本的な知識の習得から始まり,最終的には粉飾等の会計不正や黒字倒産の兆候に気づくための考え方や着眼点が,丁寧に解説されています。利益とキャッシュフローの違いを理解する上で有益な書籍です。
第4章 会計測定の基礎から投資判断へ
岩壷健太郎(2023)『なるほどファイナンス』有斐閣ストゥディア.
→ファイナンスの基本から応用までを,要点を押さえながら学べる標準テキストです。財務諸表の基本的な見方に触れつつ,コーポレート・ファイナンスの要素も含めて解説されています。豊富な練習問題があり,独習用としての一冊にもなります。
第5章 資金調達方法を吟味する
格付投資センター編(2001)『格付けQ&A――決まり方から使い方まで』格付投資情報センター(日本経済新聞社発売).
→本章で学んだコマーシャル・ペーパーや社債等の格付けの過程と実務的な手続きが学べる一冊です。格付機関がどのような役割を担っているかを知る上で有用です。
山田和郎(2025)『日本企業はお金持ちになったのか?――現金保有のデータ分析』中央経済社.
→本章で学習した日本企業の現金保有の実態について,大規模データをもとに分析しています。企業が現金を保有する動機には,本章で紹介したトレードオフ理論以外にも,さまざまなものがあります。現金保有に関する学術的知見を学ぶ上で有用な書籍です。
第6章 分析するための準備を整える
EY新日本有限責任監査法人編(2022)『3つの視点で会社がわかる「有報」の読み方(第3版)』中央経済社.
→有価証券報告書を分析するポイントを幅広くカバーしている本です。M&Aが発生したときに有価証券報告書の記述がどのように変わるか,など,個別のケースに注目した内容も盛り込まれており,読者の有価証券報告書に対する視野がさらに広がると思います。
斎藤静樹(2010)『企業会計とディスクロージャー(第4版)』東京大学出版会.
→有価証券報告書をはじめとして,企業が情報を開示する意義を解説している本です。時代の変化に応じた規制の変化が丁寧に書かれているのが特徴です。
第7章 企業の収益性の分析
柳良平(2015)『ROE 革命の財務戦略――外国人投資家が日本企業を強くする』中央経済社.
→本章で学習したROEを向上させる財務戦略を詳細に検討した書籍です。ROE は株主サイドから見た収益性分析の指標ですが,その株主として昨今の日本市場で注目を集めているのが外国人投資家です。彼らが日本企業にどのようなことを要求しているかを知ることができます。
KPMG FAS・あずさ監査法人編(2017)『ROIC経営――稼ぐ力の創造と戦略的対話』日本経済新聞出版社.
→本章で学習したROICを,さらに詳細に学ぶことができる書籍です。ROICを単に計算するだけでなく,どのような施策がROICに影響を与えるのかについて理解を深めることができます。
第8章 企業の成長性・安全性の分析
桜井久勝編著(2010)『企業価値評価の実証分析――モデルと会計情報の有用性検証』中央経済社.
→第3章(音川和久「株価乗数モデルに基づく企業価値評価」64-85頁)で,乗数モデルが詳細に整理されています。企業価値に影響を及ぼす指標が,PER以外にも多く出てきます。難易度は高めですが,前章と本章で学んだ財務諸表分析を,企業価値評価にどのように活かしていくかを知ることのできる一冊です。
第9章 マネジメントとコーポレート・ガバナンス
加護野忠男・砂川伸幸・吉村典久(2010)『コーポレート・ガバナンスの経営学――会社統治の新しいパラダイム』有斐閣.
→制度改革や法改正によって激動する日本の株式会社制度とガバナンスに関し,経営学の視点から,株主と会社との関係の意義に立ち返り,ガバナンス本来の目的にまで踏み込んで考察しています。
青島矢一・加藤俊彦(2012)『競争戦略論(第2版)』東洋経済新報社.
→競争戦略論の基本的なフレームワークを学ぶ上では本書が一番だと思います。競争戦略を理解する上で不可欠な複数のアプローチ(ポジショニング,資源,ゲーム,学習)がバランスよく解説されています。本書で学んだ後,より専門的な内容を学習するとよいでしょう。
第10章 国際的なサステナビリティ開示と企業価値評価
阪智香・水口剛(2025)『サステナビリティ基準がわかる』日経文庫.
→日本のサステナビリティ基準の設定にも携わっている研究者による解説書です。サステナビリティ開示基準の全体像を早めに把握しておきたい人におすすめの一冊です。
國部克彦編著/神戸CSR研究会編(2017)『CSRの基礎――企業と社会の新しいあり方』中央経済社.
→企業におけるCSRのあり方について解説されているだけでなく,国際的な基準や規範についても整理されており,現在のサステナビリティ開示に通じる視座が示されています。ハウツーにとどまらず,サステナビリティに関する基礎を体系的に身につけたい人におすすめです。
第11章 株式価値評価を行う
中野誠・加賀谷哲之・河内山拓磨編著(2025)『財務・非財務報告のアカデミック・エビデンス』中央経済社.
→第10章で,株主資本コストについて詳細に整理されています。また第20章では,本章で取り上げたPBRと人的資本会計の関係や,加重平均資本コストを人的資本会計の視点から拡張する論点に触れられています。
日本証券アナリスト協会編(2020)『企業価値向上のための資本コスト経営――投資家との建設的対話のケーススタディ』日経BP日本経済新聞出版本部.
→コーポレートガバナンス・コードが制定されてから,企業と投資家の対話の基準として資本コストが活用されていることがわかる一冊です。資本コストをどのように経営に利用しているか,企業の実例を通じて学ぶことができます。

