○育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部改正(令和6・5・31法42)
Ⅰ 育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部改正関係(本則1条関係)
1 子の看護休暇の改正
(1) 子の看護休暇について,学校保健安全法20条の規定による学校の休業その他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事由に伴う当該子の世話を行うため,又は当該子の教育若しくは保育に係る行事のうち厚生労働省令で定めるものへの参加をするために取得することができる休暇とするとともに,小学校第3学年修了前の子(9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子をいう。)を養育する労働者が取得できるものとした。これに伴い,子の看護休暇の名称を「子の看護等休暇」に改めることとした。(16条の2第1項関係)
(2) 事業主と労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合,その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定(以下「労使協定」という。)で子の看護等休暇を取得することができないものとして定めることのできる労働者から,当該事業主に引き続き雇用された期間が6月に満たない労働者を除くこととした。(16条の3第2項関係)
2 介護休暇の改正
1の(2)と同様の改正を行うこととした。(16条の6第2項関係)
3 育児のための所定外労働の制限の改正
子を養育するために所定外労働の制限を請求することができないものとして労使協定で定められた労働者に該当しない労働者が当該子を養育するために請求した場合において,事業主が所定労働時間を超えて労働させてはならない労働者の範囲を,3歳に満たない子を養育する労働者から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者へと拡大することとした。(16条の8第1項関係)
4 介護についての申出があった場合等における措置等の新設
(1) 事業主は,労働者が当該事業主に対し,対象家族が当該労働者の介護を必要とする状況に至ったことを申し出たときは,厚生労働省令で定めるところにより,当該労働者に対して,介護休業に関する制度,仕事と介護との両立に資するものとして厚生労働省令で定める制度又は措置(以下「介護両立支援制度等」という。)その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに,介護休業申出及び介護両立支援制度等の利用に係る申出(以下「介護両立支援制度等申出」という。)に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならないものとした。(21条2項関係)
(2) 事業主は,労働者が,当該労働者が40歳に達した日の属する年度その他の介護休業に関する制度及び介護両立支援制度等の利用について労働者の理解と関心を深めるため介護休業に関する制度,介護両立支援制度等その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるのに適切かつ効果的なものとして厚生労働省令で定める期間の始期に達したときは,厚生労働省令で定めるところにより,当該労働者に対して,当該期間内に,当該事項を知らせなければならないものとした。(21条3項関係)
(3) 事業主は,労働者が(1)の申出をしたことを理由として,当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとした。(21条4項関係)
5 雇用環境の整備及び雇用管理等に関する措置の改正
(1) 事業主は,介護休業申出が円滑に行われるようにするため,次のいずれかの措置を講じなければならないものとした。(22条2項関係)
① その雇用する労働者に対する介護休業に係る研修の実施
② 介護休業に関する相談体制の整備
③ その他厚生労働省令で定める介護休業に係る雇用環境の整備に関する措置
(2) 事業主は,介護両立支援制度等申出が円滑に行われるようにするため,次のいずれかの措置を講じなければならないものとした。(22条4項関係)
① その雇用する労働者に対する介護両立支援制度等に係る研修の実施
② 介護両立支援制度等に関する相談体制の整備
③ その他厚生労働省令で定める介護両立支援制度等に係る雇用環境の整備に関する措置
6 育児休業の取得状況の公表の対象となる事業主の範囲の改正
毎年少なくとも1回,その雇用する労働者の育児休業の取得の状況として厚生労働省令で定めるものを公表しなければならない事業主の範囲を,常時雇用する労働者の数が1000人を超えるものから300人を超えるものへと拡大することとした。(22条の2関係)
7 育児のための所定労働時間の短縮措置等の改正
事業主は,その雇用する労働者のうち,業務の性質又は業務の実施体制に照らして,労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつその子を養育することを容易にするための措置(以下「育児のための所定労働時間の短縮措置」という。)を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者であってその3 歳に満たない子を養育するものについて育児のための所定労働時間の短縮措置を講じないこととするときに,当該労働者に関して,厚生労働省令で定めるところにより講じなければならない措置の選択肢として,労働者の申出に基づき,当該労働者が就業しつつその子を養育することを容易にするため,住居その他これに準ずるものとして労働契約又は労働協約,就業規則その他これらに準ずるもので定める場所における勤務(8の(2)において「在宅勤務等」という。)をさせる措置(以下「在宅勤務等の措置」という。)を加えることとした。(23条2項関係)
8 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者及び家族の介護を行う労働者に関する措置の改正
(1) 事業主が,その雇用する労働者のうち,その3歳に満たない子を養育する労働者(7に定める労働者を除く。)で育児休業をしていないものに関して,在宅勤務等の措置に準じて,必要な措置を講ずるように努めなければならないものとした。(24条2項関係)
(2) 事業主が,その雇用する労働者のうち,その要介護状態にある対象家族を介護する労働者で介護休業をしていないものに関して,労働者の申出に基づく在宅勤務等をさせることにより当該労働者が就業しつつその要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするための措置を講ずるように努めなければならないものとした。(24条4項関係)
Ⅱ 育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部改正関係(本則2条関係)
1 妊娠又は出産等についての申出があった場合における意向の確認と配慮
(1) 事業主は,労働者が当該事業主に対し,当該労働者又はその配偶者が妊娠し,又は出産したこと等を申し出たときに,当該労働者に対して,育児休業申出等に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講ずるに当たっては,厚生労働省令で定めるところにより,当該申出に係る子の心身の状況又は育児に関する当該申出をした労働者の家庭の状況に起因して当該子の出生の日以後に発生し,又は発生することが予想される職業生活と家庭生活との両立の支障となる事情の改善に資するものとして厚生労働省令で定める就業に関する条件に係る当該労働者の意向を確認しなければならないものとした。(21条2項関係)
(2) 事業主は,(1)の意向を確認した労働者に係る就業に関する条件を定めるに当たっては,当該意向に配慮しなければならないものとした。(21条3項関係)
(3) 事業主は,(1)により確認された意向の内容を理由として,当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとした。(21条6項関係)
2 3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者等に関する措置の新設
(1) 事業主は,その雇用する労働者のうち,その3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育するものに関して,厚生労働省令で定めるところにより,労働者の申出に基づく次に掲げる措置のうち2以上の措置を講じなければならないものとした。(23条の3第1項関係)
① 労働基準法32条の3第1項の規定により労働させることその他の労働者が就業しつつその子を養育することを容易にするための措置(3の(2)において「始業時刻変更等の措置」という。)であって厚生労働省令で定めるもの
② 在宅勤務等の措置
③ 育児のための所定労働時間の短縮措置
④ 労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための休暇(子の看護等休暇,介護休暇及び労働基準法39条の規定による年次有給休暇として与えられるものを除く。)を与えるための措置
⑤ ①から④までに掲げるもののほか,労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための措置として厚生労働省令で定めるもの
(2) (1)により事業主が(1)の④に掲げる措置を講じたときは,(1)の④の休暇は,1日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるもの以外の者は,厚生労働省令で定めるところにより,厚生労働省令で定める1日未満の単位で取得することができるものとした。(23条の3第2項関係)
(3) (1)の内容(③の労働者にあっては,(1)の④に係る部分に限る。以下この(3)において同じ。)は,労使協定で,次の労働者のうち(1)の内容の措置を講じないものとして定められた労働者に該当する労働者については,これを適用しないこととした。(23条の3第3項関係)
① 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
② ①に掲げるもののほか,(1)の措置を講じないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの
③ 業務の性質又は業務の実施体制に照らして,(2)の厚生労働省令で定める一日未満の単位で(1)の④の休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者((2)の厚生労働省令で定める1日未満の単位で(1)の④の休暇を取得しようとする者に限る。)
(4) 事業主は,(1)の措置を講じようとするときは,あらかじめ,当該事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないものとした。(23条の3第4項関係)
(5) 事業主は,厚生労働省令で定めるところにより,3歳に満たない子を養育する労働者に対して,当該労働者が(1)により当該事業主が講じた措置(以下「対象措置」という。)のいずれを選択するか判断するために適切なものとして厚生労働省令で定める期間内に,対象措置その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに,対象措置に係る申出に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならないものとした。(23条の3第5項関係)
(6) 事業主は,(5)の措置を講ずるに当たっては,対象措置に係る子の心身の状況又は育児に関する当該対象措置の対象となる労働者の家庭の状況に起因して発生し,又は発生することが予想される職業生活と家庭生活との両立の支障となる事情の改善に資するものとして厚生労働省令で定める就業に関する条件に係る当該労働者の意向を確認しなければならないものとした。(23条の3第6項関係)
(7) 事業主は,(6)の意向を確認した労働者に係る就業に関する条件を定めるに当たっては,当該意向に配慮しなければならないものとした。(23条の3第6項関係)
(8) 事業主は,労働者が対象措置に係る申出をし,若しくは(1)により当該労働者に措置が講じられたこと又は(6)により確認された意向の内容を理由として,当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとした。(23条の3第7項関係)
3 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置の改正
(1) 事業主が,その雇用する労働者のうち,その小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して講ずるように努めなければならないこととされている措置のうち,労働者の申出に基づく育児に関する目的のために利用することができる休暇を与えるための措置について,当該休暇から,2の(1)の④の休暇を除くこととした。(24条1項関係)
(2) 事業主が,その雇用する労働者のうち,その3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に講ずるように努めなければならない措置から,育児のための所定労働時間の短縮措置及び始業時刻変更等の措置を除くこととした。(24条1項3号関係)
Ⅰの改正は,令和7年4月1日から施行され,Ⅱの改正は,令和7年10月1日(令和6・9・11政280)に施行される。