◎民法の一部改正(令和6・5・24法33)
1 親の責務等
婚姻関係の有無にかかわらず,父母が子を養育するに当たって負う責務に関する規定を設けることとした。(817条の12関係)
2 親権等
(1) 親権
親権は,成年に達しない子について,その子の利益のために行使しなければならないこととした。(818条1項関係)
(2) 親権の行使方法
父母双方が親権者であるときであっても,子の利益のため急迫の事情があるときや,監護及び教育に関する日常の行為については,父母の一方が単独で親権を行使することができることとするとともに,特定の事項に係る親権の行使について父母間に協議が調わない場合には,家庭裁判所が当該事項に係る親権行使者を定めることができることとした。(824条の2関係)
(3) 離婚の場合の親権者の定め
① 父母が協議上の離婚をするときは,その協議で,その双方又は一方を親権者と定めることとした。(819条1項関係)
② 裁判上の離婚の場合には,裁判所が,父母の双方又は一方を親権者と定めることとした。(819条2項関係)
③ 裁判所は,父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては,子の利益のため,父母と子との関係,父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこととし,この場合において,父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは,父母の一方を親権者と定めなければならないこととした。(819条7項関係)
(4) 離婚後の子の監護に関する事項の定め等
父母が協議上の離婚をする際に協議で定める事項に,監護の分掌を追加することとした。(766条1項関係)
3 子の監護の費用
(1) 子の監護の費用の先取特権
子の監護の費用によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有することとした。(306条3号関係)
(2) 子の監護に要する費用の分担の定めがない場合の特例
父母が子の監護に要する費用の分担についての定めをすることなく協議上の離婚をした場合には,父母の一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うものは,他の一方に対し,一定の要件の下で,法務省令で定める一定額の養育費を請求することができることとした。(766条の3関係)
4 親子の交流等
(1) 審判による父母以外の親族と子との交流の定め
家庭裁判所の審判により父母以外の親族と子との交流の定めをする場合に関する規定を設けることとした。(766条の2関係)
(2) 父母の婚姻中の親子の交流等
父母が婚姻中に子と別居している場合における親子の交流等に関する規定を設けることとした。(817条の13関係)
5 養子
子が養子であるときの親権者に関する規定を設けるとともに,15歳未満の者を養子とする縁組の代諾について親権者や監護者等の間に協議が調わないとき等の調整に関する規定を設けることとした。(797条及び818条関係)
6 財産分与
財産分与の請求期間を5年に伸長するとともに,家庭裁判所が財産分与の額及び方法を定める際の考慮要素等を定めることとした。(768条関係)
この改正は,令和8年5月23日までに施行される。
*この改正に伴い,民事執行法,人事訴訟法,家事事件手続法が改正された。