改正情報 産業法部門

○不正競争防止法の一部改正(令和5・6・14法51)

1 定義

(1) 他人の商品の形態を模倣した商品を電気通信回線を通じて提供する行為を不正競争として追加することとした。(2条1項3号関係)

(2) 「限定提供データ」とは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(営業秘密を除く。)をいうものとした。(2条7項関係)

2 損害の額の推定等

特定の不正競争によって営業上の利益を侵害された者(以下「被侵害者」という。)が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者(以下「侵害者」という。)に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、侵害者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したとき、又はその侵害の行為により生じた役務を提供したときは、次に掲げる額の合計額を、被侵害者が受けた損害の額とすることができるものとした。(5条1項関係)

(1) 被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物又は提供することができた役務の単位数量当たりの利益の額に、侵害者が譲渡した当該物又は提供した当該役務の数量(以下「譲渡等数量」)のうち被侵害者の販売又は提供の能力に応じた数量(以下「販売等能力相応数量」)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を被侵害者が販売又は提供をすることができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(以下「特定数量」)を控除した数量)を乗じて得た額

(2) 譲渡等数量のうち販売等能力相応数量を超える数量又は特定数量がある場合におけるこれらの数量に応じた特定の侵害の行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額

3 技術上の秘密を取得した者の当該技術上の秘密を使用する行為等の推定

(1) 技術上の秘密を取得した後にその技術上の秘密について営業秘密不正開示行為があったこと又は営業秘密不正取得行為若しくは営業秘密不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないで、その技術上の秘密に係る技術秘密記録媒体等、その技術上の秘密が化体された物件又は当該技術秘密記録媒体等に係る送信元識別符号を保有する行為があった場合において、その行為をした者が生産等をしたときは、その者は、不正競争防止法2条1項6号又は9号に掲げる不正競争として生産等をしたものと推定するものとした。(5条の2第2項・4項関係)

(2) 技術上の秘密をその保有者から示された後に、不正の利益を得る目的で、又は当該技術上の秘密の保有者に損害を加える目的で、当該技術上の秘密の管理に係る任務に違反して、特定の方法でその技術上の秘密を領得する行為があった場合において、その行為をした者が生産等をしたときは、その者は、不正競争防止法2条1項7号に掲げる不正競争として生産等をしたものと推定するものとした。(5条の2第3項関係)

4 商標に係る適用除外等

不正競争防止法3条から15条まで、21条及び22条の規定は、商標法4条4項に規定する場合において商標登録がされた結果又は同法8条1項ただし書、2項ただし書若しくは5項ただし書の規定により商標登録がされた結果、同一の商品若しくは役務について使用をする類似の登録商標又は類似の商品若しくは役務について使用をする同一若しくは類似の登録商標に係る商標権が異なった商標権者に属することとなった場合において、その一の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が不正の目的でなく当該登録商標の使用をする行為については、適用しないものとした。(19条1項3号関係)

5 営業秘密に関する訴えの管轄権及び適用範囲

(1) 日本国内において事業を行う営業秘密保有者の営業秘密であって、日本国内において管理されているものに関する不正競争防止法2条1項4号、5号、7号又は8号に掲げる不正競争を行った者に対する訴えは、当該営業秘密が専ら日本国外において事業の用に供されるものである場合を除き、日本の裁判所に提起することができるものとした。(19条の2第1項関係)

(2) 不正競争防止法1章、2章及び4章の規定は、日本国内において事業を行う営業秘密保有者の営業秘密であって、日本国内において管理されているものに関し、日本国外において同法2条1項4号、5号、7号又は8号に掲げる不正競争を行う場合についても、適用するものとした。(19条の3関係)

6 外国公務員等に対する不正の利益の供与等に係る罰則の見直し

(1) 不正競争防止法18条1項の規定に違反した者は、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するものとしたとともに、法人の代表者、代理人又は使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、当該違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して10億円以下の罰金刑を科するものとした。(21条4項4号・22条1項1号関係)

(2) (1)の罪は、日本国内に主たる事務所を有する法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者であって、その法人の業務に関し、日本国外において(1)の罪を犯した日本国民以外の者にも適用するものとした。(21条11項関係)

 

この改正は、令和6年4月1日(令和5・11・29政337)に施行される。