改正情報 産業法部門

●著作権法の一部改正(令和5・5・26法33)

…立法・行政における著作物等の公衆送信等を可能とし,権利者が不明な作品の二次利用を円滑にするため,著作物等の利用に関する新たな裁定制度を創設するとともに,海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法を見直す改正。

1 立法又は行政の目的のための内部資料としての公衆送信等を可能とする措置

(1) 著作物は,行政審判手続のために必要と認められる限度において,公衆送信を行い,又は受信装置を用いて公に伝達することができることとした。(41条の2第2項関係)

(2) 著作物は,立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には,その必要と認められる限度において,当該内部資料を利用する者との間で公衆送信を行い,又は受信装置を用いて公に伝達することができることとした。(42条関係)

(3) 著作物は,特許に関する審査等の行政手続のために必要と認められる場合には,その必要と認められる限度において,公衆送信を行い,又は受信装置を用いて公に伝達することができることとした。(42条の2第2項関係)

2 未管理公表著作物等の利用に関する裁定制度を創設する等の措置

① 未管理公表著作物等を利用しようとする者は,当該未管理公表著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思を確認するための措置として文化庁長官が定める措置をとったにもかかわらず,その意思の確認ができなかったときは,文化庁長官の裁定を受け,かつ,補償金を供託して,当該裁定の定めるところにより,当該未管理公表著作物等を利用することができることとした。(67条の3第1項関係)

② 未管理公表著作物等は,公表された著作物等のうち,著作権等管理事業者による管理が行われているもの又は文化庁長官が定める方法により,当該著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思を円滑に確認するために必要な情報であって文化庁長官が定めるものの公表がされているもののいずれにも該当しないものとした。(67条の3第2項関係)

③ ①の裁定(以下「裁定」という)においては,当該裁定に係る著作物の利用方法,当該裁定に係る著作物を利用することができる期間等を定めるものとした。(67条の3第4項関係)

④ ③の期間は,裁定に係る申請書に記載された利用期間の範囲内かつ3年を限度としなければならないこととした。(67条の3第5項関係)

⑤ 裁定に係る著作物の著作権者が,当該著作物の著作権の管理を著作権等管理事業者に委託すること,当該著作物の利用に関する協議の求めを受け付けるための連絡先その他の情報を公表することその他の当該著作物の利用に関し当該裁定を受けた者からの協議の求めを受け付けるために必要な措置を講じた場合には,文化庁長官は,当該著作権者の請求により,当該裁定を取り消すことができることとした。(67条の3第7項関係)

⑥ 裁定が取り消された場合においては,著作権者は,補償金の額のうち,当該裁定のあった日からその取消しの処分のあった日の前日までの期間に対応する額について弁済を受けることができることとした。(67条の3第9項関係)

3 著作権等の侵害に対する損害賠償額の算定の合理化を図る措置

(1) 著作権等の侵害者が譲渡した物の数量等に基づく損害額の算定について,著作権者等の販売等の能力を超える部分に係る数量又は著作権者等が販売することができないとする事情に相当する数量があるときは,これらの数量に応じた著作権等の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を損害の額に加えることができるものとした。(114条1項関係)

(2) 著作権者等が著作権等の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額の認定に当たり,裁判所は,著作権者等が,著作権等の侵害があったことを前提として当該著作権等を侵害した者と著作権等の行使の対価について合意するとしたならば,当該著作権者等が得ることとなるその対価を考慮することができるものとした。(114条5項関係)

 

 2の改正は,令和8年5月25日までに施行され,及びについては,令和6年1月1日から施行される。