◎刑法の一部改正(令和5・6・23法66)
1 強制わいせつ罪,強制性交等罪等の要件等の改正
(1) 強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪の要件等の改正
① 強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪を統合し,見出しを「不同意わいせつ」とすることとした。(176条関係)
② イからチまでに掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により,同意しない意思を形成し,表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて,わいせつな行為をした者は,婚姻関係の有無にかかわらず,6月以上10年以下の拘禁刑に処することとした。(176条1項関係)
イ 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
ロ 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
ハ アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
ニ 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
ホ 同意しない意思を形成し,表明し又は全うするいとまがないこと。
ヘ 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ,若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し,若しくは驚愕していること。
ト 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
チ 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
③ 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ,若しくは行為をする者について人違いをさせ,又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて,わいせつな行為をした者も,②と同様とすることとした。(176条2項関係)
④ 16歳未満の者に対し,わいせつな行為をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については,その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る)も,②と同様とすることとした。(176条3項関係)
(2) 強制性交等罪及び準強制性交等罪の要件等の改正
① 強制性交等罪及び準強制性交等罪を統合し,見出しを「不同意性交等」とすることとした。(177条関係)
② (1)②イからチまでに掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により,同意しない意思を形成し,表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて,性交,肛門性交,口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(③及び④において「性交等」という)をした者は,婚姻関係の有無にかかわらず,5年以上の有期拘禁刑に処することとした。(177条1項関係)
③ 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ,若しくは行為をする者について人違いをさせ,又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて,性交等をした者も,②と同様とすることとした。(177条2項関係)
④ 16歳未満の者に対し,性交等をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については,その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)も,②と同様とすることとした。(177条3項関係)
2 16歳未満の者に対する面会要求等の罪の新設
(1) わいせつの目的で,16歳未満の者に対し,①から③までに掲げるいずれかの行為をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については,その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る)は,1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処することとした。(182条1項関係)
① 威迫し,偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。
② 拒まれたにもかかわらず,反復して面会を要求すること。
③ 金銭その他の利益を供与し,又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。
(2) (1)の罪を犯し,よってわいせつの目的で当該16歳未満の者と面会をした者は,2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処することとした。(182条2項関係)
(3) 16歳未満の者に対し,①又は②に掲げるいずれかの行為(②に掲げる行為については,当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る)を要求した者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については,その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る)は,1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処することとした。(182条3項関係)
① 性交,肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
② ①に掲げるもののほか,膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く)又は物を挿入し又は挿入される姿態,性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部,臀部又は胸部をいう。以下この②において同じ)を触り又は触られる姿態,性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。
この改正は,令和5年7月13日から施行された。