改正情報 刑事法部門

◎刑法の一部改正(令和4・6・17法67)

…受刑者の処遇及び執行猶予制度等のより一層の充実を図るため,懲役及び禁錮を廃止して拘禁刑を創設し,その処遇内容等を定めるとともに,刑の執行猶予制度の拡充を行うため規定を整備するほか,侮辱罪の法定刑を引き上げる改正

Ⅰ.拘禁刑の創設

 懲役及び禁錮を廃止し,これらに代えて拘禁刑を創設し,拘禁刑は,刑事施設に拘置し,拘禁刑に処せられた者には,改善更生を図るため,必要な作業を行わせ,又は必要な指導を行うことができることとされた。(9条,12条及び13条関係)…令和7年6月1日(令和5・11・10政318)

Ⅱ.刑の執行猶予制度の拡充
1.再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことのできる要件の緩和

 前に拘禁刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が2年以下の拘禁刑の言渡しを受け,情状に特に酌量すべきものがあるときは,裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間,その刑の全部の執行を猶予することができることとされた。
ただし,上記により刑の全部の執行を猶予されて,25条の2第1項の規定により保護観察に付せられ,その期間内に更に罪を犯した者については,この限りでないこととされた。(25条2項関係)…令和7年6月1日(令和5・11・10政318)

2.刑の全部の執行猶予の猶予期間経過後の刑の執行の仕組みの導入

①(ア) 27条1項の規定にかかわらず,刑の全部の執行猶予の期間内に更に犯した罪(罰金以上の刑に当たるものに限る)について公訴の提起がされているときは,同項の刑の言渡しは,当該期間が経過した日から③又は④により下記(イ)による効力継続期間(刑の全部の執行猶予の言渡しが取り消されることがなくなるまでの間),引き続きその効力を有することとされた。(27条2項前段関係)…令和7年6月1日(令和5・11・10政318)
(イ) 上記(ア)の場合においては,当該刑については,当該効力継続期間はその全部の執行猶予の言渡しがされているものとみなすこととされた。(27条2項後段関係)…令和7年6月1日(令和5・11・10政318)
② ①(ア)にかかわらず,効力継続期間における人の資格に関する法令の規定等の適用については,①の刑の言渡しは,効力を失っているものとみなすこととされた。(27条3項関係)…令和7年6月1日(令和5・11・10政318)
③ ①(ア)の場合において,当該罪について拘禁刑以上の刑に処せられ,その刑の全部について執行猶予の言渡しがないときは,①(イ)による刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならないこととし,ただし,当該罪が①(ア)の猶予の期間の経過後に犯した罪と併合罪として処断された場合において,犯情その他の情状を考慮して相当でないと認めるときは,この限りでないこととされた。(27条4項関係)…令和7年6月1日(令和5・11・10政318)
④ ①(ア)の場合において,当該罪について罰金に処せられたときは,①(イ)による刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができることとされた。(27条5項関係)…令和7年6月1日(令和5・11・10政318)

Ⅲ.侮辱の罪の法定刑の引上げ

 侮辱の罪の法定刑を「拘留又は科料」から「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げることとされた。(231条関係)…令和4年7月7日施行

*この改正に伴い,刑事訴訟法,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律,更生保護法等も改正された。