改正情報 民事法部門

●消費者契約法の一部改正(令和4・6・1法59)

…消費者と事業者との間の情報・交渉力の格差に鑑み、消費者の利益の擁護を更に図るため、契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる類型を追加する等の措置を講ずる改正。

Ⅰ.事業者の努力義務に関する改正
 消費者契約の締結について勧誘をする際の必要な情報の提供において、考慮すべき個々の消費者の事情として年齢及び心身の状態を追加すること、消費者の求めに応じて、消費者契約により定められた消費者が有する解除権の行使に関して必要な情報を提供すること等を事業者の努力義務に追加することとされた。(3条1項関係)

Ⅱ.困惑類型の追加
 当該行為によって消費者が困惑して意思表示をしたときは取消しが認められることとなる行為に、勧誘を受けている場所において、消費者が消費者契約を締結するか否かについて相談を行うために電話等によって事業者以外の者と連絡する旨の意思を示したにもかかわらず、威迫する言動を交えて、連絡を妨げること等を追加することとされた。(4条3項関係)

Ⅲ.無効とする消費者契約の条項の類型の追加
 事業者の債務不履行又は不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項であって、当該条項において事業者等の重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていない条項を8条の無効類型に追加することとされた。(8条3項関係)

Ⅳ.損害賠償の額の予定等の算定の根拠の概要を説明する努力義務の創設
 事業者は、消費者に対し、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定する条項等に基づき損害賠償等の支払を請求する場合において、当該消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定等の算定根拠の概要を説明するよう努めなければならないこととされた。(9条2項関係)

Ⅴ.適格消費者団体の要請に係る制度の創設
 適格消費者団体は、事業者等に対し、8条等に規定する条項を含む消費者契約の申込み等のおそれがあると疑うに足りる相当の理由があるとき等は、当該条項の開示を、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定する条項等が定める損害賠償の額の予定等が平均的な損害の額を超えると疑うに足りる相当の理由があるときは、当該条項に係る算定根拠の説明を、また、差止請求により事業者等が必要な措置をとる義務を負うときに講じた措置の内容の開示を要請することができることとし、事業者等はこれらに応じるよう努めなければならないこととされた。(12条の3等関係)

 以上の改正は令和5年6月1日より施行される。