改正情報 産業法部門

著作権法の一部改正(令和3・6・2法52)

1 放送同時配信等における著作物等の利用円滑化のための措置等

(1) 定義
① 放送同時配信等の定義を,放送番組等の自動公衆送信のうち,放送等が行われた日から1週間以内(当該放送等の間隔が1週間を超えるものである場合には,1月以内でその間隔に応じた期間内)に行われるものであること,放送番組等の内容を変更しないで行われるものであること,デジタル方式の複製を防止し,又は抑止するための措置が講じられているものであること等の要件を備えるものとすることとした。(第2条第1項第9号の7関係)
② 放送同時配信等事業者の定義を,人的関係又は資本関係において密接な関係を有する放送事業者等から放送番組等の供給を受けて放送同時配信等を業として行う事業者とすることとした。(第2条第1項第9号の8関係)
(2) 権利制限規定の対象を拡充し,学校教育番組等の放送同時配信等において,著作物等を利用できることとした。(第34条第1項,第38条第3項,第39条,第40条第2項及び第3項,第44条第1項~第3項,第93条第1項関係)
(3) 著作物の放送等及び放送同時配信等について許諾を行うことができる者が,特定放送事業者等(放送事業者等のうち放送同時配信等を業として行い,かつ,その事実を周知するための措置として放送同時配信等の実施状況に関する情報を公表しているもの等)に対し,放送番組等における著作物の利用の許諾を行った場合には,当該許諾に際して別段の意思表示をした場合を除き,当該許諾には当該著作物の放送同時配信等の許諾を含むものと推定することとした。(第63条第5項関係)
(4) 放送事業者等は,放送同時配信等の許諾について著作権者との協議が成立せず,又は協議することができない場合は,文化庁長官の裁定を受け,補償金を著作権者に支払ってその著作物について放送同時配信等を行うことができることとした。(第68条第1項関係)
(5) 放送同時配信等における実演の利用円滑化
① 第92条の2第1項に規定する権利(放送同時配信等に係るものに限る)を有する者(特定実演家)が放送事業者に対し,その実演の放送同時配信等の許諾を行ったときは,契約に別段の定めがない限り,当該許諾を得た実演(著作権等管理事業者による管理が行われているもの又は円滑な許諾を得るために必要な情報の公表が行われているものを除く)について,当該許諾に係る放送同時配信等のほか,当該許諾を得た放送事業者が当該実演について第93条第1項の規定により作成した録音物若しくは録画物を用いてする放送同時配信等又は放送同時配信等事業者が当該放送事業者から放送番組の供給を受けてする放送同時配信等を行うことができることとするとともに,放送事業者等に対し当該放送同時配信等に係る報酬の支払を求めることとした。(第93条の3第1項及び第2項関係)
② 放送事業者等は,第93条の2第1項第1号の放送において実演が放送される場合において,特定実演家に連絡を行うこと等の措置を講じてもなお特定実演家と連絡することができないときは,契約に別段の定めがない限り,その事情につき,文化庁長官が指定する著作権等管理事業者の確認を受け,かつ,当該著作権等管理事業者に補償金を支払うことにより,当該実演の放送同時配信等を行うことができることとした。(第94条第1項関係)
(6) 放送同時配信等における商業用レコードに録音されている実演及び商業用レコードの利用円滑化
① 放送事業者等は商業用レコードに録音されている実演(著作権等管理事業者による管理が行われているもの又は円滑な許諾を得るために必要な情報の公表がされているものを除く)について放送同時配信等を行うことができることとするとともに,放送事業者等に対し当該放送同時配信等に係る補償金の支払を求めることとした。(第94条の3第1項及び第2項関係)
② 放送事業者等は商業用レコード(著作権等管理事業者による管理が行われているもの又は円滑な許諾を得るために必要な情報の公表がされているものを除く)を用いて放送同時配信等を行うことができることとするとともに,当該放送事業者等に対し放送同時配信等に係る補償金の支払を求めることとした。(第96条の3第1項及び第2項関係)

2 図書館等による著作物等の公衆送信等に関する規定の整備

(1) 国立国会図書館は,電磁的記録を作成している絶版等資料のうち,3月以内に絶版等資料に該当しなくなる蓋然性が高いと認められた資料を除いたものに係る著作物の自動公衆送信を,あらかじめ国立国会図書館にその氏名及び連絡先等の情報(利用者情報)を登録している者(事前登録者)の用に供することを目的とし,当該自動公衆送信を受信しようとする者が事前登録者であることを識別するための措置を講じている等の要件を満たすときに行うことができることとするとともに,当該自動公衆送信を受信した者は,当該著作物を自ら利用するために必要と認められる限度において複製することができること等とした。(第31条第7項~第11項関係)
(2) 公衆送信に関する業務を適正に実施するために必要な措置を講じている図書館等(特定図書館等)は,あらかじめ特定図書館等に利用者情報を登録している利用者の求めに応じ,その調査研究の用に供するために公表された著作物の一部分(著作物の全部の公衆送信が著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情があるものとして政令で定めるものは,その全部)について公衆送信を行うことができることとするとともに,当該特定図書館等の設置者に対し当該公衆送信に係る補償金の支払を求めることとし,当該公衆送信を受信した特定図書館等の利用者においては,その調査研究の用に供するために必要と認められる限度において,当該著作物を複製することができることとした。(第31条第2項~第5項関係)

この改正は,令和4年1月1日から施行される。ただし,2(1)の改正については令和4年5月1日に施行され(令和4・4・27政184),2(2)の改正については令和5年6月1日に施行される(令和4・12・28政404)。