公益通報者保護法の一部改正(令和2・6・12法51)
1 総則
(1) 公益通報者の範囲に,労働者であった者,派遣労働者であった者及び役員(法人の取締役,執行役,会計参与,監査役,理事,監事及び清算人並びにこれら以外の者で法令の規定に基づき法人の経営に従事している者(会計監査人を除く。)をいう。)を追加することとした。(2条1項関係)
(2) 通報対象事実の範囲に,公益通報者保護法及び個人の生命又は身体の保護,消費者の利益の擁護,環境の保全,公正な競争の確保その他の国民の生命,身体,財産その他の利益の保護に関わる法律として別表に掲げるもの(これらの法律に基づく命令を含む。)に規定する過料の理由とされている事実を追加することとした。(2条3項関係)
2 公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等
(1) 3条2号の規定において,公益通報者の解雇を無効とする場合に,通報対象事実が生じ,又はまさに生じようとしていると思料し,かつ,次の①から④までに掲げる事項を記載した書面(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。)を提出する場合を追加することとした。(3条2号関係)
① 公益通報者の氏名又は名称及び住所又は居所
② 当該通報対象事実の内容
③ 当該通報対象事実が生じ,又はまさに生じようとしていると思料する理由
④ 当該通報対象事実について法令に基づく措置その他適当な措置がとられるべきと思料する理由
(2) 3条3号の規定において,公益通報者の解雇を無効とする場合に,通報対象事実が生じ,又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり,かつ,次の①又は②のいずれかに該当する場合を追加することとした。(3条3号関係)
① 3条1号に定める公益通報をすれば,役務提供先が,当該公益通報者について知り得た事項を,当該公益通報者を特定させるものであることを知りながら,正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合
② 個人(事業を行う場合におけるものを除く。)の財産に対する損害(回復することができない損害又は著しく多数の個人における多額の損害であって,通報対象事実を直接の原因とするものに限る。)が発生し,又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合
(3) 役員である公益通報者は,6条各号に掲げる場合においてそれぞれ同条各号に定める公益通報をしたことを理由として事業者から解任された場合には,当該事業者に対し,解任によって生じた損害の賠償を請求することができることとした。(6条関係)
(4) 事業者は,公益通報によって損害を受けたことを理由として,当該公益通報をした公益通報者に対して,賠償を請求することができないこととした。(7条関係)
3 事業者がとるべき措置等
(1) 事業者がとるべき措置(11条関係)
① 事業者は,公益通報を受け,並びに当該公益通報に係る通報対象事実の調査をし,及びその是正に必要な措置をとる業務(公益通報対応業務)に従事する者(公益通報対応業務従事者)を定めなければならないこととした。
② 事業者は,①に定めるもののほか,公益通報者の保護を図るとともに,公益通報の内容の活用により国民の生命,身体,財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため,公益通報に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならないこととした。
③ 常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については,①及び②は努力義務とすることとした。
④ 内閣総理大臣は,事業者がとるべき措置に関して,その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めることとした。
⑤ 内閣総理大臣は,指針を定めようとするときは,あらかじめ,消費者委員会の意見を聴かなければならないこととした。
(2) 公益通報対応業務従事者の義務
公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者は,正当な理由がなく,その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならないこととした。(12条関係)
(3) 行政機関がとるべき措置
通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関は,公益通報に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならないこととした。(13条関係)
4 雑則
(1) 報告の徴収並びに助言,指導及び勧告
内閣総理大臣は,3(1)①及び②の規定の施行に関し必要があると認めるときは,事業者に対して,報告を求め,又は助言,指導若しくは勧告をすることができることとした。(15条関係)
(2) 公表
内閣総理大臣は,3(1)①及び②の規定に違反している事業者に対し,(1)の規定による勧告をした場合において,その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは,その旨を公表することができることとした。(16条関係)
(3) 関係行政機関への照会等
内閣総理大臣は,公益通報者保護法の規定に基づく事務に関し,関係行政機関に対し,照会し,又は協力を求めることができることとした。(17条関係)
(4) 内閣総理大臣による情報の収集,整理及び提供
内閣総理大臣は,公益通報及び公益通報者の状況に関する情報その他その普及が公益通報者の保護及び公益通報の内容の活用による国民の生命,身体,財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守に資することとなる情報の収集,整理及び提供に努めなければならないこととした。(18条関係)
(5) 適用除外
(1)及び(2)の規定は,国及び地方公共団体に適用しないこととした。(20条関係)
5 罰則
(1) 3(2)の規定に違反して3(2)に規定する事項を漏らした者は,30万円以下の罰金に処することとした。(21条関係)
(2) 4(1)の規定による報告をせず,又は虚偽の報告をした者は,20万円以下の過料に処することとした。(22条関係)
この改正は,令和4年6月11日までに施行される。