著作権法の一部改正(令和2・6・12法48)
1 技術的保護手段及び技術的利用制限手段に係る規定の改正
(1) 著作物等の利用に用いられる機器が特定の反応をする信号を送信する等の技術的保護手段及び技術的利用制限手段について,当該信号を著作物,実演,レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに送信しないもの等を加えることとした。(2条1項20号及び21号)
(2) 技術的保護手段又は技術的利用制限手段を回避する機能を有する指令符号を公衆に譲渡する等の行為を著作権等を侵害する行為とみなすとともに,当該行為を行った者について罰則を科すこととした。(113条7項及び120条の2第4号関係)
2 権利制限規定の改正
(1) 私的使用の目的で行う録音及び録画以外の複製のうち,著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(特定侵害複製)を,特定侵害複製であることを知りながら行うものに,複製権が及ぶこととした。また,有償で公衆に提供されている著作物に係る著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(有償著作物特定侵害複製)を,有償著作物特定侵害複製と知りながら行う行為を継続的に又は反復して行った者について罰則を科すこととした。(30条1項4号及び2項,119条3項2号及び5項関係)
(2) 写真の撮影,録音,録画,放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し,又は複製を伴うことなく伝達する行為(複製伝達行為)を行うに当たって,その対象とする事物又は音に付随して対象となる事物又は音に係る著作物で軽微な構成部分となるもの(付随対象著作物)は,正当な範囲内において,当該複製伝達行為に伴って利用することができることとした。(30条の2関係)
(3) 著作物は,品種や特定農林水産物等に関する審査等の手続のために必要と認められる場合には,その必要と認められる限度において,複製することができることとした。(42条関係)
3 利用権の対抗力に係る規定の整備
利用権について,当該利用権に係る著作物の著作権を取得した者その他の第三者に対抗することができることとした。(63条の2関係)
4 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等についての規定の整備
(1) 送信元識別符号等の提供により侵害著作物等の他人による利用を容易にする行為(侵害著作物等利用容易化)であって,公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等又は主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等(侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等)において行う行為等を,当該行為等に係る著作物等が侵害著作物等であることを知っていた等の場合には,著作権等を侵害する行為とみなすとともに,当該行為を行った者について罰則を科すこととした。(113条2項~4項及び120条の2第3号関係)
(2) 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行った者等について罰則を科すこととした。(119条2項4号及び5号関係)
5 書類提出命令に係る手続の拡充
裁判所は,著作権等の侵害に係る訴訟において,侵害行為を立証する等のために必要な書類に該当するかどうかの判断をするために必要があると認めるときは,当該書類の所持者にその提示をさせることができることとした。また,当事者の同意を得て,専門委員に対し,当該書類を開示することができることとした。(114条の3第2項及び4項関係)
この改正は,令和3年1月1日から施行される。ただし,2(2)・(3),3,4については,令和2年10月1日から施行される。