会社法の一部改正(令和1・12・11法70)
この改正は,Ⅰ 令和3年6月1日までに政令で定める日【令和3年3月1日(令和2年11月20日政325)】及びⅡ 令和5年6月10日までに政令で定める日【令和4年9月1日(令和3年12月17日政334)】から施行される。
なお,ポケット六法令和3年版では,Ⅰの改正については,改正を織り込んだうえで改正前の規定を併記し,Ⅱの改正については,改正を織り込まず,改正後の規定を併記している。
Ⅰ 令和3年3月1日から施行される改正→
1 株主提案権
株主提案権の濫用的な行使を制限するため,株主が提案できる議案の数を10までとする上限を設けることとされた(第305条第4項及び第5項)。
2 取締役の報酬等
取締役の報酬等を決定する手続の透明性を確保するため,上場会社等の取締役会は,取締役の個人別の報酬の内容が株主総会で決定されない場合には,取締役はその決定方針を定め,その概要を開示しなければならないこととされた(第361条第7項)。また,報酬として株式等を付与する場合の株主総会の決定事項に株式等の数の上限等を加え(第361条第1項),上場会社が株式を発行する場合には,金銭の払込み等を要しないこととされた(第202条の2,第236条第3項及び第4項,第361条第1項,第409条第3項)。
3 補償契約・役員等のために締結される保険契約
役員等の責任を追及する訴えが提起された場合に,株式会社が費用や賠償金を補償する補償契約に関する規定を新たに創設し(第430条の2),役員等を被保険者とする会社役員賠償責任保険(D&O保険)に加入するために必要な規定等を新たに創設することとされた(第430条の3)。
4 社外取締役の設置義務
監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限る)であって金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは,社外取締役を置かなければならないこととされた(第327条の2)。
5 社債の管理
会社は,各社債の金額が1億円以上である場合等を対象として,会社から委託を受けた第三者が,社債権者による社債の管理の補助を行う制度(社債管理補助者制度)を新たに創設することとされた(第714条の2~第714条の4,第737条第1項)。
6 株式交付制度
完全子会社とすることを予定しない場合であっても,株式会社が他の株式会社を子会社とするため,自社の株式を当該他の株式会社の株主に交付することができる制度を新たに創設することとされた(第2条,第774条の2~第774条の11,第816条の2~第816条の10)。
Ⅱ 令和4年9月1日から施行される改正→
1 株主総会資料の電子提供制度
株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し,株主に対してそのアドレス等を書面で通知する方法により,株主総会資料を提供することができる制度を新たに創設することとされた。なお,書面での資料提供を希望する株主は,書面の交付を請求することができることとした(第325条の2~第325条の5)。