改正情報 産業法部門

独占禁止法の一部改正(令和1・6・26法45)

1 課徴金適用対象等の見直し

(1) 納付を命ずる課徴金の額の計算において,違反事業者から指示又は情報を得てそれらに従って商品又は役務を供給又は購入した完全子会社等の売上額等を算定基礎に追加することとした。(第7条の2第1項、第7条の9第1項・第2項)

(2) 違反行為が公正取引委員会による調査等の日の10年前の日前から行われているときは,違反事業者の実行期間又は違反行為期間の始期を同日とすることとした。(第2条の2第13項及び第14項並びに第18条の2第1項)

2 課徴金算定率等の見直し

(1) 不当な取引制限等を行った事業者に対して課徴金の納付を命ずる場合において,当該行為が卸売業又は小売業に係るものである場合に適用する,納付を命ずる課徴金の額の計算に係る売上額等に乗ずる率(以下「算定率」という。)に係る規定等を廃止することとした。(業種別算定率の廃止)(旧第7条の2第1項・第6項)

(2) 不当な取引制限を行った規模の小さい事業者に対する算定率の適用においては,実質的な中小企業に限定して適用することとした。(第7条の2第2項関係)

(3) 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令等を受けたことがある場合に適用される算定率について,その適用対象を整理することとした。(第7条の3第1項関係)

(4) 他の事業者に対し違反行為をすること等を要求等した場合に適用される算定率を,他の事業者に対し公正取引委員会の調査の際に,当該違反行為に係る算定基礎となるべき事実に係る資料を隠蔽し,又は仮装する調査妨害行為を要求等した者等に対しても適用することとした。(第7条の3第2項関係)

3 課徴金減免制度の見直し

(1) 公正取引委員会規則で定めるところにより,単独で,当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行った課徴金納付命令対象事業者(不当な取引制限を行った者に限る。以下同じ。)について,申請者数の上限を撤廃して当該事業者の数にかかわらず,減算前の課徴金の額(以下「減算前課徴金額」という。)に当該事実の報告等を行った順位に応じた一定の割合を乗じて得た額を当該減算前課徴金額から減額することとした。(第7条の4第2項・第3項関係)

(2) 公正取引委員会は,3(1)の事実の報告等を行った事業者(以下「報告等事業者」という。)から協議の申出があったときは,当該報告等事業者との間で協議を行うものとし,当該報告等事業者との間で,当該報告等事業者が当該協議において公正取引委員会に対し,報告又は提出の申出を行った事実又は資料を合意後直ちに報告又は提出すること等の行為をし,かつ,公正取引委員会が上限割合の範囲内において,減算前課徴金額を減ずべき割合として定めた特定の割合を乗じて得た額を当該減算前課徴金額から減額すること等を内容とする合意をすることができることとした(事業者の実態解明への協力度合いに応じた減産率の付加)。(第7条の5第1項・第2項関係)

(3) 報告等事業者が3(2)の合意に違反して当該合意に係る行為を行わなかった場合等に,課徴金減免制度の適用をしないこととした。(第7条の6第5号~第7号関係)

4 排除措置を命ずる手続,課徴金の納付を命ずる手続の整備

 違反行為が既になくなっている場合において,当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる期間及び課徴金の納付を命ずることができる期間を,当該違反行為がなくなった日から7年とすることとした。(第7条第2項、第7条の8第6項関係)

5 延滞金の割合の見直し

 課徴金をその納期限までに納付しない場合における延滞金の割合を,年14.5パーセントを超えない範囲内において政令で定める割合とすることとした。(第69条第2項関係)

6 罰則規定の見直し

(1) 調査における強制処分に係る罰則としての罰金の上限額を300万円に引き上げるとともに,行為者を罰するほか,法人等に対しても罰金刑を科することとした。(第94条の2並びに第95条第1項第4号及び第2項第4号関係)

(2) 検査妨害等の罪に係る法人等に対する罰金の上限額を2億円に引き上げることとした。(第95条第1項第3号・第2項第3号関係)

7 犯則調査権限の整備

 犯則事件(第89条から第91条までの罪に係る事件)を調査する場合において,公正取引委員会の職員は,記録命令付差押え等ができるようにする等,所要の規定を整備することとした。(第102条~第116条関係)

 

 この改正は,令和2年12月25日までに政令で定める日から施行される。ただし,6の改正については,令和元年7月26日に,5及び7の改正については,令和2年3月25日までに政令で定める日に施行される。