民事執行法の一部改正(令和1・5・17法2)
1 債務者の財産状況の調査に関する規定の整備
(1) 財産開示手続
財産開示手続の申立てに必要とされる債務名義の種類を見直し,金銭債権についての強制執行の申立てに必要とされる債務名義であれば,いずれの種類の債務名義についても,財産開示手続の申立てをすることができることとし,財産開示手続における手続違背に対する罰則を強化することとした。(197条1項並びに213条1項5号及び6号関係)
(2) 第三者からの情報取得手続
執行裁判所が,金銭債権について執行力のある債務名義を有する者等の申立てにより,登記所,市町村等,金融機関等に対し,債務者の有する不動産,給与債権,預貯金債権等に関する情報の提供を命ずる手続を新設することとした。(204条~211条及び214条関係)
2 不動産競売における暴力団員の買受け防止に関する規定の新設
(1) 暴力団員等に該当しないこと等の陳述
不動産競売における買受けの申出は,買受けの申出をしようとする者が暴力団員等(暴力団員及び暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者)に該当しないこと等を陳述しなければ,することができないこととするとともに,虚偽の陳述をした者に対する罰則を設けることとした。(65条の2及び213条1項3号関係)
(2) 売却不許可事由等
不動産競売において,最高価買受申出人が暴力団員等に該当すること等を売却不許可事由とすることとし,執行裁判所が原則としてその判断のために必要な調査を都道府県警察に嘱託しなければならないこととした。(68条の4及び71条5号関係)
3 子の引渡しの強制執行に関する規定の整備
(1) 子の引渡しの強制執行の方法及び要件
子の引渡しの直接的な強制執行は,執行裁判所が決定により執行官に子の引渡しを実施させる方法により行うこととし,この強制執行の申立ては,間接強制による強制執行を実施しても,債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないとき等に該当するときでなければすることができないこととした。(174条1項及び2項関係)
(2) 執行官の権限等
執行官が債務者による子の監護を解くために必要な行為を行うためには,原則として債権者が執行場所に出頭することを要することとするとともに,執行官が債務者による子の監護を解くために必要な行為として行うことができる行為の内容に関する規定等を設けることとした。(175条関係)
(3) 執行裁判所及び執行官の責務
執行裁判所及び執行官が,子の引渡しの直接的な強制執行の手続において子の引渡しを実現するに当たっては,子の年齢及び発達の程度その他の事情を踏まえ,できる限り,当該強制執行が子の心身に有害な影響を及ぼさないように配慮しなければならないこととした。(176条関係)
この改正は,令和2年5月16日までに政令で定める日【令和2年4月1日】から施行される。