ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12・5・24法律第81号)の一部改正(平成28・12・14法律第102号)
1 住居等の付近をみだりにうろつく行為及び電子メールの送信等をする行為の規制等(第2条関係)
(1) 住居等の付近をみだりにうろつく行為が「つきまとい等」の対象行為に加えられた。
(2) 「つきまとい等」の対象行為とされている電子メールを送信することのほか、次の行為を対象行為に加え、規制の対象とするとともに、ストーカー行為の定義において、これらの電子メールの送信等をする行為については身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限ることとした。
① 電子メール以外のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信を行うこと。
② 上記①のほか、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、その第三者が当該個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものの当該機能を利用する行為をすること。
(3) 「つきまとい等」の対象行為に、特定の者等の性的羞恥心を害する電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体を送付し若しくはその知り得る状態に置く等を明記することとされた。
2 禁止命令等の制度の見直し
(1) 警告前置の廃止
都道府県公安委員会は、第3条の規定〔つきまとい等をして不安を覚えさせることの禁止規定〕に違反する行為があった場合において、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、警告を受けた者が当該警告に従わずに当該警告に係る同条の規定に違反する行為をした場合でなくとも、その相手方の申出により、又は職権で、禁止命令等をすることができることとされた。(第5条第1項関係)
(2) 緊急時の禁止命令等
公安委員会は、第3条の規定に違反する行為があった場合において、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときであって、当該行為の相手方の身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害されることを防止するために緊急の必要があると認めるときは、聴聞又は弁明の機会の付与を行わないで、当該相手方の申出により(当該相手方の身体の安全が害されることを防止するために緊急の必要があると認めるときは、その申出により、又は職権で)、禁止命令等をすることができることとされた。この場合において、当該禁止命令等をした公安委員会は、意見の聴取を、当該禁止命令等をした日から起算して15日以内に行わなければならないこととした。(第5条第3項関係)
(3) 禁止命令等の有効期間
① 禁止命令等の効力は、禁止命令等をした日から起算して1年とすることとした(第5条第8項関係)。
② 公安委員会は、禁止命令等をした場合において、上記①の期間の経過後、当該禁止命令等を継続する必要があると認めるときは、当該禁止命令等に係る事案に関する第3条の規定に違反する行為の相手方の申出により、又は職権で、当該禁止命令等の有効期間を1年間延長することができることとし、当該延長に係る期間の経過後、これを更に延長しようとするときも、同様とすることとされた(第5条第9項関係)。
(4) 仮の命令の制度の廃止
仮の命令の制度は、廃止することとされた。(第6条関係)
3 ストーカー行為等に係る情報提供の禁止
何人も、ストーカー行為又は第3条の規定に違反する行為(ストーカー行為等)をするおそれがある者であることを知りながら、その者に対してその相手方の氏名、住所等の情報を提供してはならないこととされた。(第7条関係)
4 ストーカー行為等の防止及びストーカー行為等の相手方の保護に資するための措置等
(1) 職務関係者による配慮等の規定の整備(第9条関係)
① ストーカー行為等に係る相手方の保護、捜査、裁判等に職務上関係のある者(職務関係者)は、その職務を行うに当たり、当該ストーカー行為等の相手方の安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならないこととされた。
② 国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、ストーカー行為等の相手方の人権、ストーカー行為等の特性等に関する理解を深めるために必要な研修及び啓発を行うこととされた。
③ 国、地方公共団体等は、上記①及び②のほか、その保有する個人情報の管理について、ストーカー行為等の防止のために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととされた。
(2) 民間の施設における滞在についての支援及び公的賃貸住宅への入居についての配慮
国及び地方公共団体は、ストーカー行為等の相手方に対する民間の施設における滞在についての支援及び公的賃貸住宅への入居についての配慮に努めなければならないこととされた。(第10条第1項関係)
(3) 国及び地方公共団体のストーカー加害者を更生させるための方法やストーカー被害者の心身の健康を回復させるための方法等に関する調査研究の推進に係る規定(第11条関係、略)
(4) ストーカー行為等の防止等に資するためのその他の措置(第12条関係、略)
5 公安委員会の事務の委任(第17条関係、略)
6 罰則の見直し
(1) ストーカー行為をした者に対する刑事罰について、懲役刑の上限を6月から1年に、罰金刑の上限を50万円から100万円に、それぞれ引き上げるとともに、告訴がなければ公訴を提起することができないこととしている規定は削ることとされた。(第18条関係)
(2) 禁止命令等(第5条第1項第1号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者及び禁止命令等に違反してつきまとい等をすることによりストーカー行為をした者に対する刑事罰について、懲役刑の上限を1年から2年に、罰金刑の上限を100万円から200万円に、それぞれ引き上げることとされた。(第19条関係)
(3) 上記(2)のほか、禁止命令等に違反した者に対する刑事罰について、50万円以下の罰金のほか、6月以下の懲役に処することができることとした。(第20条関係)
この改正は、平成29年1月3日から施行された。ただし、2及び5は、平成29年6月14日から施行することとされた。