組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11・8・18法律第136号)の一部改正(平成29・6・21法律第67号)
1 目的の追加
法律の目的に,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するため」を加えることとされた(第1条関係)。
2 犯罪収益の定義改正
財産上の不正な利益を得る目的で犯した死刑又は無期若しくは長期4年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪等(本法による改正前の別表に掲げるものを除く。)の犯罪行為により生じ,若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産等を犯罪収益に加えることとされた(第2条第2項関係)。
3 テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画の処罰規定の新設
(1)下記①②に掲げる罪に当たる行為で,テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち,その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。)の団体の活動として,当該行為を実行するための組織により行われるもの,又はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ,若しくはテロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し,若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を2人以上で計画した者は,その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配,関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは,それぞれ①又は②に定める刑に処することとされた。ただし,実行に着手する前に自首した者は,その刑を減軽し,又は免除することとされた(第6条の2第1項及び第2項関係)。
①別表第四に掲げる罪のうち,死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 5年以下の懲役又は禁錮
②別表第四に掲げる罪のうち,長期4年以上10年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 2年以下の懲役又は禁錮
(2)上記(1)①②に掲げる罪のうち親告罪とされているものに係る(1)の罪について,親告罪とする旨明記された(第6条の2第3項関係)。
(3)上記(1)の罪に係る事件についての被疑者の取調べその他の捜査を行うに当たって,その適正の確保に十分に配慮しなければならない旨規定することとされた(第6条の2第4項関係)。
4 証人等買収の処罰規定の新設
(1)下記①②に掲げる罪に係る自己又は他人の刑事事件に関し,証言をしないこと等の報酬として,金銭その他の利益を供与し,又はその申込み若しくは約束をした者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処することとされた(第7条の2第1項関係)。
①死刑又は無期若しくは長期4年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪
②2の罪など別表第一に掲げる罪
(2)上記(1)①②に掲げる罪に当たる行為が,団体の活動として,当該行為を実行するための組織により行われた場合等において,上記(1)の罪を犯した者は,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処することとされた(第7条の2第2項関係)。
5 条約による国外犯処罰・国際共助手続関係等
3の罪及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等に規定する罪の一部につき,刑法第4条の2の例に従うこととされ(第12条関係),犯罪収益の拡大に伴い,捜査機関等への情報提供の対象となる犯罪を拡大するほか,所要の規定の整備を行うこととされた(第13条等関係)。
この改正は平成29年7月11日より施行される。ただし,5の第12条関係の改正については,国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約が日本国について効力を生ずる日(平成29年8月10日[平成29年外務省告示第252号])より施行される。