刑法(明治40・4・24法律第45号)の一部改正(平成29・6・23法律第72号)
1 強制性交等
13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は,強制性交等の罪とし,5年以上の有期懲役に処することとし,13歳未満の者に対し,性交等をした者も,同様とすることとされた(第177条関係)。
2 準強制性交等
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて,性交等をした者は,1の例によることとされた(第178条第2項関係)。
3 監護者わいせつ及び監護者性交等
(1)18歳未満の者に対し,その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は,第176条の例によることとされた(第179条第1項関係)。
(2)18歳未満の者に対し,その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は,1の例によることとされた(第179条第2項関係)。
(3)上記(1)及び(2)の未遂は,罰することとされた(第180条関係)。
(4)上記(1)から(3)までの罪を,国民及び国民以外の者の国外犯とすることとされた(第3条,第3条の2関係)。
4 強制わいせつ等致死傷及び強制性交等致死傷
(1)第176条,第178条第1項若しくは3(1)の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し,よって人を死傷させた者は,無期又は3年以上の懲役に処することとされた(第181条第1項関係)。
(2)上記1,2若しくは3(2)の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し,よって人を死傷させた者は,無期又は6年以上の懲役に処することとされた(第181条第2項関係)。
5 集団強姦等の罪及び同罪に係る強姦等致死傷の罪の廃止
第178条の2及び第181条第3項が削られた。
6 強盗・強制性交等及び同致死
(1)強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(監護者性交等を除く。以下同じ)若しくはその未遂罪をも犯したとき,又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは,無期又は7年以上の懲役に処することとされた(第241条第1項関係)。
(2)上記(1)の場合のうち,その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは,人を死傷させたときを除き,その刑を減軽することができることとされた。ただし,自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは,その刑を減軽し,又は免除することとされた(第241条第2項関係)。
(3)上記(1)の罪に当たる行為により人を死亡させた者は,死刑又は無期懲役に処することとされた(第241条第3項関係)。
(4)上記(3)の未遂は,罰することとされた。(第243条関係)
7 強姦罪等の非親告罪化
(1)「強制わいせつ」「強姦」「準強制わいせつ及び準強姦」を親告罪としていた第180条の規定は削除された。
(2)第225条の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下同じ),第227条第1項の罪(第225条の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る)及び第227条第3項の罪(わいせつの目的に係る部分に限る)並びにこれらの罪の未遂罪は,第229条の規定から削ることとされた(第229条関係)。
この改正は平成29年7月13日から施行される。
なお,政府は,この法律の施行後3年を目途として,性犯罪における被害の実情,この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し,性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて所要の措置を講ずることとされた(附則第9条関係)。