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◆六法を手がかりに改正遍歴などを辿る

 「六法で法律を引くと,法律の題名の下や脇のほうに「昭和●●法○○」「平成△△法□□」等々,書いてあるけれど,これは何だろう?」と思われたことはありませんか。
 これらは法令番号と呼ばれるものです。
 例えば,ポケット六法755頁の会社法をご覧ください。「会社法」との題名の直下に(平成17・7・26法86)との記載があることと思います。
 これは平成17年7月26日付けの官報で会社法が公布されたことを示しています。
 次に法86ですが,これは法律第86号を略したもので,(平成17年に制定された法律のうち)86番目に制定された法律という意味合いになります。

 題名のヨコ側に目をやると「施行」「改正」という項目立てがあり,ここにも暦年と番号が並んでいます。
 「施行」欄では,平成18年5月1日から施行されたということは一目瞭然かと思いますが,下に(平成18政77)との記載があります。これは,平成18年の政令第77号によって会社法(平成17法86)の施行日が定められたということを示しています。
 「改正」欄に目を向けると「平成18法50」を筆頭にぞろぞろと記載がありますが,これはもうお分かりかも知れません。平成18年の法律第50号…平成27年の法律63号によって,改正がなされたことを示します(ご覧の通り,同じ年に2回以上改正があるときは,最初に年号を示し,ナカグロ(・)で区切って法番号だけにしてあります。また,「平成26法90」のように重要な改正は,ゴシックで示しています)。
 ※なお,法令番号のより詳細な解説については「有斐閣六法の使い方・読み方」(12,13頁)を,施行欄及び改正欄の見方につきましては,ポケット六法本体「凡例」(3頁)及び「有斐閣六法の使い方・読み方」(13頁)もあわせてご覧ください(「有斐閣六法の使い方・読み方」は下記PDFからもご覧いただけます)↓↓
 https://www.yuhikaku.co.jp/yuhikaku_pr/pokeroku2016/wp-content/themes/yuhikaku_wp_pokeroku2016/howtoroppou.pdf

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 では,いったいこれらの法令番号が分かることで何が便利なのでしょうか。

1 官報の記事を探すのに使える。
 官報(六法の原典)で公布されたときのママの条文を見たい,○○法の一部を改正する法律(一部改正法)で具体的な改正箇所を知りたいといった場合にこれらの法令番号が分かっていれば,官報の目録を使って何月何日のどの官報に見たい法令が掲載されているかをすぐに確認でき,検索に便利です。

 ※官報・・・・・・法令などの公示事項を掲載している国の機関誌で,独立行政法人国立印刷局が発行しています。

2 同一法令名のものでも区別が付けられる。
 例えば,公職選挙法の改正欄において,同法を改正する法律名を書き出してみるとすると,過去3年だけでも「公職選挙法の一部を改正する法律」という同一名の法律が4件出てきます。
 これを列挙するよりかはシンプルに法令番号があった方が便利ではないかというわけです。
 また,法令が全部改正された場合にも改正前と改正後で同じ名称の場合があります。例えば,平成26年に全部改正された行政不服審査法。同改正前の法令番号は昭和37年法律第160号,同改正後の法令番号は平成26年法律第68号。法令番号を見れば,どれが改正前で改正後かもすぐに見分けがつきます。

 3 法令の題名に改正があった場合においての確認作業に使える。
 さらに,法律の題名が変わってしまった場合においても有用です。
 いわゆる安保法制によって「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(改正前の名称)」は「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」と題名改正されました。
 題名改正のことを知らなければ,一瞬,別な法律かと思ってしまいますが,法令番号が平成15年法律第79号と同一なので,題名が改正されたものだとすぐに気づけます。
 ※もっとも,ポケット六法では題名に改正があった法令は,改正法令の法令番号とともに旧題名を示しています(353頁参照)。

  このように見てみると法令番号はある種法令の“戸籍”のような役割を果たしているように思います。
 法令の改正遍歴を調べる際などには,まずは六法に記載された改正欄の法令番号をご確認いただくとスムーズかも知れません。