改正情報 刑事法部門

改正情報 刑事法部門(2016年6月30日更新)

◎刑事訴訟法の一部改正(平成28・6・3法律第54号)

◎刑法の一部改正(平成28・6・3法律第54号)

○組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部改正(平成28・6・3法律第54号)

●犯罪捜査のための通信傍受に関する法律の一部改正(平成28・6・3法律第54号)

刑事訴訟法(昭和23・7・10法律第131号)の一部改正(平成28・6・3法律第54号)

一 取調べの録音・録画制度の導入……*平成31年6月2日までに政令で定める日施行

 取調べの録音・録画義務

 検察官又は検察事務官が,死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件等の裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件について身柄拘束中の被疑者を取り調べる場合には,原則,取調べの全過程の録音・録画を義務付けることとされた(第301条の2第4項関係)。

 なお,被疑者が記録を拒み,その他被疑者の言動により,記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認められるとき,暴力団が関係する事件等については記録しないこととされた。

 取調べの録音・録画をした記録媒体の取調べ請求義務

 検察官は,供述調書の任意性を立証するため,1により記録された録音・録画記録の取調べ請求をしなければならないこととされた(第301条の2第1項)。

 

二 証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の創設……*平成30年6月2日までに政令で定める日施行

 検察官は,弁護人の同意を条件に所定の財政経済関係犯罪,組織的犯罪及び薬物銃器犯罪等の特定犯罪に係る事件の被疑者・被告人との間で,被疑者・被告人が他人の犯罪を明かせば,検察官が不起訴や求刑を軽くする内容の合意をすることができることとされた(第350条の2,第350条の3関係)。

 なお,上記の合意に反して,検察官等に対し,虚偽の供述をし,偽造若しくは変造の証拠を提出した者は,5年以下の懲役に処することとされた(第350条の15第1項関係)。

 

三 刑事免責制度の導入……*平成30年6月2日までに政令で定める日施行

 証人尋問開始前,証人が刑事訴追を受け,又は有罪判決を受けるおそれのある事項についての尋問を予定している場合,あるいは,証人尋問開始後,そのような事項について証言を拒んだと認められる場合,裁判所の決定により,免責を与える条件の下で,証人にとって不利益な事項についても証言を義務付けることができることとされた(第157条の2,第157条の3関係)。

 

四 裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明確化……*平成28年6月23日施行

 裁判所は,「保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、」適当と認めるときは,職権で保釈を許すことができることとされ,条文上において考慮事情が明確化された(第90条関係)。

 

五 弁護人による援助の充実化

 被疑者国選弁護制度の対象事件の拡大……*平成30年6月2日までに政令で定める日施行

 被疑者国選弁護制度の対象を,勾留状が発せられている全ての被疑者に拡大することとされた(第37条の2,第37条の4関係)。

 弁護人の選任に係る事項の教示の拡充……*平成28年12月2日までに政令で定める日施行

 被疑者・被告人に対し弁護人を選任することができる旨を告げる際には,弁護人選任の申出方法等も教示しなければならないこととされた(第76条第2項,第77条第2項,第203条第3項,第204条第2項,第207条第3項関係)。

 

六 証拠開示制度の拡充……*平成28年12月2日までに政令で定める日施行

 証拠の一覧表の交付手続の導入

 検察官は,第316条の14第1項の規定により請求した証拠の開示をした後,被告人側から請求があった場合には,検察官が保管する証拠の一覧表の交付をしなければならないこととされた(第316条の14第2項関係)。

 公判前整理手続の請求権の付与

 検察官,被告人及び弁護人に公判前整理手続の請求権を付与することとされた(第316条の2第1項,第316条の28第1項関係)。

 証拠開示の対象の拡大

 検察官が請求した証拠物の押収手続記録書面(証拠物の押収に関し,その押収者,押収の年月日,押収場所その他の押収の状況を記録したもの)等を開示の対象として追加することとされた(第316条の15関係)。

 

七 犯罪被害者等・証人を保護するための措置

 証人等の氏名・住居の開示に係る制度の導入……*平成28年12月2日までに政令で定める日施行

 検察官は,尋問を請求する場合において,証人等に対し加害等がなされるおそれがあると認めるときは,当該証人等の氏名又は住所を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し,弁護人に開示することができることとした(第299条の4第1項関係)。

また,そのような措置によっても,加害等の行為を防止できないおそれがあると認められる場合には,弁護人にも開示しないことができることとし,その場合には代替的な呼称や連絡先を弁護人に開示しなければならないこととされた(第299条の4第2項関係)。

その他,訴訟に関する書類等,公判調書の閲覧等についても同様の措置ができることとされた(第299条の4第3項,第4項関係)。

 公開の法廷における証人の氏名等の秘匿措置の導入……*平成28年12月2日までに政令で定める日施行

 裁判所は,証人等への加害等のおそれがある場合に,証人等の申出により証人等特定事項(氏名及び住所その他の当該証人等を特定させることとなる事項)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができることとされた(第290条の3第1項関係)。

3 ビデオリンク方式による証人尋問の拡充……*平成30年6月2日までに政令で定める日施行

 裁判所は,証人を尋問する場合において,同一構内への出頭・出頭後の移動に際し,当該証人に加害等がなされるおそれがあると認められる場合には,被告人が在席する法廷とは別の場所に証人を在席させビデオリンク方式による尋問をすることができることとされた(第157条の6第2項関係)。

 

八 証人不出頭の罪の法定刑の引上げ……*平成28年6月23日施行

 証人不出頭及び宣誓拒絶等の罪の法定刑を「10万円以下の罰金または拘留」から「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」に引き上げることとされた(第151条,第161条関係)。

 

九 自白事件の簡易迅速な処理のための措置……*平成28年12月2日までに政令で定める日施行

 被告人が自白を撤回するなどし,即決裁判手続によらないこととなった場合でも,同一事件についてさらに公訴を提起することができることとされた(第350条の12関係)。

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刑法(明治40・4・24法律第45号)の一部改正(平成28・6・3法律第54号)

 犯人蔵匿等,証拠隠滅等の罪の法定刑を「2年以下の懲役又は20万円以下の罰金」から「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」に,証人等威迫の罪の法定刑を「1年以下の懲役又は20万円以下の罰金」から「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」に引き上げることとされた(第103条,第104条,第105条の2関係)。

 この改正は,平成28年6月23日より施行される。

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犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11・8・18法律第137号)の一部改正(平成28・6・3法律第54号)

1 犯罪捜査のための通信傍受の対象事件の範囲の拡大

 通信傍受の対象事件に殺人,窃盗,詐欺等を新たに追加し,これらの追加された罪について,犯罪関連通信の受信ができるのは,当該罪に当たる行為が,あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものであると疑うに足りる状況がある場合に限ることとされた(第3条第1項,別表第2関係)。

2 暗号技術を活用する新たな傍受の実施方法の導入

 検察官又は司法検察員は,裁判官の許可を受けて,通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者(通信管理者等)に命じて通信内容を暗号化し,その後復号により復元された通信を通信管理者等の立会いの下に再生することができることとされた(第20条第1項,第21条第1項関係)。また,暗号化された通信内容を特定電子計算機に伝送させたうえで,受信と同時に復号をし、傍受すること又は一時的保存の後,復号して復元された通信を再生することができることとされた(第23条関係)。

  

 1の改正は,平成28年12月2日までに政令で定める日から,2の改正は,平成31年6月2日までに政令で定める日から施行される。

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組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11・8・18法律第136号)の一部改正(平成28・6・3法律第54号)

 組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等,証拠隠滅等及び証人等威迫の罪の法定刑を「3年以下の懲役又は20万円以下の罰金」から「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に引き上げることとされた(第7条第1項第1号から第3号関係)。

 この改正は,平成28年6月23日より施行される。

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