改正情報 民事法部門

改正情報 民事法部門(2016年7月15日更新)

◎民法(平成28・6・7法律第71号

*児童福祉法(平成28・6・3法律第63号)

○電子記録債権法(平成28・6・3法律第62号)

◎会社法(平成28・6・3法律第62号)

●消費者契約法(平成28・6・3法律第61号)

○特定商取引に関する法律(平成28・6・3法律第60号)

◎民法(平成28・4・13法律第27号

○会社法施行規則(平成28・1・8法務省令第1号)

○会社法施行規則(平成27・12・28法務省令第61号)

民法(明治29・4・27法律第89号)の一部改正(平成28・6・7法律第71号)

1 再婚禁止期間の短縮

 女性の再婚禁止期間につき,前婚の解消又は取消しの日から6箇月とされていたが,前婚の解消又は取消しの日から起算して100日に短縮された(第733条第1項)。

2 妊娠していない場合における再婚禁止期間の撤廃

 また,女性が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合には,上記の再婚禁止期間の適用を受けないこととされた(第733条第2項第1号)。
 上記の改正に伴い,再婚禁止期間内にした婚姻の取消を定める第746条において,「6箇月」を「起算して100日」に,「懐胎した」を「出産した」と改められた。

  この改正は平成28年6月7日から施行される。
 なお,政府は,この改正の施行後3年を目途として,この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し,再婚禁止に係る制度の在り方について検討を加えることとされた(附則第2項)。

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児童福祉法(昭和22・12・12法律第164号)の一部改正(平成28・6・3法律第63号)

1 児童福祉法の理念の明確化(ポケット略部分)

 (1) 全て児童は,児童の権利に関する条約の精神にのっとり,適切に養育されること,その生活を保障されること,愛され,保護されること,その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有することと規定された。(第1条関係)

 (2) 全て国民は,児童が良好な環境において生まれ,かつ,社会のあらゆる分野において,児童の年齢及び発達の程度に応じて,その意見が尊重され,その最善の利益が優先して考慮され,心身ともに健やかに育成されるよう努めるものと規定され(第2条第1項関係),また,児童の保護者は,児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負うものとされた。(第2条第2項関係)

2 国及び地方公共団体の責務に関する規定の新設(ポケット略部分)

 国及び地方公共団体は,児童が家庭において心身ともに健やかに養育されるよう,児童の保護者を支援しなければならないものとされた。また,児童を家庭において養育することが困難である場合等にあっては,必要な措置を講ずるものとされた。(第3条の2関係)

3 児童相談所に係る規定の改正

 (1) 児童相談所長は,通告等を受けた児童若しくはその保護者を通わせ,若しくはその住所等において,児童福祉司等に指導させ,又は市町村等に委託して指導させることができるものと規定されることとなった。(第26条第1項第2号関係)

 (2) 児童相談所長は,通告を受けた児童等のうち,児童及び妊産婦の福祉に関し,施設入所等の措置を要すると認める者を除き,専門的な知識等を要しない支援を行うことを要すると認める者を市町村に送致するものと規定された。(第26条第1項第3号関係)

 (3) 児童相談所長は,通告を受けた児童等のうち,市町村が実施する児童の健全な育成に資する事業等の実施が適当であると認める者をその事業の実施に係る市町村の長に通知するものとされた。(第26条第1項第8号関係)

 (4) その他,児童相談所の体制の強化に関する事項が定められた(第12条第3項及び第12条の3第6項第1号関係・ポケット略部分)。

4 要保護児童対策調整機関に関する規定の改正(略)

5 里親委託及び養子縁組の推進に関する改正

 (1) 養子縁組里親について,都道府県知事が行う研修を修了し養子縁組によって養親となること等を希望する者のうち養子縁組里親名簿に登録されたものとすることとされた。(第6条の4第2号関係)

 (2) 養子縁組里親名簿の作成,養子縁組里親の欠格要件等について規定された。(第34条の19~第34条の21関係)

6 一時保護に係る規定の改正

 (1) 一時保護は,児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため,又は児童の状況を把握するために行うものであることと規定された。(第33条関係)

 (2) 児童相談所長等は,一時保護が行われた児童について,満20歳に達するまでの間,引き続き一時保護を行うことができることとされた。(第33条第6項及び第7項関係)

 (3) 児童相談所長等は,児童以外の満20歳に満たない者のうち,施設入所等の措置が引き続き採られているもの等について,一時保護を行うことができることとされた。(第33条第8項及び第9項関係)

7 児童福祉審議会に関する事項(略)

 この改正は,平成29年4月1日より施行される。ただし,1,2,3(1)の改正については平成28年6月3日から,3(4),6(1)及び7の改正は平成28年10月1日から施行される。

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電子記録債権法(平成19・6・27法律第102号)の一部改正(平成28・6・3法律第62号)

 電子債権記録機関の変更に係る規定の追加

(1)記録機関変更記録

 電子記録債権は,その電子記録を行う電子債権記録機関の変更(電子債権記録機関の変更)をすることができることとされた(第47条の2)。

(2)記録機関変更記録の請求等

 記録機関変更記録の請求は,変更前債権記録に電子記録債権の債権者として記録されている者(その者について相続その他の一般承継があったときは,その相続人その他の一般承継人)であって,当該電子記録債権の債務者全員の承諾を得たものがすることができることとされた(第47条の3)。

(3)変更前電子債権記録機関の記録の禁止

 第7条第1項の規定(電子記録請求に係る電子債権記録機関の記録義務)にかかわらず,変更前電子債権記録機関は,前条第四項の規定による記録をしたときは,変更前債権記録に電子記録(変更前電子債権記録機関が,変更後電子債権記録機関からの記録機関変更記録をした旨等の通知を受けた際にする記録を除く。)をしてはならないこととされた(第47条の4)。

(4)記録機関変更記録の記録事項等

 変更後電子債権記録機関は,変更前電子債権記録機関から所定の通知を受けたときは,遅滞なく,記録機関変更記録をしなければならないこととされた(第47条の5)。

 

 この改正は平成29年6月2日までに政令で定められる日から施行される。

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会社法(平成17・7・26法律第86号)の一部改正(平成28・6・3法律第62号)

 電子広告調査機関の欠格事由として,「資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)第20条第4項(前払式支払手段発行者が行う電子公告),第61条第7項(資金移動業者が行う電子公告)及び第63条の20第7項(外国仮想通貨交換業者である仮想通貨交換業者が行う電子公告)」において準用する調査記録簿等の記載に係る規定(第955条第1項)などに違反し,罰金以上の刑に処され,その執行を終わり,又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しないものも該当する者として追加されることとなった(第943条)。

  この改正は平成29年6月2日までに政令で定められる日から施行される。

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消費者契約法(平成12・5・12法律第61号)の一部を改正する法律(平成28・6・3法律第61号)  

1 過量な内容の消費者契約の取消し

 消費者は,事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,物品,権利,役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合等において,その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは,これを取り消すことができることとされた(第4条第4項関係)。

 2 重要事項の範囲

 事業者の不実告知があった場合において,消費者がその意思表示を取り消すことができる対象である重要事項として,物品,権利,役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命,身体,財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情を追加することとされた(第4条第5項関係)。

 3 取消権を行使した消費者の返還義務

 民法第121条の2第1項(第189回国会に内閣より提出された「民法の一部を改正する法律案」により追加)の規定にかかわらず,消費者契約に基づく債務の履行として給付を受けた消費者は,消費者契約法の規定により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消した場合において,給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは,当該消費者契約によって現に利益を受けている限度において,返還の義務を負うこととされた(第6条の2関係)。

 4 取消権行使期間の伸長

 消費者契約法の規定による消費者の取消権については,追認をすることができる時から6箇月間行わないときは時効によって消滅するとされているところ,当該期間を1年間に伸長することとされた(第7条第1項関係)。

 5 事業者の損害賠償の責任を免除する条項

 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項を無効とする規定等について,「民法の規定による」という文言を削除することとされた(第8条第1項第3号及び第4号関係)。

 6 消費者の解除権を放棄させる条項の無効

 次に掲げる消費者契約の条項は,無効とされた(第8条の2関係)。

 (一) 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項

 (二) 消費者契約が有償契約である場合において,当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があること等により生じた消費者の解除権を放棄させる条項

 7 10条に係る例示的文言の追加

 消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する条項であって,民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効と規定する第10条の例示として,「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をしたものとみなす条項」との文言が追加された(第10条関係)。

 8 その他

 適格消費者団体の差止請求の対象となる行為の追加等の所要の規定の整備を行うこととされた。

 

 この改正は,平成29年6月3日から施行される。但3の改正については,「民法の一部を改正する法律案」の成立後,官報にて公布される日より施行される。

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特定商取引に関する法律(昭和51・6・4法律第57号)の一部改正(平成28・6・3法律第60号)

1 指定権利の見直し・改称
 訪問販売,通信販売及び電話勧誘販売において規制対象となる権利の範囲を改め,その名称も「指定権利」から「特定権利」に改められた。また,特定権利に関する適用除外に係る規定等が整備された(第2条第4項及び第26条第2項関係)。

2 承諾をしていない者に対する通信販売ファクシミリ広告の提供の禁止等
 通信販売において販売業者等は,その相手方となる者からの請求又は承諾がない場合に,ファクシミリ広告をしてはならないこととされた(第12条の5関係)。

3 電話勧誘販売に係る通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約等の申込みの撤回等の制度の創設
 電話勧誘販売において,その日常生活で通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約等の申込者等は,申込者等に当該契約を必要とする特別の事情があったときを除き,その売買契約等の申込みの撤回等を行うことができることとされた。また,当該申込みの撤回等の行使及び当該申込みの撤回等に伴う返金等に係る所要の規定を整備することとした(第24条の2関係)。

4 指示制度の整備
 本制度の対象となる販売業者等の違反行為類型に係る規定を整備し,またそのような違反行為等を行った販売業者等に対して指示できる措置として,「違反及び行為を是正するための措置及び購入者等の利益の保護をする措置」との文言が追加された。さらに主務大臣は,販売業者等に対して指示を行ったときは,その旨を公表しなければならないこととされた(第7条,第14条,第22条,第38条,第46条,第56条及び第58条の12第2項関係)。

5 業務停止命令制度の強化
 主務大臣が販売業者等に対して業務の停止を命ずることができる期間の上限を1年から2年に改められた(第8条第1項,第15条第1項,第23条第1項,第39条第1項~第3項,第47条第1項,第57条第1項及び第58条の13第1項関係)。 

6 業務禁止命令制度の創設
 主務大臣は,販売業者等に対して業務の停止を命ずる場合において,当該命令の理由となった事実及び当該事実に関して当該販売業者等の役員等が有していた責任の程度を考慮して当該命令の実効性を確保するために当該停止を命じた取引類型に関する業務を制限することが相当と認められる場合には,当該役員等に対し,当該停止と同一の期間を定めて,当該停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること等の禁止を命ずることができることとされた(第8条の2第1項,第15条の2第1項,第23条の2第1項,第39条の2第1項~第3項,第47条の2第1項,第57条の2第1項及び第58条の13の2第1項関係)。

7 訪問販売等における契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消制度の整備
 (1)申込者等は,販売業者等が不実のことを告げる行為等をしたことによって意思表示を行った場合,追認することができる時から6か月間,これを取り消すことができることとされているところ,当該期間を1年間に改めることとされた。
 (2)売買契約等に基づく債務の履行として給付を受けた申込者等が意思表示を取り消した場合において,給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは,当該売買契約等によって現に利益を受けている限度において,返還の義務を負うこととされた(第9条の3,第24条の3,第40条の3,第49条の2及び第58条の2関係)。

8 報告徴収及び立入検査権限の拡充・整備(第66条関係)(略)
9 送達制度の整備(第66条の3~第66条の6関係)(略)
10 罰則の強化(第70条~第74条関係)(略) 

 この改正は,平成29年12月2日までに政令で定められる日から施行される。ただし,7(2)については,第189回国会に内閣より提出された「民法の一部を改正する法律案」の成立後,官報にて公布される日より施行される。

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民法(明治29・4・27法89)の一部改正(平成28・4・13法律第27号)

1 成年後見人による郵便物等の管理

(1) 家庭裁判所は,成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは,成年後見人の請求により信書の送達の事業を行う者に対し,6か月を超えない期間を定めて成年被後見人に宛てた郵便物等を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができることとされた(第860条の2)。

(2) 成年後見人は成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは,これを開いて見ることができ,成年後見人の事務に関しない郵便物等については速やかに成年被後見人に交付しなければならないこととされた(第860条の3)。

 2 成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限

 成年後見人は,成年被後見人が死亡した場合において,必要があるときは,成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き,相続人が相続財産を管理することができるに至るまで相続財産の保存に必要な行為をすることができることとされた(第873条の2)。

  この改正は,平成28年10月13日から施行される。

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会社法施行規則(平成18・2・7法務省令第12号)の一部改正(平成28・1・8法務省令第1号)

 社外役員の定義,株主総会参考書類,監査役会設置会社における監査役会の電磁的記録の表示方法に係る規定をそれぞれ整備するための改正。

 1 社外役員の定義に係る改正
 社外役員の定義規定のうち,「当該会社役員が会社法第399条の13第5項の社外取締役であること」とする規定が追加された(第2条第3項第5号ロ(2))。

 2 株主総会参考書類記載事項に係る改正
 監査役のほか,監査等委員においても取締役が株主総会に提出しようとする議案について,法令等に違反し,著しく不当な事項があると認めるときは,その旨を株主総会において報告しなければならず(会社法第399条の5),その報告内容の概要を株主総会参考書類に記載しなければならないとされた(第73条第1項第3号)。

 3 電磁的記録に記録された事項の表示方法に係る規定の追加
 監査役会設置会社の監査役会の議事録が電磁的記録をもって作成されているときにおける表示方法は,記録された事項を紙面又は映像面に表示する方法であるが,監査役会設置会社の債権者が役員の責任追及のために必要があるとき及び親会社社員がその権利行使のため必要があるときに閲覧等の請求をするとき(会社法第394条第2項)も,同様の表示方法とされた(第226条第23号)。

 この改正は平成28年1月8日から施行された。

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