労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60・7・5法律第88号)の一部を改正する法律(平成27・9・18法律第73号)
1 一般派遣と特定派遣の区別の廃止
一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の区別を廃止し,労働者派遣事業を全て許可制とすることとされた(第2条,第2章第2節関係)。
2 労働者派遣事業の許可の基準の見直し(第7条関係)(略)
3 労働者派遣法の規定の運用上の配慮に係る規定の見直し(第25条関係)(略)
4 労働者派遣契約の内容等
労働者派遣契約の当事者は,当該労働者派遣契約の締結に際し,以下の事項について定めなければならないとされた(第26条第1項関係)。
(1)派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所の名称及び所在地その他派遣就業の場所
(2)組織単位(労働者の配置の区分であって,配置された労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者が当該労働者の業務の配分に関して直接の権限を有するものとして厚生労働省令で定めるものをいう。以下同じ。)
5 派遣先等への通知(第35条第1項関係)(略)
6 労働者派遣の期間制限(第35条の3関係)
派遣元事業主は,無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣等を除き,派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について,3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣を行ってはならないこととされた。
7 特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等の為の措置(第30条関係)
(1)派遣元事業主は、その雇用する有期雇用派遣労働者(期間を定めて雇用される派遣労働者をいう。以下同じ。)であつて派遣先の事業所等における同一の組織単位の業務について継続して1年以上の期間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがあるものとして厚生労働省令で定めるもの(以下「特定有期雇用派遣労働者」という。)等,その他所定のものに対して雇用の機会を確保するための措置や教育訓練等の機会の提供を講じるように努めなければならないとこととされた。
(2)派遣元事業主は,派遣先の事業所その他派遣就業の場所における同一の組織単位の業務について継続して3年間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがある特定有期雇用派遣労働者について,派遣先に対し,当該派遣労働者に対して労働契約の申込みをすることを求めること等の措置を講じなければならないとされた。
(3)厚生労働大臣は上記(2)に違反した派遣元事業主に対し,指導又は助言をした場合において,当該派遣元事業主がなお上記(2)に違反したときは,当該派遣元事業主に対し,必要な措置をとるべきことを指示することができ,労働者派遣事業の許可の取消し事由となることとされた(第14条第1項及び第48条第3項)。
8 段階的かつ体系的な教育訓練の機会の提供(第30条の2第1項関係)
派遣元事業主は,その雇用する派遣労働者が派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるように教育訓練を実施しなければならないとされた。
9 直接雇用の推進(第30条の4関係)
派遣元事業主がその雇用する派遣労働者等の雇用の安定を図るために講ずるよう努めることとされている措置として,派遣労働者以外の労働者としての就業の機会を確保することが含まれることを明記することとされた。
10 待遇に関する事項等の説明(第31条の2第2項関係)
また,派遣元事業主は,その雇用する派遣労働者から求めがあったときは,均衡を考慮した待遇の確保のために考慮した事項について説明しなければならないとされた。
11 派遣先の講ずべき措置等(第40条関係)
(1)派遣先は,派遣労働者について,当該派遣労働者を雇用する派遣元事業主からの求めに応じ,当該派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する労働者が従事する業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練については,派遣労働者に対しても実施するよう配慮しなければならないとされた(第40条第2項)。
(2)派遣先は,当該派遣先に雇用される労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって,業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては,その指揮命令の下に労働させる派遣労働者に対しても,利用の機会を与えるように配慮しなければならないこととされた(第40条第3項)。
(3)派遣先は,均等な待遇に係る規定(第30条の3第1項)により賃金が適切に決定されるようにするため,派遣元事業主の求めに応じ,その指揮命令の下に労働させる派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する当該派遣先に雇用される労働者の賃金水準に関する情報又は当該業務に従事する労働者の募集に係る事項を提供すること等の措置を講ずるように配慮しなければならないこととされた(第40条第5項)。
12 労働者派遣の役務を受ける期間の制限(第40条の2関係)
派遣先は,当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について,無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣等を除き,派遣元事業主から派遣可能期間である3年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならないとされた。また,派遣先は,意見聴取期間に,過半数労働組合等の意見を聴き,3年を限り,派遣可能期間を延長することができることとされ,これを更に延長しようとするときも,同様とされた。
13 特定有期雇用派遣労働者等の雇用の推進(第40条の4関係)
派遣先は,当該派遣先の事業所等における組織単位ごとの同一の業務について派遣元事業主から継続して1年以上の期間同一の特定有期雇用派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けた場合において,引き続き当該業務に労働者を従事させる為労働者を雇い入れようとするときは,当該業務に従事し,継続した就業を希望する者である特定有期雇用派遣労働者を,遅滞なく雇い入れるように努めなければならないこととされた。
14 派遣先に雇用される労働者の募集に係る事項の周知(第40条の4関係)
派遣先は,当該派遣先の事業所等において派遣元事業主から1年以上の期間継続して同一の派遣労働者により労働者派遣の役務を受けている場合において,当該事業所等において通常の労働者の募集を行うときは,当該募集する労働者が従事すべき業務の内容等を当該派遣労働者に周知しなければならないこととされた。
同様に,派遣先は当該派遣先の事務所等において労働者の募集を行うときは,当該事業所等における同一組織単位の業務について,継続して3年間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがある特定有期雇用派遣労働者であって,継続して就業することを希望する者に対して,当該募集する労働者が従事すべき業務の内容等を周知しなければならないこととされた。
15 労働者契約申込みみなし制度(第40条の6関係)
労働者派遣の役務の提供を受ける者が,事業所ごとの又は組織単位ごとの労働者派遣の役務を受ける期間の制限(第40条の2,第40条の3)の規定に違反して,労働者派遣の役務の提供を受けた場合についても,労働契約の申込みをしたものとみなすこととされた。
この改正は,一部の規定を除き,平成27年9月30日から施行される。
なお,政府はこの改正施行後3年を目途として,改正後の状況を勘案し,検討を加え、必要があると認めるときは,その結果に基づいて所用の措置を講ずることとされた。また,この改正の施行により,労働者の職業生活におけるその能力の有効な発揮及び雇用の安定に資すると認められる雇用慣行が損なわれるおそれがあると認められるときは,改正後の規定につき,すみやかに検討を行うこととされた。

