改正情報 産業法部門

改正情報 産業法部門(2015年8月10日現在)

●特許法(平成27・7・10法律第55号)

○不正競争防止法(平成27・7・10法律第54号)

●金融商品取引法(平成27・6・3法律第32号)

○不当景品類及び不当表示防止法(平成26・11・27法律第118号)

特許法(昭和34・4・13法律第121号)の一部改正(平成27・7・10法律第55号)

 発明の奨励に向けた職務発明制度の見直し及び特許料等の改定を行うとともに,特許法条約(第189国会・内閣提出条約第5号)の実施のための規定の整備を行う改正。

 1 職務発明制度の見直し(第35条関係)

(1)従業者等がした職務発明について,契約,勤務規則その他の定めにおいて,あらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは,その特許を受ける権利は,その発生した時から当該使用者等に帰属することとされた(第3項関係)。 
(2)従業者等は,契約,勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等に特許を受ける権利を取得させた場合には,相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有することとされた(第4項関係)。
(3)経済産業大臣は,発明を奨励するため,産業構造審議会の意見を聴いて,相当の金銭その他の経済上の利益の内容を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況等について指針を定め,これを公表することされた(第6項関係)。

 2 特許法条約実施のための規定の整備

(1)第36条の2第2項に規定する期間内に外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文の提出がなかったときは,特許庁長官が外国語書面出願の出願人に対し,その旨を通知するとともに,その通知を受けた者は,その期間が経過した後であっても,経済産業省令で定める期間内に限りその翻訳文を提出することができることとされた(第36条の2関係)。
(2)特許を受けようとする者は,願書に明細書及び必要な図面を添付することなく,その者がした特許出願(外国においてしたものを含む)を参照すべき旨を主張する方法により,特許出願をすることができることとし(第38条の3関係),特許出願の日を認定できない場合や明細書又は図面の一部が欠けている場合に,経済産業省令で定める期間内に限り,補完できる手続規定を整備することとされた(第38条の2・第38条の4関係)。

 3 特許料の改定

特許権の設定の登録を受ける者又は特許権者が納付する特許料を特許権の設定登録以降の各年において,10%程度引き下げることとされた(第107条関係)。

 この改正は,平成28年7月9日までに政令で定める日から施行される。

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不正競争防止法(平成5・5・19法律第47号)の一部を改正する法律(平成27・7・10法律第54号)

 1 技術上の秘密を不正使用し生じた生産物の譲渡等の規定

 不正競争の定義に,技術上の秘密を不正に使用して生産された物を譲渡する行為等(当該物を譲り受けた時に当該物が不正使用行為により生産された物であることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がない者が譲渡する行為等を除く。)を追加することとされた(第2条関係)。

  2 技術上の秘密を取得した者に対する推定規定の整備

 民事訴訟において,原告の立証負担を軽減するため,被告が悪意又は重過失により生産方法等に係る営業秘密を取得した場合に,当該営業秘密を使用する行為により生ずる物を生産,その他技術上の秘密を使用したことが明らかな行為として政令で定める行為(以下,「生産等」とする。)をしたときに,被告が当該営業秘密を使用してその物を生産等したものと推定することとされた(第5条の2関係)。

  3 除斥期間の延長

 営業秘密を不正に使用する行為に対する侵害の停止又は予防を請求する権利について,その行為の開始のときから20年で消滅するものとされた(第15条関係)。

  4 法定刑の引き上げ・罰則の整備

(1)営業秘密侵害に係る罰則について,罰金額の上限を2000万円に引き上げた(第21条第1項関係)。また,法人処罰に係る罰金の上限についても5億円に引き上げることとされた(第22条第1項第2号)。
(2)不正の利益を得る目的で,又はその保有者に損害を加える目的で,所定の規定に違反する営業秘密の不正開示が介在したことを知って当該営業秘密を取得し,使用又は開示した者は,10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金に処し,又は併科されることとなった(第21条第1項第8号)。
(3)において前記(2)と同様の目的で,営業秘密を違法に使用して生産された物を譲渡等した者は,(2)と同様の刑罰に処されることとされた(第21条第1項第9号)。
(4)営業秘密侵害に係る罰則のうち,日本国内で事業を行う事業者が保有する営業秘密を日本国外において不正に使用等する行為に対する罰則について,罰金額の上限を3000万円に引き上げ,法人処罰に係る罰金額の上限についても10億円に引き上げるとされた(第21条第3項及び第22条第1項第1号関係)。

  5 未遂行為に関する罰則規定の整備

 不正アクセスにより,営業秘密を取得するなどの営業秘密侵害について,未遂行為も刑事罰の対象とすることとされた(第21条第4項)。

  6 非親告罪化

 営業秘密侵害罪(第21条第1項に掲げられたもの)は,被害者からの告訴がなくとも公訴を提起することができることとされた(第21条第5項)。

  7 海外保管情報の窃取

 日本国内で事業を行う者が日本国内で管理し,海外で保管する情報について海外において窃取等の所定の罪(第21条第1項各号(第9号を除く),第3項第1号若しくは第2号又は第4項(第1項第9号に係る部分を除く。))を犯した者も刑事罰の対象とすることとされた(第21条第6項)。

  8 没収に関する手続の新設(第7・8章関係)

 営業秘密侵害により生じた財産等を没収することができることとし,これに関する手続を整備された。

  9 国際共助手続等(第9章関係)

所定の要件に当てはまる外国の刑事事件において,当該外国から没収等の共助の要請があったときに係る共助手続の規定が整備された。

  この改正は,平成28年1月9日までに政令で定める日から施行される。
 ただし,3の規定については平成27年7月10日から施行される。

 

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金融商品取引法(昭和23・4・13法律第25号)の一部改正(平成27・6・3法律第32号)

 《改正の趣旨》

 適格機関投資家等特例業務に関する特例制度において,事業者に対する行為規制が緩く,行政処分の対象外であることや適格機関投資家以外にも販売が可能なことから,一般投資家に被害を与えるケースが増加している状況を踏まえ,成長資金の円滑な供給の確保と投資者の保護を図るため,適格機関投資家等特例業務を行う者につき,一定の欠格事由を定め,契約の概要及びリスクを説明するための書面の契約締結前の交付の義務付け等を行うとともに,業務改善命令,業務停止命令等の監督上の処分を導入する等の措置を講ずるもの。

《主な改正内容》

 1 欠格事由の定めの追加(略)(第29条の4第1項第1号・第2号関係)
 2 説明書類の縦覧等に関する規定にインターネット利用の方法等の追加(略)(第46条の4,第47条の12,第57条の4,第57条の16)
 3 適格機関投資家等特例業務に関する見直し(略)(第63条関係)
 4 罰則規定の整備

 (1)裁判所の禁止又は停止命令
 適格機関投資家等特例業務における業務執行が著しく適正を欠き,かつ,現に投資者の利益が著しく害されており,又は害されることが明白な場合において,投資者の損害の拡大を防止する緊急の必要があるとき,裁判所は当該業務執行の禁止又は停止を命ずることができることとなった(第192条関係)。

 (2)無届,虚偽の届出に関する罰則の強化
 以下に該当する者は,5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処され,又はその両方を処されることとなった(第197条の2第10号の8・第10号の9)。

一 適格機関投資家等特例業務における所定の届出(第63条第2項,第63条の3)をせず,若しくは虚偽の届出をした者又は届出に添付すべき所定の書類等において虚偽の記載若しくは記録等をして届出を提出した者(第63条第3項,第63条4項)

二 内閣総理大臣による適格機関投資家等特例業務の廃止の処分に違反した者(第63条の5関係)

  
 この改正は平成28年6月2日までに政令で定める日から施行される。

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不当景品類及び不当表示防止法(昭和37・5・15法律第134号)の一部改正(平成26・11・27法律第118号)

 《改正の趣旨》

 最近の商品又は役務の取引に関する表示をめぐる状況に鑑み,国及び都道府県の不当表示等に対する監視指導体制を強化し事業者に表示等に係る適切な管理体制の整備を義務づける改正(平成26法71)を踏まえ,不当表示規制の抑止力を強化するため,不当表示をした事業者に課徴金を課す制度を導入するもの。

 《主な改正内容》

1 課徴金納付命令

 自己の供給する商品又は役務の取引について品質等の内容が実際のもの又は事実に相違して他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)及び価格等の取引条件が実際のもの又は他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示(有利誤認表示)(第4条第1項第1号第2号―改正後の第5条第1号第2号)について,内閣総理大臣は,当該表示等を行った事業者に対し,当該行為(以下「課徴金対象行為」という。)に係る売上額の3%の額の課徴金の納付を命じなければならない(第8条第1項本文)。ただし,事業者が不当表示に該当することについて,相当の注意を怠ったものではないとき,又は課徴金の額が150万円未満の場合は課徴金の納付を命ずることができない(第8条第1項ただし書)。また,課徴金対象行為をやめた日から5年を経過したときにおいても,当該課徴金対象行為に係る課徴金の納付を命ずることができない(第12条第7項)。

2 課徴金対象行為に該当する事実の報告による課徴金額減額制度

 当該事業者が課徴金対象行為に該当する事実を内閣総理大臣に報告したときは,内閣総理大臣は,その報告が当該課徴金対象行為についての調査があったことにより課徴金納付命令があるべきことを予知してされたものでない限り,課徴金額を2分の1に減額する(第9条)。

3 返金措置の実施による課徴金額減額等制度

 事業者が課徴金対象行為をした期間において,当該事業者と商品又は役務の取引を行った一般消費者であって特定されているものからの申出があった場合に,事業者が所定の手続に沿って,当該申出をした一般消費者の購入額の3%以上の金銭を交付する措置(返金措置)を実施した場合は,課徴金の納付を命じない又は減額する(第10条)。

  この改正は,平成28年5月26日までに政令で定める日から施行される。

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