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☆新法紹介

 ○私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(平成26・11・27法律第126号)

 ~いわゆるリベンジポルノ規制法といわれるもの。

1 目的

 この法律は,私事性的画像記録の提供等により私生活の平穏を侵害する行為を処罰するとともに,私事性的画像記録に係る情報の流通によって名誉又は私生活の平穏の侵害があった場合における特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の特例及び当該提供等による被害者に対する支援体制の整備等について定めることにより,個人の名誉及び私生活の平穏の侵害による被害の発生又はその拡大を防止することを目的とする(第1条)。

2 定義

 「私事性的画像記録」とは,①から③までのいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影対象者において,第三者が閲覧することを認識した上で,任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。以下同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録をいう(第2条第1項)。

① 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
② 他人が人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
③ 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって,殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するもの

 「私事性的画像記録物」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,上記の①から③までのいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものをいう(第2条第2項)。

3 私事性的画像記録提供等

① 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で,電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する(第3条第1項)。
② ①の方法で,私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し,又は公然と陳列した者も,①と同様とする(第3条第2項)。
③ ①又は②の行為をさせる目的で,電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し,又は私事性的画像記録物を提供した者は,1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する(第3条第3項)。
④ ①から③までの罪は,告訴がなければ公訴を提起することができない(第3条第4項)。
⑤ ①から③までの罪は,刑法第3条(国民の国外犯)の例に従う(第3条第5項)。

4 プロバイダー責任法の特例

 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第3条第2項及び第3条の2第1号の場合のほか,①特定電気通信による情報であって私事性的画像記録の流通によって名誉又は私生活の平穏を侵害されたとする者(撮影対象者(当該撮影対象者が死亡している場合にあっては,その配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹)に限る。)から,当該特定電気通信役務提供者に対し私事性的画像侵害情報の送信を防止する措置を講ずるよう申出があり,②当該特定電気通信役務提供者が,当該情報の発信者に対し送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会し,③当該発信者が当該照会を受けた日から2日を経過しても当該発信者から防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったときは,特定電気通信役務提供者は,特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において,当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については,当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合には賠償の責めに任じない(第4条)。

5 支援体制の整備等(第5条)(略)

 この法律は平成26年11月27日から施行された。ただし3の規定は平成26年12月17日から,4の規定は平成26年12月27日から施行される。

☆ポケット六法「有効な改正前規定」をアップしました!

 http://www.yuhikaku.co.jp/static/yuhikaku/HOI/phf.html

 有斐閣の六法では,改正法令が公布されれば,その改正を本文に織り込むことを原則としています。

 ただ,施行日が発売日より少し先になるものについては,現に効力をもっている規定(現行規定)を読者の皆さんが参照する必要を考え,改正前の規定をご覧いただけるようにしています。

 ポケット六法については,翌年(平成27年)1月2日から平成28年3月31日までに施行される改正法令の改正前の規定を「有効な改正前規定」として,小社ウェブサイトに掲載しています(なお,判例六法,判例六法Professionalも同基準。六法全書では,翌年4月2日以降に施行される改正法令の改正前の規定が「有効な改正前規定」となります)。

  また,改正法令の施行日がさらに先になるものについては,以下の基準で本文外に注記しています。

 翌々年(平成28年)4月1日以降に施行される改正法令については,改正を織り込んだ条文の次に,改正前の規定を小さな文字で掲げ(27年版では地方自治法等),例外として施行日が平成29年4月1日以降となるものは,本文に改正を織り込まず,本文の条文の次に改正後の規定を小さな文字で掲げています。

 つまり施行日が

 ○平成27年1月2日~平成28年3月31日:有効な改正前規定(ウェブに掲載)

 ○平成28年4月1日~平成29年3月31日:本文に改正織り込み(改正前規定を本文の条文の次に小さな文字で掲げる)

 ○平成29年4月1日~:本文に改正を織り込まず(改正後規定を本文中に小さな文字で掲げる)

 となっています。

 このたびアップした「有効な改正前規定」とは,改正法令が施行されるまで少しの間効力をもつ現行規定をウェブでお見せするといったところでしょうか(改正の織込みについては,「六法の使い方・読み方」9頁以下)。