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国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成4・6・19法律第79号)の一部改正(平成27・9・30法律第76号)

1 協力の対象となる活動及びその態様の追加等

 (1)本法における国際平和協力業務の対象となる活動として,「国際連携平和安全活動」が追加された。
「国際連携平和安全活動」とは,国連総会決議,安全保障理事会決議若しくは経済社会理事会決議,国連等が行う要請又は当該活動が行われる地域の属する国の要請に基づき,紛争当事者間の武力紛争の再発の防止に関する合意の遵守の確保,紛争による混乱に伴う切迫した暴力の脅威からの住民の保護,武力紛争の終了後に行われる民主的な手段による統治組織の設立及び再建の援助その他紛争に対処して国際の平和及び安全を維持することを目的として行われる活動であって,二以上の国の連携により実施されるもののうち,次に掲げるものをいうこととされた(第3条第2号・第5号・第6号関係)。
 ①武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意があり,かつ,当該活動が行われる地域の属する国及び紛争当事者の当該活動が行われることについての同意がある場合に,いずれの紛争当事者にも偏ることなく実施される活動
 ②武力紛争が終了して紛争当事者が当該活動が行われる地域に存在しなくなった場合において,当該活動が行われる地域の属する国の当該活動が行われることについての同意がある場合に実施される活動
 ③武力紛争がいまだ発生していない場合において,当該活動が行われる地域の属する国の当該活動が行われることについての同意がある場合に,武力紛争の発生を未然に防止することを主要な目的として,特定の立場に偏ることなく実施される活動

 (2)防衛大臣は,国連国際連合の要請に応じ,国連の業務であって,国連平和維持活動に参加する自衛隊の部隊等又は外国の軍隊の部隊により実施される業務の統括に関するものに従事させるため,内閣総理大臣の同意を得て,自衛官を派遣することができることとされた(第27条関係)。

 (3)国際的な選挙監視活動について,紛争による混乱を解消する過程で行われる選挙等を含めることとし(第3条第4号関係),その隊員を選考により採用する者及び自衛隊以外の関係行政機関の職員に限ることとされた(第12条及び第13条第1項関係)。

 2 国際平和協力業務の種類の追加

 (1)国際平和協力業務の種類として次の業務を追加することとされた(第3条第5号関係)。
 ①防護を必要とする住民,被災民その他の者の生命,身体及び財産に対する危害の防止及び抑止その他特定の区域の保安のための監視,駐留,巡回,検問及び警護(いわゆる,安全確保業務)
 ②矯正行政事務に関する助言若しくは指導又は矯正行政事務の監視
 ③立法,行政(④の組織を除く)又は司法に関する事務に関する助言又は指導
 ④国の防衛に関する組織等の設立又は再建を援助するための助言若しくは指導又は教育訓練に関する業務
 ⑤国際連合平和維持活動又は国際連携平和安全活動を統括し,又は調整する組織において行う一定の業務の実施に必要な企画及び立案並びに調整又は情報の収集整理
 ⑥上記④,⑤を含む業務又はこれらの業務に類するものとして政令で定める業務を行う場合であって,国際連合平和維持活動,国際連携平和安全活動若しくは人道的な国際救援活動に従事する者又はこれらの活動を支援する者(以下「活動関係者」という。)の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ,又は生ずるおそれがある場合に,緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護(いわゆる,駆け付け警護)

 (2)上記(1)①又は⑥の業務を実施する場合にあっては,国際連合平和維持活動等が実施されること及び我が国が国際平和協力業務を実施することにつき,当該活動が行われる地域の属する国等の同意があり,かつ,その同意が当該活動及び当該業務が行われる期間を通じて安定的に維持されると認められなければならないこととされた(第6条第1項関係)。

 (3)内閣総理大臣は,自衛隊の部隊等が上記(1)①の業務又は国際連携平和安全活動のために行う業務を実施しようとする場合は,実施計画を添えて国会の承認を求めなければならないこととされた(第6条第7項関係)。

3 武器の使用

 (1)派遣先国において国際平和協力業務に従事する自衛官は,その宿営する宿営地であって当該業務に係る国際連合平和維持活動,国際連携平和安全活動又は人道的な国際救援活動に従事する外国の軍隊の部隊の要員が共に宿営するものに対する攻撃があったときは,当該宿営地に所在する者の生命又は身体を防護するための措置をとる当該要員と共同して,武器の使用をすることができることとされた(第25条第7項関係)。

 (2)上記2の(1)①に掲げる業務に従事する自衛官は,その業務を行うに際し,自己若しくは他人の生命,身体若しくは財産を防護し,又はその業務を妨害する行為を排除するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には,その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で,武器を使用することができることとされた(第26条第1項)。

 (3)上記2の(1)⑥に従事する自衛官は,その業務を行うに際し,自己又はその保護しようとする活動関係者の生命又は身体を防護するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には,その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で,武器を使用することができることとされた(第26条第2項関係)。 

4 その他の措置

 (1)国際平和協力本部長は,国際平和協力業務の実施にあたって,隊員の安全の確保に配慮しなければならないこととされた(第10条関係)。

 (2)政府は,国際連合平和維持活動等に参加するに際して,活動参加国等から,これらの活動に起因する損害についての請求権を相互に放棄することを訳することを求められた場合において必要と認めるときは,我が国の請求権を放棄することを約することができることとされた(第32条関係)。

 (3)防衛大臣等は,国際連合平和維持活動等を実施する自衛隊の部隊と共に活動が行われる地域に所在して大規模な災害に対処するアメリカ合衆国又はオーストラリアの軍隊から応急の措置に必要な物品又は役務の提供に係る要請があったときは,自衛隊に属する物品又は役務の提供を実施することができることとされた(第33条関係)。

  この改正は,平成28年3月29日までに政令で定める日から施行される。