改正情報 産業法部門

改正情報 産業法部門(2014年6月20日現在)

 ○不当景品類及び不当表示防止法(平成26・6・13法律第71号)

●金融商品取引法(平成26・5・30法律第44号)

●特許法(平成26・5・14法律第36号)

●著作権法(平成26・5・14法律第35号)

●独占禁止法(平成25・12・13法律第100号)

不当景品類及び不当表示防止法(昭和37・5・15法律第134号)の一部改正(平成26・6・13法律第71号)

1 事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置
 (1) 事業者は,自己の供給する商品等について,表示等により不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう,必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならないこととした。

 (2) 内閣総理大臣は,事業者が講ずべき措置に関して,必要な指針を定めるとともに,指針を定めようとするときは,事業所管大臣等に協議し,消費者委員会の意見を聴かなければならないこととした(第7条関係)。

2 指導及び助言・勧告及び公表
 内閣総理大臣は,事業者が講ずべき措置に関して,その適切かつ有効な実施を図るため必要があると認めるときは,必要な指導及び助言ができることとした(第8条関係)。また,事業者が正当な理由がなく講ずべき措置を講じていないと認めるときは,表示等の管理上必要な措置を講ずべき旨を勧告できることとするとともに,その勧告に従わないときは,その旨を公表できることとした(第8条の2関係)。

3 適格消費者団体への情報提供
 消費生活協力団体等は,適格消費者団体に対し,情報を提供できることとし,適格消費者団体は,当該情報を差止請求権の適切な行使以外の目的のために利用し,又は提供してはならないこととした(第10条関係)。

4 権限の委任等
 (1) 消費者庁長官は,緊急かつ重点的に不当な表示等に対処する必要があること等の事情があるため,措置命令等を効果的に行う上で必要があると認めるときは,政令で定めるところにより,報告の徴収等の権限を事業所管大臣等に委任できることとした。

 (2) 消費者庁長官に委任された権限に属する事務の一部は,政令で定めるところにより,都道府県知事が行うこととすることができることとした(第12条関係)。

5 関係者相互の連携
 内閣総理大臣,関係行政機関の長,関係地方公共団体の長等は,必要な情報交換その他相互の密接な連携の確保に努めることとした(第15条関係)。

6 その他
 その他所要の規定の整備を行うこととした。

 この改正は,平成26年12月12日までに政令で定める日から施行される。ただし,10条の改正(上記4)規定及び21条の規定(適格消費者団体の4の違反に対する罰則)は平成28年6月12日までに政令で定める日から施行される。

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金融商品取引法(昭和23・4・13法律第25号)の一部改正(平成26・5・30法律第44号)

 
1 上場企業の資金調達に係る規制の見直し

(1) 虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者に係る賠償責任について,損害賠償の請求権者に有価証券の取得者を処分した者を加えることとしたほか,現行の無過失責任を変更し,提出者が故意又は過失がなかったことを証明したときには賠償の責めに任じないこととした(第21条の2関係)。

 

(2) 発行登録書に参照書類の提出期限が記載されている場合であって,当該参照書類が当該提出期限までに提出された場合には,訂正発行登録書の提出を不要とすることとした(第23条の4関係)。

 

(3) 上場企業の株式の大量保有者は,「株券等保有割合」が5%超となった日から,5営業日以内に「大量保有報告書」を提出しなければならないこととされているが(大量保有報告制度),「自己株式」については,当該上場企業は議決権を有しないため,「大量保有報告書」を提出させる必要性は,通常の株式に比べ限定的であることから,大量保有報告書等の提出の要否の基準となる保有株券等の総数から,自己株式を除外することとした(第27条の23第4項関係)。

 

(4) 大量保有報告制度における短期大量譲渡報告の記載事項から,僅少な株券等の譲渡先に関する事項を除外することとした(第27条の25第2項関係)。

 

(5) 大量保有報告書等の提出日の前日までに新たな提出事由が生じた場合について,当該新たな提出事由に係る変更報告書を当該大量保有報告書等と同時に提出することを求める旨の規定を削除し,当該新たな提出事由が生じた日から5営業日以内の提出を求めることとした(第27条の25第3項関係)。

 

(6) 訂正報告書の公衆縦覧期間の末日を,訂正の基礎である大量保有報告書等の公衆縦覧期間の末日と同一とした(第27条の28関係)。

 
2 インターネットを通じた資金調達を取り扱う金融商品取引業者等に係る規制の整備(略部分)
3 金融商品取引業者等に対する規制の見直し(略部分)
4 事業年度規制の見直し(略部分)
5 取扱有価証券の範囲の見直し(略部分)
6 金融商品取引所の業務の追加(略部分)
7 金融指標に係る規制の枠組みの整備

(1) 特定金融指標算出者に対する指定制の導入
 ① 内閣総理大臣は,金融指標であって,その信頼性が低下することにより,我が国の資本市場に重大な影響を及ぼすおそれがあるものを「特定金融指標」として定めることとした。(第2条第40項関係)
 ② 内閣総理大臣は,特定金融指標算出業務(特定金融指標の算出及び公表を行う業務をいう)を行う者のその業務の適正な遂行を確保することが公益又は投資者保護のため必要であると認められるときは,当該者を「特定金融指標算出者」として指定することができることとした(第156条の85関係(略部分))。

 

 (2) 金融商品取引業者等による不正な算出基礎情報の提供の禁止

 金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は,自己又は第三者の利益を図る目的をもって,特定金融指標算出者に対し,正当な根拠を有しない算出基礎情報を提供する行為をしてはならないこととした(第38条関係)。

 
8 新規上場に伴う規制の見直し

 内部統制報告書に対する監査を免除する場合として,上場有価証券の発行者に該当することとなった日から3年を経過する日までの間に内部統制報告書を提出する場合を追加することとした(第193条の2第2項関係)。

 
9 無体財産の没収手続の整備(略部分)
 
 この改正は,上記改正部分については,平成27年5月29日までに政令で定める日から施行される。

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特許法(昭和34・4・13法律第121号)の一部改正(平成26・5・14法律第36号)

 1 救済措置の拡充等
(1) 手続期間の延長に係る規定の整備
 国際的な法制度に倣い,特許法等に基づく手続をする者の責めに帰することができない事由(災害等)が生じたときは,その手続期間を一定の期間に限り延長することができることとした(30条4項・43条6項・44条7項・46条5項,67条の2の2第4項・108条4項・111条3項関係)。

(2) 優先権主張に係る規定の整備
 ① 優先権主張を伴う特許出願について,その優先期間内に当該特許出願をすることができなかったことに正当な理由があるときは,一定の期間(経済産業省令で定める期間)内に限り当該優先権の主張をすることができることとした(41条1項・43条の2第1項関係)。
 ② 優先権の主張をする旨の書面について,出願と同時でなくとも一定期間(経済産業省令で定める期間)内であれば提出できるものとし(41条4項・43条1項関係),その補正についても,一定期間内に限りできることとした(17条・17条の4等関係)。

(3) 特許出願審査の請求期間の徒過に係る救済規定の整備
 特許出願審査の請求について,その請求期間の徒過に正当な理由があるときは,一定の期間内(その理由がなくなった日から2か月以内で請求期間の経過後1年以内)に限り当該請求をすることができるものとするとともに,当該特許出願について特許権の設定の登録があったときは,当該請求期間の徒過について記載した特許公報の発行後から当該請求について記載した特許公報の発行前までの間に,当該特許出願に係る発明の実施を行った第三者は,当該特許権について通常実施権を有することとした(48条の3関係)。

 2 特許異議の申立て制度の創設等

(1) 特許無効審判制度(請求について期間の制限がない)に加え,特許権の早期安定化を可能とするため,特許掲載公報の発行の日から6か月以内に限り,何人も,特許庁長官に対し,特許異議の申立てをすることができることとした(113条関係)。

(2) 特許異議の申立てについての審理は書面審理によるとする(118条。特許無効審判手続は口頭が原則で、書面審理も可能〔145条〕)とともに,審判長は,特許の取消決定(114条)をしようとするときは,特許権者及び参加人(119条)に対し意見書を提出する機会を与え,また,特許権者から特許請求の範囲等の訂正の請求があったときは,特許異議申立人に対し意見書を提出する機会を与えなければならないこととした(120条の5関係)。

(3) 特許無効審判(延長登録無効審判も同様)に係る請求人適格について,利害関係人のみがこれを有することとした(123条)。

この改正は,一部の規定を除き,平成27年5月13日までに政令で定める日から施行される。

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著作権法(昭和45・5・6法律第48号)の一部改正(平成26・5・14法律第35号)

 1 電子書籍に対応する出版権の創設
(1) 出版権の設定に関する改正
 複製権等保有者(複製権又は公衆送信権を有する者)は,その著作物について,以下の行為を引き受ける者に対して出版権を設定できることとされた(79条関係)。
 ① 文書若しくは図画として出版すること(電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録し,当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物により頒布することを含む)
 ② 当該方式により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて公衆送信を行うこと(放送又は有線放送を除き,自動公衆送信の場合にあっては送信可能化を含む)
(2) 出版権の内容
 出版権者は,設定行為で定めるところにより,その出版権の目的である著作物について,以下に掲げる権利の全部又は一部を専有することと規定された(80条関係)。
 ① 頒布の目的をもって,原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書若しくは図画として複製する権利(原作のまま電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録された電磁的記録として複製する権利を含む)
 ② 原作のまま電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて公衆送信を行う権利
(3) 出版の義務
 (2)②の公衆送信を行う権利に係る出版権者は,以下の義務を負うこととされた(81条関係)。
 ① 原稿等の引渡し又は提供を受けた日から6月以内にその出版権の目的である著作物について公衆送信を行う義務
 ② 出版権の目的である著作物について慣行に従い継続して公衆送信行為を行う義務
(4)義務に違反した場合
 出版権者が上記の義務に違反したときは,複製権等保有者は,出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる((3)②の義務については,複製権等保有者が,3月以上の期間を定めて催告したにもかかわらず,履行されなかった場合)とされた(84条関係)。

 2 保護を受ける実演(7条)の追加
 「視覚的実演に関する北京条約の締約国の国民又は当該締約国に常居所を有する者である実演家による実演」が著作権法上の保護を受ける実演に追加された(7条8号関係)。

 この改正は,平成27年1月1日から施行される。ただし,2に関する規定は視聴覚的実演に関する北京条約が日本国において効力を生ずる日から施行される。

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独占禁止法(昭和22・4・14法律第54号)の一部改正(平成25・12・13法律第100号)

(1)審判制度の廃止(旧52条~68条,70条の2~70条の4,70条の6,70条の7,70条の15関係)

 公正取引委員会が行う審判制度を廃止した。

(2)排除措置命令等に係る意見聴取等,処分前手続規定の整備(新49条~64条関係)

 ①排除措置命令等の当事者に対する意見聴取(新49条,50条関係)
    公正取引委員会は,排除措置命令又は課徴金納付命令をしようとするときは,当該命令の名宛人となるべき者(以下,「当事者」という)について,意見聴取を行わなければならないこととし,公正取引員会は,意見聴取を行うべき期日までに,予定される排除措置命令の内容(納付命令の場合は,納付を命じようとする課徴金の額),公正取引委員会の認定した事実及び法令の適用納付命令の場合は,課徴金の計算の基礎及び課徴金に係る違反行為),意見聴取の期日及び場所,意見聴取に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地等を書面により通知しなければならないこととした。

 ②公正取引員会が認定した事実を立証する証拠について閲覧・謄写を求めることができる規定(新52条関係)
 当事者は,意見聴取手続の終結までの間,公正取引委員会が認定した事実(納付命令の場合は,課徴金の計算の基礎及び課徴金に係る違反行為)を立証する証拠について閲覧又は謄写(謄写の対象については,公正取引員会規則で定めるものに限られる)を求めることができることとした。

 ③指定職員制度(新53条関係)
 意見聴取は,公正取引員会が事件ごとに指定する職員(以下,「指定職員」という)が主宰するものとし,公正取引員会は当該事件の審査官の職務や調査等を行ったことのあるものを「指定職員」とすることができないことした。

 ④意見聴取手続における審査官等の説明義務規定(新54条1項関係)
 指定職員は,当該意見聴取に係る事件について審査官等に予定される排除措置命令の内容等(納付命令の場合は,納付を命じようとする課徴金の額等)を意見聴取の期日に出頭した当事者に対し説明させなければならないこととした。

 ⑤意見聴取手続において質問や口頭による意見申述ができる規定(新54条2項関係)
 当事者は意見聴取の日に出頭して意見を述べ,証拠を提出し,指定職員の許可を得て審査官等に質問をすることができることとした。

(3)排除措置命令に係る訴訟手続
 審判制度の廃止に伴い,排除措置命令等に係る抗告訴訟等は,東京地方裁判所の専属管轄とすることとした。また,審理裁判は,三人の裁判官の合議体で行うこととし,五人の裁判官の合議体で行うこともできることとした(新85条・86条関係)。
 そのほか,公正取引委員会の認定した事実は,これを立証する実質的証拠がある場合に裁判所を拘束する第80条,新証拠の提出制限を定めていた第81条など証拠に関する規定も削除された。

 この改正は公布の日(平成25・12・13)より1年6月を超えない範囲内において,政令で定める日から施行される。

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