改正情報 刑事法部門

改正情報 刑事法部門(2013年7月8日現在)

*麻薬及び向精神薬取締法(平成25・5・17法律第17号)

○犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成25・6・12法律第33号)

●刑法(平成25・6・19法律第49号)

○ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成25・7・3法律第73号)

ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12・5・24法律第81号)の一部改正(平成25・7・3法律第73号)

 最近におけるストーカー行為等の実情に鑑み,規制の拡大・強化やつきまとい等を受けた者の関与を強化するなどの改正を行うもの。

 1 電子メールを送信する行為の規制
 拒まれたにもかかわらず,連続して電子メールを送信する行為を「つきまとい等」に追加し,規制の対象とした(第2条第1項第5号の改正)。
 2 つきまとい等を受けた者の関与の強化
 (1)  警察本部長等(第4条第1項参照)は,警告をしたときは,速やかに,当該警告の内容及び日時を当該警告を求める旨の申出をした者に通知しなければならないこととし,警告をしなかったときは,速やかに,その旨及びその理由を当該警告を求める旨の申出をした者に書面により通知しなければならないこととした(第4条第3項及び第4項の改正)。
 (2)  警告を求める旨の申出をした者の申出によっても,公安委員会は禁止命令等をすることができることとした(第5条第1項の改正)。
 (3)  公安委員会は,(2)の申出を受けた場合において,禁止命令等をしたときは,速やかに,当該禁止命令等の内容及び日時を当該申出をした者に通知しなければならないこととし,禁止命令等をしなかったときは,速やかに,その旨及びその理由を当該申出をした者に書面により通知しなければならないこととした(第5条第4項及び第5項の追加)。
 3 国及び地方公共団体の支援等(第8条の改正。ポケット六法略部分)
 4 禁止命令等をすることができる公安委員会等の拡大
 禁止命令等をすることができる公安委員会及び警告等をすることができる警察本部長等について,被害者の居所の所在地,加害者の住所等の所在地,つきまとい等が行われた地を管轄する公安委員会及び警察本部長等にも拡大した(第10条の改正。ポケット六法略部分)。

 この改正は,公布の日から起算して3月を経過した日(平成25年10月3日)(については公布の日から起算して20日を経過した日(平成25年7月23日))から施行される。

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刑法(明治40・4・24法律第45号)の一部改正(平成25・6・19法律第49号)

 改正の概要
 近年,犯罪者の再犯防止が重要な課題となっていることに鑑み,犯罪者が再び犯罪をすることを防ぐため,前に禁錮以上の実刑に処せられたことがない者等について,刑の一部の執行を猶予することを可能とする制度を導入するもの。この刑法の改正とともに,薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関し,その言渡しをすることができる者の範囲及び猶予の期間中の保護観察等について刑法の特則を定める「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」(法律第50号)が制定され,併せて,保護観察等の充実強化を図るため,地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を行うことを保護観察の特別遵守事項に加えること,規制薬物等に対する依存がある者に対する保護観察の特則を定めるなどの更生保護法(平成19法律第88号)の改正も行われた。
 1 刑の一部の執行猶予
 (1) 次に掲げる者が3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合に,犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して,再び犯罪をすることを防ぐために必要であり,かつ,相当であると認められるときは,1年以上5年以下の期間,その刑の一部の執行を猶予することができることとした(第27条の2第1項)。
 ① 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
 ② 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その刑の全部の執行を猶予された者
 ③ 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
 (2) 刑の一部の執行猶予が言い渡された場合においては,そのうち執行が猶予されなかった部分の期間を執行し,当該部分の期間の執行を終わった日等から,その猶予の期間を起算することとした(第27条の2第2項)。
 2 保護観察
 刑の一部の執行猶予が言い渡された場合においては,猶予の期間中保護観察に付することができることとした(第27条の3第1項)。
 3 刑の一部の執行猶予の取消し
 (1) 次に掲げる場合においては,刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならないこととした。ただし,③の場合において,猶予の言渡しを受けた者が1の(1)の③に掲げる者であるときは,この限りでないこととした(第27条の4)。
 ① 猶予の言渡し後に更に罪を犯し,禁錮以上の刑に処せられたとき。
 ② 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられたとき。
 ③ 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ,その刑の全部について執行猶予の言渡しがないことが発覚したとき。
 (2) 次に掲げる場合においては,刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消すことができることとした(第27条の5)。
 ① 猶予の言渡し後に更に罪を犯し,罰金に処せられたとき。
 ② 2により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
 4 刑の一部の執行猶予の猶予期間経過の効果
 刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは,その刑を執行が猶予されなかった期間を刑期とする懲役又は禁錮の刑に減軽するとともに,この場合においては,当該部分の期間の執行を終わった日等において,刑の執行を受け終わったものとすることとした(第27条の7)。

 この改正は,公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。

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犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成12・5・19法律第75号)の一部改正(平成25・6・12法律第33号)

 改正の概要
 刑事被告事件の手続への参加に伴う被害者参加人の経済的負担を軽減するための改正。公判期日又は公判準備に出席した被害者参加人に対し国が被害者参加旅費等を支給する制度を創設するとともに(新第5条),これに関する事務を日本司法支援センターに委任することとするほか(新第8条第1項),裁判所に対する被害者参加弁護士の選定の請求に係る資力要件を緩和する(新第11条,現第5条第1項)。

 1 被害者参加旅費等の支給制度の創設(新第5条)
 被害者参加人(刑訴第316条の33第3項に規定する被害者参加人)が刑事訴訟法第316条の34第1項(同条第5項において準用する場合を含む)の規定により公判期日又は公判準備に出席した場合には,法務大臣は,当該被害者参加人に対し,旅費,日当及び宿泊料(以下「被害者参加旅費等」という)を支給することとし(第1項),その額については,政令で定めることとした(第2項)。

 2 被害者参加旅費等の請求手続(新第6条)
  (1) 被害者参加旅費等の支給を受けようとする被害者参加人は,所定の請求書に法務省令で定める被害者参加旅費等の算定に必要な資料を添えて,これを,裁判所を経由して,法務大臣に提出しなければならないこととした(第1項)。
  (2) 裁判所は,第1項により請求書及び資料を受け取ったときは,当該被害者参加人が刑訴法第316条の34第1項の規定により公判期日又は公判準備に出席したことを証明する書面を添えて,これらを法務大臣に送付しなければならないこととした(第2項)。

 3 日本司法支援センターへの被害者参加旅費等の支給に係る法務大臣の権限に係る事務の委任(新第8条)
 被害者参加旅費等の支給(新第5条)及び請求の受理等の法務大臣の権限に係る事務(新第6条第1項)を,日本司法支援センター(総合法律支援法第13条に規定する日本司法支援センター)に行わせることとした(第1項)。

 4 被害者参加弁護士の選定の請求に係る要件の緩和(新第11条,現第5条)
 被害者参加弁護士の選定の請求における被害者参加人の資力要件について,被害者参加人の資力を算定する際に被害者参加人の資力からその控除する額(手続への参加を許された刑事被告事件に係る犯罪行為により生じた負傷又は疾病の療養に要する費用その他の当該犯罪行為を原因として請求の日から支出することとなると認められる費用の額)を3月以内から6月以内とし,基準額(一般に被害者参加弁護士(被害者参加人の委託を受けて刑訴法第316条の34から第316条の38までに規定する行為を行う弁護士)の報酬及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額)において勘案する標準的な必要生活費を3月間から6月間として,被害者参加弁護士の選定の請求に係る被害者参加人の資力要件を緩和した。
 (以上,第1条による改正)

 この改正は,平成25年12月11日までに政令で定める日から施行される。

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麻薬及び向精神薬取締法(昭和28・3・17法律第14号)の一部改正(平成25・5・17法律第17号)

 

1 麻薬取締役官及び麻薬取締員の指定薬物に係る職務の追加

 指定薬物(薬事法第2条第14項)の製造,輸入,販売等の現状に鑑み,これに適切に対処するため,第54条第5項に「薬事法に違反する罪」を加え,麻薬取締官及び麻薬取締員(麻薬第54条第1項)に,以下の罪について司法警察員としての職務を行わせることとした。
 ・指定薬物の製造等の禁止(薬事法第76条の4)違反(同法第83条の9)
 ・指定薬物の製造等の禁止に違反して貯蔵,陳列,製造等された指定薬物の廃棄等の拒否等(同法第84条第19号)
 ・指定薬物の製造等の禁止(薬事法第76条の4)違反(同法第83条の9に該当する者を除く)(同法第84条第20号)
 ・同法第76条の5に規定される主として指定薬物を医療等の用途に使用する者以外の者に対する指定薬物の広告(同法第85条第7号)
 ・指定薬物である疑いがある物品の検査を受け,その結果の通知を受けるまでの間における当該物品及びこれと同一の物品の製造等の禁止違反(同法第86条第1項第19号)
 ・指定薬物又はその疑いがある物品の製造等をした者に対する必要な報告の拒否等(同法第87条第9号)
 ・指定薬物である疑いがある物品の検査等の拒否(同法第87条第11号)
 ・法人の代表者又は法人等の上記の規定の違反行為(同法第90条)
 (第1条による改正)

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 なお本改正において,条文中の表記が「覚せい剤」から「覚醒剤」に改められました。これは,法令における漢字使用は「常用漢字表」に従うこととなっているところ,平成22年の「常用漢字表」(平成22年内閣告示第2号)で,新たに「醒」が追加されたことによるものです。もっとも法令中の表記は,常用漢字表が改正されても,ただちに改められなければならないものではありません。それが表記という形式的なものであること,改正によるコストを低くすること等から,別に条文を改正する際に当該条文の表記を改めるという運用がなされているのです。したがって,内容上の改正の機会がなければ表記の改正も行われないので,今回の改正で第54条の「覚せい剤」は「覚醒剤」と改められますが,第3条などにある「覚せい剤」はそのままです。

2  薬事法の一部改正(第2条による改正;略)

 この改正は,平成25年11月16日までに政令で定める日から施行される。

 

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