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公職選挙法(昭和25・4・15法律第100号)の一部改正(平成25・4・26法律第10号)

 

 改正の趣旨

 近年におけるインターネット等の普及に鑑み,インターネット等を利用する方法による選挙運動を解禁する以下の改正がなされました。選挙運動で利用できる文書図画として,「ウェブサイト等」を全面解禁する(第142条の3)一方,「電子メール」の利用については,送信できる者を公職の候補者及び政党等に限定しています(第142条の4第1項)。この改正は,平成25年5月26日から施行され,施行日以後初めて公示される国政選挙の公示日以後に公示又は告示される選挙から適用されます。
注 (略)は,ポケット六法省略部分。

 Ⅰ インターネット等を利用する方法による選挙運動用文書図画の頒布の解禁等
  1 ウェブサイト等を利用する方法による選挙運動用文書図画の頒布の解禁等(第142条の3の追加)
 何人も,ウェブサイト等を利用する方法(インターネット等を利用する方法のうち電子メールを利用する方法を除いたもの)により,選挙運動用文書図画を頒布することができることとした。
  2 電子メールを利用する方法による選挙運動用文書図画の頒布の解禁(第142条の4の追加)
   (1 解禁主体(第1項各号)  選挙運動用電子メールは,公職の候補者及び政党等(候補者届出政党,衆議院名簿届出政党等,参議院名簿届出政党等及び確認団体)に限り送信することができることとした(なお,第三者の選挙運動用電子メールについては,従前どおり禁止)。
   (2 送信先の限定  選挙運動用電子メールは,次のイ又はロに掲げる者の,それぞれイ又はロに定める電子メールアドレスに対してのみ,送信をすることができることとする(第2項)。ただし,送信拒否の通知を受けたときは,以後,送信をしてはならないこととした(第5項)。
    イ あらかじめ,選挙運動用電子メールの送信を求める旨又は送信に同意する旨を選挙運動用電子メール送信者に通知した者(電子メールアドレスを選挙運動用電子メール送信者に対し自ら通知した者に限る。) 当該電子メールアドレス(第1号)
    ロ 政治活動用電子メールを継続的に受信している者(電子メールアドレスを選挙運動用電子メール送信者に対し自ら通知した者に限り,かつ,通知後,全ての電子メールアドレスへの送信拒否をした者を除く。)であって,あらかじめ,選挙運動用電子メール送信者から選挙運動用電子メールを送信する旨の通知を受けたもののうち,当該通知に対し全ての電子メールアドレスへの送信拒否をしなかったもの 送信拒否の通知をした電子メールアドレス以外の電子メールアドレス(第2号)
   (3 記録の保存義務(第4項)  選挙運動用電子メール送信者は,次のイ又はロに掲げる場合に応じ,それぞれイ又はロに定める事実を証する記録を保存しなければならないこととした。
    イ (2)のイに掲げる者に対し送信をする場合  ①受信者が電子メールアドレスを選挙運動用メール送信者に対し自ら通知したこと。②選挙運動用電子メールの送信の求め又は送信への同意があったこと(第1号)。
    ロ (2)のロに掲げる者に対し送信をする場合  ①受信者が電子メールアドレスを選挙運動用メール送信者に対し自ら通知したこと。②継続的に政治活動用電子メールの送信をしていること。③選挙運動用電子メールの送信をする旨の通知をしたこと(第2号)。
  3 選挙運動用有料インターネット広告の禁止等(第142条の6の追加)
   (1 選挙運動用有料インターネット広告の禁止
    イ 何人も,公職の候補者又は政党等の氏名,名称又はこれらの類推事項を表示した選挙運動用有料インターネット広告を掲載させることができないこととした(第1項)。
    ロ 何人も,選挙運動期間中,イの禁止を免れる行為として,公職の候補者又は政党等の氏名,名称又はこれらの類推事項を表示した有料インターネット広告を掲載させることができないこととした(第2項)。
    ハ 何人も,選挙運動期間中,公職の候補者又は政党等の氏名,名称又はこれらの類推事項が表示されていない広告であって,選挙運動用ウェブサイト等に直接リンクした有料インターネット広告(バナー広告等)を掲載させることができないこととした(第3項)。
   (2) 政党等に関する有料インターネット広告の特例  (1)のロ及びハにかかわらず,政党等(候補者届出政党,衆議院名簿届出政党等,参議院名簿届出政党等及び確認団体)は,選挙運動期間中,当該政党等の選挙運動用ウェブサイト等に直接リンクした有料インターネット広告(バナー広告等)を掲載させることができることとした(第4項)。
  4 インターネット等を利用した選挙期日後の挨拶行為の解禁(第178条第2号)
  5 屋内の演説会場内における映写の解禁等(第143条第1項第4号の2及び第9項)
屋内の演説会場内における映写を解禁するとともに,屋内の演説会場内におけるポスター,立札及び看板の類についての規格制限(縦273センチメートル,横73センチメートル)を撤廃することとした。
  6 その他
   (1) インターネット等を利用する方法による選挙運動に要する支出(第187条第1項)(略)
   (2) 挨拶目的のインターネット有料広告の禁止(第152条)  改正前の「挨拶を目的とする有料広告の禁止」に,インターネット等を利用する方法による挨拶目的の有料広告の禁止を加えることとした。
   (3 適用関係(271条の6)(略)

 Ⅱ 誹謗中傷,なりすまし対策
  1 電子メールアドレスの表示義務
   (1 ウェブサイト等を利用する選挙運動用文書図画の表示義務(第142条の3第3項)  ウェブサイト等を利用する方法により選挙運動用文書図画を頒布する者は,電子メールアドレスその他のインターネット等を利用する方法によりその者に連絡をする際に必要となる情報(「電子メールアドレス等」)が正しく表示されるようにしなければならないこととした。
   (2 電子メールを利用する選挙運動用文書図画の表示義務(第142条の4第6項)  選挙運動用電子メール送信者は,選挙運動用電子メールの送信に当たり,以下の事項を正しく表示しなければならないこととした。
    イ 選挙運動用電子メールである旨
    ロ 選挙運動用電子メール送信者の氏名又は名称
    ハ 送信拒否の通知を行うことができる旨
    ニ 送信拒否の通知を行う際に必要となる電子メールアドレスその他の通知先
   (3 インターネット等を利用する方法により落選運動(特定の候補者を応援したり・批判したりするなどの活動)用文書図画を頒布する者の表示義務(第142条の5の追加)
    イ 選挙期日の公示又は告示の日から選挙当日までの間,ウェブサイト等を利用する方法により落選運動用文書図画を頒布する者は,その者の電子メールアドレス等が正しく表示されるようにしなければならないこととした(第1項)。
    ロ 選挙期日の公示又は告示の日から選挙当日までの間,電子メールを利用する方法により落選運動用文書図画を頒布する者は,当該文書図画に,その者の電子メールアドレス及び氏名又は名称を正しく表示しなければならないこととした(第2項)。
  2 氏名等の虚偽表示(第235条の5)
 改正前の氏名等の虚偽表示罪に,当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもって真実に反する氏名,名称又は身分の表示をして「インターネット等を利用する方法」による通信をした者を追加することとした。
  3 選挙に関するインターネット等の適正な利用(第142条の7の追加)
 選挙に関しインターネット等を利用する者は,候補者に対して悪質な誹謗中傷をする等表現の自由を濫用して選挙の公正を害することがないよう,インターネット等の適正な利用に努めなければならないこととした。

 Ⅲ 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)の一部改正(略)

 この改正は,平成25年5月26日から施行され,施行日以後初めて公示される国政選挙の公示日以後に公示又は告示される選挙から適用される。
 公職の候補者及び政党その他の政治団体以外の者が行う電子メール(第142条の3第1項に規定する電子メール)を利用する方法による選挙運動については,次回の国政選挙後,その実施状況の検討を踏まえ,次々回の国政選挙における解禁について適切な措置が講ぜられるものとする。