金融商品取引法(昭和23・4・13法律第25号)の一部を改正する法律(平成24・9・12法律第86号)
改正の趣旨
資本市場を取り巻く環境の変化を踏まえ,我が国市場の国際競争力の強化並びに金融商品の取引の公正性及び透明性の確保を図るため,①一定の商品を金融商品として他の多様な金融商品とともに取り扱うことのできる「総合的な取引所」の実現に向けた制度の整備を行うとともに,②一定の店頭デリバティブ取引についての電子情報処理組織の利用の義務付け,店頭デリバティブ取引等の公正性・透明性の向上を図り,③企業の組織再編に係るインサイダー取引規制の見直し,課徴金制度の見直し等の措置を講じ,適切な不公正取引規制の確保を図る。なお,施行日は,①(第2条・第5条の改正)公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日,②(第3条の改正)公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日,③(第1条の改正)公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。
注 (略)は,ポケット六法省略部分。
Ⅰ 金融商品取引法の一部改正(第1条)
1 インサイダー取引規制の見直し
(1) 合併又は会社分割による上場会社等の特定有価証券等の承継について,事業譲渡と同様にインサイダー取引規制の対象とすることとした(第166条第1項柱書の改正)。
(2) 企業再編に係る次の行為については,インサイダー取引規制の適用除外とする。①合併等による特定有価証券等の承継であって当該特定有価証券等の承継資産に占める割合が特に低く違反行為の危険性が低い場合,及び,②合併等の対価として自己株式を交付する場合等(第166条第6項第8号から第11号まで及び第167条第5項第8号から第11号までの追加)。
2 課徴金制度の見直し(略)
Ⅱ 金融商品取引法の一部改正(第2条)
1 金融商品等の定義の整備
(1) デリバティブ取引規制について,商品デリバティブについては商品先物取引法で規制され,金融商品取引法による金融・証券デリバティブ取引と異なる規制のもとにあるところ,金商法の「金融商品」に,商品先物取引法2条1項に規定する「商品」のうち,一定のもの(法令の規定に基づく当該商品の価格の安定に関する措置の有無その他当該商品の価格形成及び需給の状況を勘案し,当該商品に係る市場デリバティブ取引により当該商品の適切な価格形成が阻害されるおそれがなく,かつ,取引所金融商品市場において当該商品に係る市場デリバティブ取引が行われることが国民経済上有益であるものとして政令で定めるもの)を追加し,商品等に係る市場デリバティブ取引(「商品関連市場デリバティブ取引」)を金融商品市場において行えることとした(第2条第21項及び第24項の改正)。
(2) 商品関連市場デリバティブ取引のみを行うものは,「金融商品市場」の定義に含まないこととした(商品のみを取り扱う取引所は,商品先物取引法に基づき農林水産大臣・経済産業大臣が所轄)(第2条第14項の改正)。
(3) 「店頭デリバティブ取引」及び「外国市場デリバティブ取引」の定義に,商品等に係る取引を含まないこととした(第2条第22項及び第23項の改正)。
2 商品関連市場デリバティブ取引に係る業規制の整備(略)
3 分別管理制度に関する規定の整備
(1) 商品関連市場デリバティブ取引やその付随的な取引に関して顧客から預託を受けた財産及び顧客の計算に属する財産について分別管理義務を規定することとした(第43条の2の2の追加)。
(2)(略)
4 投資者保護基金に関する規定の整備(略)
5 金融商品取引所に関する規定の整備(略)
6 商品関連市場デリバティブ取引に係る不公正取引に関する規定の整備
(1) 商品関連市場デリバティブ取引について金融商品取引法上の市場デリバティブ取引に係る不公正取引に関する規制が及ぶことに伴い,相場操縦行為の禁止規定の整備等を行うこととした(第159条等の改正)。
(2) 内閣総理大臣は,商品取引参加者の行う商品関連市場デリバティブ取引について,公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認められる事項を内閣府令で定めることができることとした(第161条第3項の追加)。
7 農林水産大臣及び経済産業大臣との協議等に関する規定の整備(略)
Ⅲ 金融商品取引法の一部改正(第3条)
1 店頭デリバティブ取引における電子情報処理組織の使用義務付け(略)
2 電子店頭デリバティブ取引等業務の許可に関する規定の整備(略)
Ⅳ 商品先物取引法の一部改正(第4条)(略)
Ⅴ 金融商品の販売等に関する法律の一部改正(第5条)
金融商品販売業者等が商品関連市場デリバティブ取引を扱う際の顧客に対する説明義務に関し,重要事項について説明を要しない旨の顧客の意思の表明があった場合についても,当該説明義務を適用除外としないこととした(第3条第7項の改正)。