金融商品取引法(昭和23・4・13法律第25号)の一部改正(平成25・6・19法律第45号)
改正の概要
金融システムの信頼性及び安定性を高めるため,金融商品取引法その他の関係法律を改正し,情報伝達行為に対する規制の導入等のインサイダー取引規制の強化,投資一任業者等による運用報告書等の虚偽記載等に係る制裁の強化,投資法人の資本政策手段の多様化,大口信用供与等規制の強化,金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置の整備等の措置を講ずるもの。
注 (略)は,ポケット六法非収録。
Ⅰ 金融商品取引法の一部改正(第1条関係)
1 インサイダー取引規制に係る見直し
⑴ 情報伝達・取引推奨行為に対する規制の導入
① 上場会社等(第163条1項参照)の会社関係者(第166条1項参照)であって当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を知ったものは,他人に対し,当該重要事実の公表前に取引をさせることにより利益を得させ,又は損失の発生を回避させる目的をもって,当該重要事実を伝達し,又は取引を勧めてはならないこととした。また,公開買付者等関係者(第167条第1項参照)であって公開買付け等事実を知ったものについても,同様の規制を設けることとした(第167条の2)。
② ①の違反により情報受領者等が公表前に取引をした場合,違反者に対して課徴金を課すこととした(第175条の2)。また,違反者を5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し,又はこれを併科することとするとともに(第197条の2第14号・第15号),法人に対して5億円以下の罰金刑を科することとした(第207条)。
⑵ 「他人の計算」による違反行為に対する課徴金の引上げ(第173条~第175条)(略)
⑶ 投資法人の発行する投資証券等の取引へのインサイダー取引規制の導入
投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律第2条第12項参照)の発行する投資証券等の取引をインサイダー取引規制の対象とすることとし,会社関係者の範囲に資産運用会社及びその親会社等の関係者を加えるとともに,投資法人の特性を考慮した重要事実等を規定することとするほか,投資法人の役員等による投資証券等の取引の報告等に関する所要の規定を整備することとした(第163条・第166条)。
⑷ 近年の金融・企業実務を踏まえた規制の見直し
① 重要事実を知っている者同士の取引の適用除外 会社関係者又は会社関係者からの情報受領者の間のみならず,当該情報受領者と重要事実を知っている者との間における市場外の取引については,インサイダー取引規制を適用しないこととした(第166条第6項第7号)。
② 公開買付者等関係者の範囲の拡大 公開買付け等の対象株券等の発行者及びその役職員について,公開買付者等関係者の対象とすることとした(第167条第1項第5号)。
③ 公開買付け情報の伝達を受けた者の適用除外 公開買付け等の実施に関する事実の伝達を受けた者等について,自ら公開買付けを行う際に公開買付届出書等に当該伝達を受けた事実の記載等をした場合又は当該伝達を受けた日等から6月が経過している場合には,インサイダー取引規制を適用しないこととした(第167条第5項第8号・第9号)。
⑸ その他の見直し
① 課徴金に関する調査において物件の提出を命じることができることとするとともに,当該調査等に関し公務所等に照会して報告を求めることができることとした(第26条第2項・第27条の22第3項・第27条の22の2第2項・第27条の30第3項・第27条の35第2項・第177条・第187条2項)。
② 内閣総理大臣は,公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは,金融商品取引法令に違反する行為を行った者の氏名等を公表することができることとした(第192条の2)。
2 資産運用規制の見直し(略)
3 その他
⑴ 金融商品取引法第27条の2第1項第4号の規定により公開買付けによることが求められる場合の要件の一つとして,政令で定める一定割合を超える買付け等を「特定売買等(第3号参照)による株券等の買付け等又は取引所金融商品市場外における株券等の買付け等」により行うことが規定されているところ,当該要件における買付け等から同項ただし書に規定する株券等の買付け等を除くこととした(第27条の2)。
⑵ 株券等保有割合が100分の5以下であることが記載された変更報告書を既に提出している場合には,その後の変更報告書の提出を不要とすることとした(第27条の25)。
Ⅰは,平成26年6月18日までに政令で定める日((1)②第207条の改正規定は,平成25年7月9日)から施行される。
Ⅱ 金融商品取引法の一部改正(第2条関係)
1 投資信託に関する規制の見直し
投資信託受益証券等について一定期間継続して募集又は売出しが行われている場合には,届出書に代えて簡易な事項を記載した書面を提出することで足りるとする特例を設けることとした。
これに併せて,訂正届出書の提出に関する特例も設けることとした(第5条第10項~第12項・第7条第3項~第5項関係)。
2 その他
投資法人の発行する新投資口予約権証券を有価証券とすることとするほか,投資法人による自己の投資口の取得等に関する所要の規定を整備することとした(第2条第1項・第24条の6・第27条の22の2・第162条の2・第166条・第167条)。
Ⅱは,平成26年12月18日までに政令で定める日から施行される。
Ⅲ 社債、株式等の振替に関する法律の一部改正(第18条関係)(略)