行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15・5・30法律第58号)の一部改正(平成28・5・27法律第51号)
1 目的に係る改正
この法律において,行政機関における個人情報の取扱いに関する基本的事項に加え,行政機関等において個人情報を匿名加工等するなどの措置を講じて,特定の個人を識別できないようにした情報(行政機関非識別加工情報)の提供に関する事項についても定めることとした。
それらにより,行政の適正かつ円滑な運営を図り,並びに個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ,個人の権利利益を保護することが目的とされた(第1条関係)。
2 「個人情報」等の定義に係る改正
(1)個人情報の定義
生存する個人に関する情報であって,「個人識別符号」が含まれるものも「個人情報」として定義されることとなった(第2条第2項関係)。
(2)個人識別符号の定義
次のいずれかに該当する文字,番号,記号その他の符号のうち,政令で定めるものをいう(第2条第3項関係)。
①特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字,番号,記号その他の符号であって,当該特定の個人を識別することができるもの
②個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ,又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され,若しくは電磁的方式により記録された文字,番号,記号その他の符号であって,その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ,又は記載され,若しくは記録されることにより,特定の利用者若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの
(3)要配慮個人情報の定義
本人の人種,信条,社会的身分,病歴,犯罪の経歴,犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別,偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報として「要配慮個人情報」が定められた(第2条第4項関係)。
(4)非識別加工情報の定義
第2条第2項各号に関する個人情報の区分に応じて所定の措置を講じて特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって,当該個人情報を復元することができないようにしたものをいうこととされた(第2条第8項関係)。
(5)行政機関非識別加工情報の定義
この法律の規定により個人情報ファイル簿に掲載されること等に該当する個人情報ファイルを構成する保有個人情報の全部又は一部を加工して得られる非識別加工情報をいうものとされた(第2条第9項関係)。
(6)行政機関非識別加工情報ファイルの定義
行政機関非識別加工情報を含む情報の集合物であって,特定の行政機関非識別加工情報につき電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの等をいうこととされた(第2条第10項関係)。
(7)行政機関非識別加工情報取扱事業者の定義
国の機関等を除き,行政機関非識別加工情報ファイルを事業の用に供している者をいうこととされた(第2条第11項関係)。
3 行政機関非識別加工情報の提供
(1)行政機関の長は,所定の定めに従い,行政機関非識別加工情報を作成し,及び提供することができる等とすることとされた(第44条の2関係)。
(2)行政機関の長は,当該行政機関が保有している個人情報ファイルが「行政機関非識別加工情報」〔→2(5)〕に該当すると認めるときは,当該個人情報ファイル簿に「行政機関非識別加工情報をその用に供して行う事業に関する提案の募集をする」個人情報ファイルである旨等を記載しなければならないものとすることとされた(第44条の3関係)。
(3)個人情報を加工して作成する行政機関非識別加工情報をその事業の用に供する行政機関非識別加工情報取扱事業者になろうとする者は,行政機関の長に対し,当該事業に関する提案をすることができ,提案に係る個人情報ファイルの名称等を記載した書面を提出して提案をすることができるものとすることとされた。また,行政機関の長は,定期的に,その提案を募集するものとすることとされた(第44条の4及び第44条の5関係)。
(4)行政機関の長は,上記(3)の提案があったときは,当該提案をした者が欠格事由に該当しないこと等の基準に適合するかどうか審査し,当該基準に適合すると認めるときは,当該提案をした者に対し,行政機関の長との間で行政機関非識別加工情報の利用に関する契約を締結することができる旨等を通知するものとされた(第44条の6及び第44条の7関係)。
(5)行政機関の長は,行政機関非識別加工情報を作成するときは,特定の個人を識別すること及びその作成に用いる保有個人情報を復元することができないようにするために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に従い,当該保有個人情報を加工しなければならないこととされた(第44条の10関係)。
(6)行政機関非識別加工情報の利用に関する契約を締結する者は,政令で定めるところにより,手数料を納めなければならないこととされた(第44条の13関係)
(7)行政機関の長は,行政機関非識別加工情報等の適切な管理のために必要な措置を講じなければならないものとされた(第44条の15関係)。
(8)行政機関非識別加工情報等の取扱いに従事する行政機関の職員等は,その業務に関して知り得た行政機関非識別加工情報等の内容をみだりに他人に知らせ,又は不当な目的に利用してはならないものとされた(第44条の16関係)。
4 雑則
行政機関の長は,3(3)の提案等をしようとする者が容易かつ的確に提案をすることができるよう,提案に資する情報の提供等の措置を講じることとされた(第51条の2)。
また,個人情報保護委員会は,行政機関非識別加工情報の取扱いに関する事務の実施状況について資料の提出及び説明を求め,行政機関の長に対し,必要な指導及び助言並びに勧告等ができるものとされた(第51条の5~第51条の7関係)。
5 罰則
行政機関から行政機関非識別加工情報等の取扱いの受託業務に従事している者等が,正当な理由がないのに個人の秘密に属する事項が記録された個人情報ファイルを提供したときは,二年以下の懲役等に処するものとすることとされた(第53条関係)。
この改正は平成29年11月26日までに政令で定められる日から施行される。