改正情報 民事法部門

消費者契約法(平成12・5・12法律第61号)の一部を改正する法律(平成28・6・3法律第61号)  

1 過量な内容の消費者契約の取消し

 消費者は,事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,物品,権利,役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合等において,その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは,これを取り消すことができることとされた(第4条第4項関係)。

 2 重要事項の範囲

 事業者の不実告知があった場合において,消費者がその意思表示を取り消すことができる対象である重要事項として,物品,権利,役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命,身体,財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情を追加することとされた(第4条第5項関係)。

 3 取消権を行使した消費者の返還義務

 民法第121条の2第1項(第189回国会に内閣より提出された「民法の一部を改正する法律案」により追加)の規定にかかわらず,消費者契約に基づく債務の履行として給付を受けた消費者は,消費者契約法の規定により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消した場合において,給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは,当該消費者契約によって現に利益を受けている限度において,返還の義務を負うこととされた(第6条の2関係)。

 4 取消権行使期間の伸長

 消費者契約法の規定による消費者の取消権については,追認をすることができる時から6箇月間行わないときは時効によって消滅するとされているところ,当該期間を1年間に伸長することとされた(第7条第1項関係)。

 5 事業者の損害賠償の責任を免除する条項

 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項を無効とする規定等について,「民法の規定による」という文言を削除することとされた(第8条第1項第3号及び第4号関係)。

 6 消費者の解除権を放棄させる条項の無効

 次に掲げる消費者契約の条項は,無効とされた(第8条の2関係)。

 (一) 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項

 (二) 消費者契約が有償契約である場合において,当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があること等により生じた消費者の解除権を放棄させる条項

 7 10条に係る例示的文言の追加

 消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する条項であって,民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効と規定する第10条の例示として,「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をしたものとみなす条項」との文言が追加された(第10条関係)。

 8 その他

 適格消費者団体の差止請求の対象となる行為の追加等の所要の規定の整備を行うこととされた。

 

 この改正は,平成29年6月3日から施行される。但3の改正については,「民法の一部を改正する法律案」の成立後,官報にて公布される日より施行される。