改正情報 産業法部門

不正競争防止法(平成5・5・19法律第47号)の一部を改正する法律(平成27・7・10法律第54号)

 1 技術上の秘密を不正使用し生じた生産物の譲渡等の規定

 不正競争の定義に,技術上の秘密を不正に使用して生産された物を譲渡する行為等(当該物を譲り受けた時に当該物が不正使用行為により生産された物であることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がない者が譲渡する行為等を除く。)を追加することとされた(第2条関係)。

  2 技術上の秘密を取得した者に対する推定規定の整備

 民事訴訟において,原告の立証負担を軽減するため,被告が悪意又は重過失により生産方法等に係る営業秘密を取得した場合に,当該営業秘密を使用する行為により生ずる物を生産,その他技術上の秘密を使用したことが明らかな行為として政令で定める行為(以下,「生産等」とする。)をしたときに,被告が当該営業秘密を使用してその物を生産等したものと推定することとされた(第5条の2関係)。

  3 除斥期間の延長

 営業秘密を不正に使用する行為に対する侵害の停止又は予防を請求する権利について,その行為の開始のときから20年で消滅するものとされた(第15条関係)。

  4 法定刑の引き上げ・罰則の整備

(1)営業秘密侵害に係る罰則について,罰金額の上限を2000万円に引き上げた(第21条第1項関係)。また,法人処罰に係る罰金の上限についても5億円に引き上げることとされた(第22条第1項第2号)。
(2)不正の利益を得る目的で,又はその保有者に損害を加える目的で,所定の規定に違反する営業秘密の不正開示が介在したことを知って当該営業秘密を取得し,使用又は開示した者は,10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金に処し,又は併科されることとなった(第21条第1項第8号)。
(3)において前記(2)と同様の目的で,営業秘密を違法に使用して生産された物を譲渡等した者は,(2)と同様の刑罰に処されることとされた(第21条第1項第9号)。
(4)営業秘密侵害に係る罰則のうち,日本国内で事業を行う事業者が保有する営業秘密を日本国外において不正に使用等する行為に対する罰則について,罰金額の上限を3000万円に引き上げ,法人処罰に係る罰金額の上限についても10億円に引き上げるとされた(第21条第3項及び第22条第1項第1号関係)。

  5 未遂行為に関する罰則規定の整備

 不正アクセスにより,営業秘密を取得するなどの営業秘密侵害について,未遂行為も刑事罰の対象とすることとされた(第21条第4項)。

  6 非親告罪化

 営業秘密侵害罪(第21条第1項に掲げられたもの)は,被害者からの告訴がなくとも公訴を提起することができることとされた(第21条第5項)。

  7 海外保管情報の窃取

 日本国内で事業を行う者が日本国内で管理し,海外で保管する情報について海外において窃取等の所定の罪(第21条第1項各号(第9号を除く),第3項第1号若しくは第2号又は第4項(第1項第9号に係る部分を除く。))を犯した者も刑事罰の対象とすることとされた(第21条第6項)。

  8 没収に関する手続の新設(第7・8章関係)

 営業秘密侵害により生じた財産等を没収することができることとし,これに関する手続を整備された。

  9 国際共助手続等(第9章関係)

所定の要件に当てはまる外国の刑事事件において,当該外国から没収等の共助の要請があったときに係る共助手続の規定が整備された。

  この改正は,平成28年1月9日までに政令で定める日から施行される。
 ただし,3の規定については平成27年7月10日から施行される。