刑法(明治40・4・24法律第45号)の一部改正(平成25・6・19法律第49号)
改正の概要
近年,犯罪者の再犯防止が重要な課題となっていることに鑑み,犯罪者が再び犯罪をすることを防ぐため,前に禁錮以上の実刑に処せられたことがない者等について,刑の一部の執行を猶予することを可能とする制度を導入するもの。この刑法の改正とともに,薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関し,その言渡しをすることができる者の範囲及び猶予の期間中の保護観察等について刑法の特則を定める「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」(法律第50号)が制定され,併せて,保護観察等の充実強化を図るため,地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を行うことを保護観察の特別遵守事項に加えること,規制薬物等に対する依存がある者に対する保護観察の特則を定めるなどの更生保護法(平成19法律第88号)の改正も行われた。
1 刑の一部の執行猶予
(1) 次に掲げる者が3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合に,犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して,再び犯罪をすることを防ぐために必要であり,かつ,相当であると認められるときは,1年以上5年以下の期間,その刑の一部の執行を猶予することができることとした(第27条の2第1項)。
① 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
② 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その刑の全部の執行を猶予された者
③ 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
(2) 刑の一部の執行猶予が言い渡された場合においては,そのうち執行が猶予されなかった部分の期間を執行し,当該部分の期間の執行を終わった日等から,その猶予の期間を起算することとした(第27条の2第2項)。
2 保護観察
刑の一部の執行猶予が言い渡された場合においては,猶予の期間中保護観察に付することができることとした(第27条の3第1項)。
3 刑の一部の執行猶予の取消し
(1) 次に掲げる場合においては,刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならないこととした。ただし,③の場合において,猶予の言渡しを受けた者が1の(1)の③に掲げる者であるときは,この限りでないこととした(第27条の4)。
① 猶予の言渡し後に更に罪を犯し,禁錮以上の刑に処せられたとき。
② 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられたとき。
③ 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ,その刑の全部について執行猶予の言渡しがないことが発覚したとき。
(2) 次に掲げる場合においては,刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消すことができることとした(第27条の5)。
① 猶予の言渡し後に更に罪を犯し,罰金に処せられたとき。
② 2により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
4 刑の一部の執行猶予の猶予期間経過の効果
刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは,その刑を執行が猶予されなかった期間を刑期とする懲役又は禁錮の刑に減軽するとともに,この場合においては,当該部分の期間の執行を終わった日等において,刑の執行を受け終わったものとすることとした(第27条の7)。
この改正は,公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。