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書斎の窓

新・民法小説――連載と資料掲載にあたって

 

 「新・民法小説」は、私が東京大学大学院法学政治学研究科・法学部において2017年度Aセメスター(10月〜12月)に開講した「留学生のための民法案内(5)」において、参加した学生諸君に教材として提示した自作の「小説」である。この演習のメイン・タイトルは「新・民法小説を創る」というものであったが、ここでの「創る」には、私自身が教材としての「小説」を執筆することに加えて、参加者(留学生のほか日本人学生1名)がこれを読み、理解し、「あらすじ」をまとめ、「注」を付すという一連の作業、さらに私が、小説の前提や背景を説明するための「コラム」を書き足すことが含まれる。

 「新・民法小説」の「小説」の部分は、『書斎の窓』に2018年5月号から1年間連載させていただくが、「あらすじ」「注」や「コラム」は紙幅の関係で割愛せざるを得なかった。そこで有斐閣のウェブサイトを拝借して、「小説」部分の進行にあわせて「あらすじ」「注」と「コラム」を掲載させていただくことにした。連載に先立ち、若干の資料(目次・登場人物一覧・書影・リンク)を掲げるが、この企画の趣旨や参考文献・演習参加者(あらすじ・注の作成者)については連載終了時に一括して掲げることとしたい。

 「小説」「注」「コラム」のそれぞれにつき補記しておく。第一に、「新・民法小説」の題材である「民法小説」の概要については「コラム」にノート等の形で示したが、全文を読みたい方は、国立国会図書館のデジタル・コレクションをご覧いただきたい(リンク参照)。第二に、「注」は留学生たちによるもので不備や過不足がないわけではないが、留学生たちがどのような点に「注」が必要であると考えたのかを示すという意味も込めて、当面はほぼそのままの形で掲載する(「小説」本文の整理に伴い不要になった注を削るとともに、図表等文字以外の資料を削除した)。第三に、「コラム」は「小説」の登場人物が小説中で書いたとされているものを取り出して掲げる形で書かれている。その意味で「注」とともに「コラム」も「小説」を補うものとなっている。

 2018年は、明治民法の施行(1898年)から120年目、昭和民法の施行(1948年)から70年目の年にあたる。また、2017年6月には改正民法(いわゆる債権法改正)が公布され、2020年4月にはその施行が予定されている。さらに、2018年2月には法制審議会が相続法改正のための民法改正要綱を決定した。財産法部分に続いて家族法部分も改正された新民法は「平成民法」と呼ぶべきものとなる。このように私たちは、歴史的に見ても現在の状況に照らしても、民法の転換点に立ち会っている。民法が再び(三度)多くの人の関心の対象となるべき時期を迎えようとしていると言ってもよいだろう。

 人々が抱く民法への関心のあり方は一様ではない。それゆえこれに応ずる出版物も多種多様であることが望まれる。有斐閣からは民法関係の出版物が(私自身の著書・編著を含めて)数多く刊行されているが、(「あらすじ」「注」「コラム」を含む広義の)「新・民法小説」は広報誌&ウェブサイトというメディアを借りて、その列に加わろうとするものである。

 このような場を提供して下さった有斐閣の方々と演習に参加した学生諸君に、この場を借りて謝意を表する。

 

2018年2月10日

大村敦志(東京大学法学部教授)

小説本編・目次

Ⅰ 民法小説、見つかる――夏学期編

第1話 民法小説って何?

第2話 民法を題材にした文学作品は?

第3話 小説だけが媒体ではない?

 

Ⅱ 民法小説の周辺――夏休み編

第4話 民法小説を企てたのは誰か?

第5話 民法は売れる?

第6話 民法小説はすでに知られていた?

 

Ⅲ 民法小説の今昔――冬学期編

第7話 民法小説、いまは不可能?

第8話 明治人は民法がお好き?

第9話 本当の民法小説?

 

Ⅳ 民法小説が示すもの――新年・年度末編

第10話 何のための民法か?

第11話 民法をどう捉えるか?

第12話 憲法か民法か、あるいは、憲法とともに民法を?

コラム・目次

コラム1【暁月のノート】

民法小説 離婚の訴訟(明治32年1月17日印刷発行)

コラム2【ソラのノート・その1】

第2集 後見の争い(明治32年4月刊)100頁

第4集 親子の争い(明治32年6月刊)100頁

コラム3【ソラのノート・その2】

民法小説 小作の争い(明治32年5月刊)100頁

コラム4【暁月のレポート・その1】

民法典普及のための出版物

コラム5【暁月のレポート・その2】

民法典普及のための出版物(続)

コラム6【暁月のレポート・その3】

民法典普及のための出版物(完)

コラム7【ソラのレポート・その1】

民法に関する出版物

コラム8【ソラの感想・その1】

花村先生宛書簡

コラム9【ソラの感想・その2】

花村先生宛書簡

コラム10【花村のエッセイ・その1】

新入生に勧める――星野英一『民法のすすめ』の大志

コラム11【花村のエッセイ・その2】

大久保泰甫『ボワソナードと国際法』――「文明化」と「正義」

コラム12【ソラのレポート・その2】

憲法に関する出版物

主要登場人物

鄧暁月(デン・シャオユエ) 女性、23歳。中国のP大学から日本のT大学へ留学、修士課程に入学。初めての日本、好奇心旺盛。関西に叔母が住む。

尹雪雅(ユン・ソラ) 女性、26歳。韓国のP社から日本のY閣に派遣され、現在研修中。韓国のS大学修士課程修了、沈思熟考を好む。

花村多可志(はなむら・たかし) 男性、60歳。T大学民法教授。退職間際。

碧海万里(あおみ・まり) 女性、Y閣社員、先輩としてソラを指導している。

紅谷健人(べにや・けんと) 男性、T大法学部3年生、イギリスに留学希望。

白川彩香(しらかわ・あやか) 女性、T大学法学部4年生、法科大学院進学希望、アジアにも関心がある。

黒岩雄介(くろいわ・ゆうすけ) 男性、T大学法学部助教。

 民法小説第1集 表紙

 心斎橋北詰 カバー

 探偵小説 広告
 (第2集 裏表紙)

 民法小説 広告
 (第4集 裏表紙)

 実益活用 民法俗解

国立国会図書館デジタルコレクション 民法小説(4冊+2冊)

http://dl.ndl.go.jp/search/searchResult?featureCode=all&searchWord=%E6%B0%91%E6%B3%95%E5%B0%8F%E8%AA%AC&viewRestricted=0

 

国立国会図書館デジタルコレクション 改正民法正解

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/791353

 

国立国会図書館デジタルコレクション 実益活用民法俗解

http://dl.ndl.go.jp/search/searchResult?featureCode=all&searchWord=%E5%AE%9F%E7%9B%8A%E6%B4%BB%E7%94%A8%E6%B0%91%E6%B3%95%E4%BF%97%E8%A7%A3&viewRestricted=0

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