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連載

家族と刑法――家庭は犯罪の温床か?

第6回 児童が家庭でタバコの煙に苛まれるとき

立教大学大学院法務研究科教授 深町晋也〔Fukamachi Shinya〕

1 はじめに――家庭内の受動喫煙と児童虐待

 2000年代になり、家庭内における問題に対する社会的な関心は多様化している。例えば、家庭における暴力として問題となる事案についても、1980年代には子どもから両親に対する暴力(いわゆる「家庭内暴力」)が主として想定されていた(1)と言えるのに対して、現在ではむしろ、配偶者やパートナー間でのドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待といった多様な問題が意識されるようになっている(2)

 こうした意識の変化を受けて、法が家庭内における問題として取り組む課題も極めて多様化しているが、その中で、近年、家庭内における受動喫煙という問題が急速に関心を集めている。その理由は、2017年10月に東京都が「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」(以下、「子ども受動喫煙条例」と略)という条例を公布したことにある。この条例は、子どもの心身の健全な成長に寄与することを目的として(同1条)、保護者に対して家庭等における子どもの受動喫煙を防止するように努めるべきことを規定する(同6条1項)。

 ここで突然、子ども受動喫煙条例が、実は児童虐待と極めて密接な関連を有するのだと言われると、違和感を持たれる読者の方も多いのではないだろうか。受動喫煙が子どもの健康に有害であることは論を俟たない(3)としても、家庭内で喫煙をすると子どもに対する虐待になるのだと言われれば、喫煙者であろうがなかろうが、すんなりと受け容れるわけには行かないであろう。

 しかし、後に詳しく見るように、この条例の制定過程を見ると、家庭内の受動喫煙と児童虐待との共通性が正面から論じられており、本連載のテーマとの関係では極めて興味深い立法例と言える。また、この条例には罰則規定は存在しない(これは児童虐待防止法における「児童虐待」に対する罰則規定がないこととも連動している)ものの、将来的に罰則規定が設けられる余地の有無という点も関心を惹くところである。

 そこで今回は、児童の心身の健全な成長が家庭において害されるという問題につき、まずは児童虐待という現象を概観した上で、児童虐待防止法による規制とその課題、特に同法に児童虐待に関する処罰規定が存在しない点を中心に検討する。次に、こうした検討を通じて、東京都の子ども受動喫煙条例についても考察を行う。この条例が児童虐待防止法との共通性・連続性を有する点を概観した後に、受動喫煙によってもたらされる児童の心身の健全な成長への害をどのように規制すべきかについて分析を加える。

2 児童虐待の現状

 児童虐待防止法2条は、保護者がその監護する18歳未満の児童に対して行う児童虐待の様々な類型を規定している。すなわち、身体的虐待(1号)、性的虐待(2号)、ネグレクト(3号)及び心理的虐待(4号)である。平成28年度における児童相談所での児童虐待相談件数(4)は全体で12万2578件(速報値)であり、ここ10年において一貫して増加傾向にある(5)。こうした増加傾向を後押ししているのは、心理的虐待に関する相談件数の急増であり、例えば平成18年度では相談件数全体の17・2%(6414件)に過ぎなかった心理的虐待が、平成28年度では全体の5割を超えている(6万3187件、51・5%〔速報値〕)(6)。とはいえ、身体的虐待やネグレクトについても、平成18年度から基本的には一貫して増加傾向にあり、それぞれについて平成18年度と平成28年度の数値を比較するとほぼ倍増している(7)

 また、児童虐待それ自体を処罰する規定はないものの、児童虐待が殺人・傷害などの刑法犯に該当するとして検挙がなされた件数について見ても、ここ10年において基本的には一貫して増加傾向にある(8)。平成28年度では1081件となっており、そのうち身体的虐待が866件と約8割を占めている(9)。すなわち、児童虐待において、刑事罰の対象となるような重大な事案については、依然として身体的虐待が多いものと言える。

 以上概観した通り、児童虐待の相談件数や検挙件数は増加の一途を辿っており、特に心理的虐待に関する認識を含めて児童虐待に関する認識が社会に広がっていることが伺える。他方で、児童虐待それ自体を処罰する規定が存在しないために、検挙件数における罪名は、殺人・傷害・暴行といった人身犯や性犯罪がそのほとんどを占めている(10)

 このような状況において、従来の刑法典の犯罪では不十分であり、児童虐待それ自体を処罰する必要があるとの声が出てくるのは十分に理解しうるところである。そこで、以下では、こうした児童虐待を処罰する規定(児童虐待罪)について、若干の検討を行うことにする。

3 児童虐待罪を巡る議論

⑴従来の議論

 児童虐待防止法に児童虐待罪が存在しない点については、従来から議論の対象とされている(11)が、そこでの議論の中心は、虐待による傷害・死亡や性的虐待を特別に処罰する規定の必要性についてである(12)。そして、特に性的虐待については、第3回及び第4回で扱った刑法179条の監護者性交等・わいせつ罪の新設によって既に実現されているものと言える。

 これに対して、児童の心身の健全な成長を正面から問題にすることで、身体的虐待のみならず、精神的虐待やその他の精神的成長の阻害についても処罰対象に含める議論も十分に考えられる(13)。そこで、以下では、こうした児童虐待を処罰する規定を採用するドイツ語圏の法状況について見てみたい。

⑵ドイツ語圏の状況――2つの異なる児童虐待罪

 ドイツ、スイス、オーストリアのいずれの国においても、児童虐待を処罰する規定としては、2つの異なった類型が存在する。第1の類型は、傷害罪の特別類型としての児童虐待を処罰するものであり、第2の類型は、児童の心身の健全な成長それ自体を保護する独自の構成要件を規定するものである。

 まず、第1の類型について概観する。第1の類型に属する犯罪(14)は、ドイツ、スイス、オーストリア各国の刑法典における「生命及び身体に対する罪」の章に規定されている(15)ことからも分かるように、傷害罪に類似した犯罪として理解されている。その基本構造をまとめると、18歳未満の児童や疾病などによって抵抗不能な者に対して、その保護・監督を行う地位にある者が虐待を行ったり健康被害を与えたりする場合を処罰する。また、虐待行為などから重大な傷害や死亡結果が生じた場合の加重類型が規定されている(16)(17)

 第1の類型のうち、特に傷害罪の加重類型としての規定は、従来我が国においてその導入の可否が議論されてきた、虐待による傷害・死亡を処罰する規定そのものと言える。そして、例えば、個々の行為としては暴行とまでは言えない虐待行為が継続的になされたことによって死傷結果が生じた場合は、こうした規定を導入することで適切な処罰が可能となろう。とはいえ、第1の類型は、今回のテーマである受動喫煙条例との関連性はさほど大きくない。これに対して、第2の類型は、今回のテーマとの関係ではより注目に値する。

 第2の類型に属する犯罪(18)は、ドイツ、スイス、オーストリアそれぞれの刑法典における「家族及び婚姻に対する罪」の章に規定されている(19)。その基本構造としては、児童(20)に対する監護・養育義務(21)を有する者がその義務に反して(または懈怠して)児童の心身の健全な成長を危険に晒すことを処罰するものである。なお、第1の類型とは異なり、重大な傷害・死亡結果が生じた場合の加重類型は規定されていない。

 第2の類型に属する犯罪は、第1の類型とは異なり、必ずしも傷害罪に類似したものではなく、児童の心身の健全な成長を危険に晒す場合を広汎に包摂しうる。したがって、児童に十分な食事を与えない、病気の際に面倒を見ないといった典型的なネグレクトのような、児童の身体的成長に対する危険はもとより、児童が薬物やアルコールを濫用することを放置したり、更には児童の犯罪性向を高めたり、児童の非行化を阻止しないといった児童の精神的成長に対する危険についても、この類型では捕捉される。

⑶児童虐待罪に関する検討

 ドイツ語圏における児童虐待罪の第2の類型、すなわち、児童の健全な心身の成長を阻害・危殆化する場合を処罰する規定としての「児童虐待罪」を我が国でも規定するとすれば、従来は処罰対象とすることが困難であったネグレクトや、児童の心身の成長を歪めるような様々な行為を包括的に規制することができる点で、児童の福祉に資するとも言える。その点では、こうした規定を新設する意義があることになる。

 しかし、ドイツ語圏各国においても、第2の類型に属する罪については、処罰範囲が不明確であると批判されている(22)。また、限定的な解釈がなされていることもあり、実務上の適用例は必ずしも多くはない(23)。更に、我が国においては、断片的にではあれ、第2の類型に属する罪について規定がされていると言える。例えば、未成年者喫煙禁止法3条は、親権者が20歳未満の児童の喫煙を阻止しない場合を処罰しているし、未成年者飲酒禁止法にも同様の規定がある。

 以上の検討からは、我が国に「児童虐待罪」を導入するにしても、処罰対象の明確化が必要であり、例えば、児童虐待防止法2条の「児童虐待」についても、3号・4号全てを犯罪化することが妥当かは、なお慎重な検討が必要であろう。また、条例において、児童の健全な心身の成長を阻害・危殆化する行為を処罰する場合にも、いかなる行為がいかなる意味で児童の健全な心身の成長を阻害・危殆化するのかといった点を明確化しなければならない。

4 東京都子ども受動喫煙条例の検討

⑴本条例の内容と制定の経緯

 東京都は、2017年10月13日に子ども受動喫煙条例を公布した(2018年4月1日施行)。本条例は、子どもは「自らの意思で受動喫煙を避けることが困難」であることに鑑み(前文)、「子どもの生命及び健康を受動喫煙の悪影響から保護する」ことで、その「心身の健やかな成長に寄与するとともに、現在及び将来の都民の健康で快適な生活の維持を図る」ことを目的とする(1条)ものである。そして、その観点から、本条例6条一項では、「保護者は、家庭等において、子どもの受動喫煙防止に努めなければならない」と規定されている(24)

 本条例では、罰則規定がおよそ設けられていない。これは、子どもの受動喫煙につき保護者を中心とした周囲の大人が防止する義務があるという規範を形成するための条例として本条例が制定されたからである(25)。なお、本条例では、受動喫煙防止はあくまでも努力義務とされている点に注意が必要である。

 また、本条例は、「子供はみずからの意思で受動喫煙を避けることが困難という点、生命の侵害や重篤な健康被害が生じるなどの点において、児童虐待との共通性がある」(26)として、本条例が規定する「保護者」や「子ども」については、児童虐待防止法と同じ定義を採用している。更に、本条例は、保護者以外の喫煙をしようとする者一般に対して、受動喫煙を防止する努力義務を課しており、児童虐待防止法が、2条では専ら保護者の行為のみを「児童虐待」と定義しつつ、3条ではあらゆる人について、児童を虐待してはならない旨定めているのと類似した構造となっている。但し、受動喫煙それ自体が児童虐待防止法2条の「児童虐待」に当たるとの理解は明確に否定されている(27)

 次に、本条例の成立の経緯を見ると、都民ファーストの会が都議会公明党と共に提出した議員条例案が、都議会自民党の反対を押し切る形で成立している。自民党の反対理由は様々なものがある(28)が、本稿のテーマとの関係で特に重要なのは、本条例が「法は家庭に入らず」原則に抵触しうるとの批判である。すなわち、家庭内の受動喫煙を防止するために、家庭という私的空間に公権力が踏み込むことになるという点が特に批判されていた(29)。これは、①家庭内での受動喫煙それ自体は、児童虐待と言えるほどの重大な被害を児童に及ぼさないことを前提にしつつ、②そうした受動喫煙について、法が家庭内に干渉することを批判するものとして、極めて重要な問題提起である。

⑵家庭内の受動喫煙と児童の健全な成長

 そもそも、家庭内の児童の受動喫煙は、児童の心身の健全な成長という観点からいかなる意味で有害なのであろうか。もちろん、受動喫煙が長期的に見て成人の発がんリスクを高めるといった点は既にたばこ白書などで論じられているが、家庭内の児童に特有の受動喫煙の危険性とはいったい何であろうか。

 東京都議会厚生委員会での議論においては、たばこ白書のデータに依拠して副流煙と乳幼児突然死症候群・ぜんそくとの関連が指摘されており、こうしたリスクを児童が自らの意思で回避できない点に、家庭内の児童の受動喫煙に特有の危険性があるとされている(30)。確かに、こうした危険性は、生命や身体に対する危険として把握でき、その限りでは規制根拠として掲げることが可能であろう。

 しかし、こうした危険性は、基本的には身体の健全な成長に対するものであって、本条例が掲げる、(精神面も含めた意味での)心身の健全な成長とはどのような関係に立つのであろうか。例えば、児童が自発的に喫煙習慣を有するようになることを保護者が防止しない場合には、児童の非行を防止しないことでその心身の健全な成長が害されるといった議論が可能である(31)が、受動喫煙については、同様の理は妥当しないであろう。したがって、本条例の謳う「心身の健やかな成長」のうち、特に重点が置かれているのはその(身体的な)健康であり、家庭内といういわば「逃げ場のない」状況で健康に対するリスクに継続的・長期的に晒されることが、家庭内における児童の受動喫煙に固有の害悪性であるということになる。

⑶罰則規定の可能性?

 以上のように解すると、家庭内における児童の受動喫煙は、児童虐待防止法2条にいう「児童虐待」に当たるか否かはともかく、児童の健康に対するリスクを逃げ場のない形で継続的・長期的に高める点で、法的な規制対象とする一定の理由があることになる。では、保護者による家庭内における児童に対する受動喫煙防止義務違反に罰則、特に刑事罰を科すことは可能であろうか。この点を最後に検討したい。

 読者の皆さんの中にも、家庭内における児童の受動喫煙を法的に規制することについてはなお許されるとしても、受動喫煙を防止する義務に違反した場合に罰則、殊に刑事罰を科すのは行き過ぎであると感じられる方がいることであろう(32)。刑事罰を科すことで「法が家庭の中に過剰に立ち入ることになり、その自律性を大きく破壊している」と受け止められるのには尤もな部分がある。また、児童虐待防止法の「児童虐待」ですら罰則規定がない現状において、家庭内における児童の受動喫煙のみを罰則の対象とすることは不均衡であるとの理解も当然にありうるものである。

 しかし、児童虐待防止法の「児童虐待」についても、処罰に値するものを明確化・類型化しつつ、刑事罰の対象とすることは十分に考えられるところである。仮に、家庭内における児童の受動喫煙についても、こうした「児童虐待」に比肩するような害悪性があるとの社会的なコンセンサスが生まれるのであれば、将来的には(より規制対象を明確化した上で)罰則規定が設けられるという方向に進むかもしれない。本条例は、そのような意味でも、正に規範形成型の法規範であるということができよう。

5 終わりに

 喫煙に関する問題を語る場合には、得てして語り手の「信条告白」が強いられることがある。実際、東京都の子ども受動喫煙条例の審議の場でも、発言者が喫煙者であるか否かが問われる場面があり、喫煙者であるか非喫煙者であるかでその立場が自動的に決まるかのような印象すらある。しかし、喫煙者か否かに関わりなく、家庭内における児童の受動喫煙は、児童虐待という観点からして極めて重要なテーマであり、「法は家庭に入らず」という法諺の意味を改めて考えさせるものである。

 また、家庭内の問題に法が介入するということは、人々が従来はプライベートな問題であると思っていたことが公的な問題として評価されることを意味する。東京都の子ども受動喫煙条例は正にその点を如実に示す好例と言える。家庭における営みがどこまで法的な規制に馴染むのかという問いは、今後も重要なものと言えるであろう。

(1) 往年のテレビドラマである「積木くずし 親と子の200日戦争」(1983年放送)を記憶されている読者も多いかも知れない。2012年にも、「積木くずし 最終章」が放送されており、「家庭内暴力」という事象についての関心は依然として大きいものがあると言えよう。なお、本作の原作者は、1983年放送版の原作を書いた際には、作中の主人公である家庭内暴力を行う自分の娘に対して、親としての自分の正しさを正当化していたが、2012年放送版の際には、むしろ自分の親としての問題性に気づいた旨述べている(http://www.fujitv.co.jp/m/drama/tsumiki/interview/04.html〔2018年1月17日閲覧〕)。

(2) いわゆる「DV夫・妻」や「毒親」といった言葉が、ここ10年ほどで社会的に広く知られるようになっている。とはいえ、DVといった事象は古くから問題となっていたものであり、例えば、コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』収録の「花婿失踪事件」(A Case of Identity)(1891年)の冒頭には、語り手であるワトソンが「妻に対する夫の虐待(A husband's cruelty to his wife)」という新聞のコラムのタイトルを読み上げ、「内容を読まなくとも何が書いているか分かるよ」と言って夫の妻に対する虐待について語るシーンがある。その次に続くホームズの台詞やこの作品の(「毒親」がもたらす極めてやり切れない思いが残る)結末と併せて、是非読者の皆さんにもお読み頂きたいところである。

(3) 厚生労働省「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書(平成28年8月)」(いわゆる「たばこ白書」)329頁以下参照。

(4) 以下は全て、「平成29年度全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議資料」(2017年)5頁以下による。

(5) なお、平成23年度の件数が5万9919件であり、ここ5年で倍増している点に注意が必要である。

(6) 平成28年度における警察から児童相談所への通告件数(5万4227件)のうち、心理的虐待が3万7183件と全体の約7割を占めているが、そのうちの約7割に当たる2万4998件がいわゆる面前DVによるものとされている(前掲注(4)230頁)。

(7) 平成18年度については、身体的虐待が1万5364件、ネグレクトが1万4365件であり、平成28年度(速報値)については、身体的虐待が3万1927件、ネグレクトが2万5842件である。

(8) なお、平成23年度の件数が421件であり、ここ5年で倍増している点に注意が必要である。

(9) 前掲注(4)230頁。

(10) 前掲注(4)231頁。

(11) 林弘正『児童虐待 その現況と刑事法的介入〔改訂版〕』(2007年)151頁以下、岩井宜子=渡邊一弘「立法論としての『児童虐待罪』」町野朔=岩瀬徹編『児童虐待の防止――児童と家庭、児童相談所と家庭裁判所』(2012年)289頁以下(なお、同書については編者自身による紹介が本誌(町野朔「児童虐待との戦い」書斎の窓615号〔2012年〕)でなされている)。また、近時この点を詳細に検討したものとして、池田直人「児童虐待の処罰に関する考察」東京大学法科大学院ローレビュー第12巻(2017年)24頁以下。なお、本稿を執筆するに当たって池田論文から多くの示唆を得たことを、併せて記しておく。

(12) 林・前掲注(11)151頁以下、岩井=渡邊・前掲注(11)295頁。

(13) 池田・前掲注(11)43頁以下は、アメリカ模範刑法典230・4条(「子どもの福祉を危うくする罪」)を採り上げつつ、ペンシルベニア州刑法の同様の規定について詳細かつ緻密に分析している。

(14) ドイツ刑法225条、スイス刑法123条2項、オーストリア刑法92条。

(15) 厳密に言えば、ドイツ刑法典においては、生命に対する罪の章(第16章)と身体の完全性に対する罪の章(第17章)とが区別されており、ドイツ刑法225条は後者に属する。

(16) より詳細に分析すると、オーストリア刑法92条3項は致死又は重大致傷結果を要件とする結果的加重犯を規定するのに対して、ドイツ刑法225条3項は、死亡又は重大傷害結果を惹起する危険性を要件とする加重類型である(したがって、危険性についての故意が必要となる)。さらに、ドイツ刑法225条3項2号では、心身の成長を著しく阻害する危険性をもたらした場合をも加重処罰している。なお、現在のスイス刑法典はそもそも結果的加重犯規定を有しない。

(17) なお、精神的な虐待も処罰することから、保護法益としては「精神の完全性」も含まれるとされており、その限りでは通常の傷害罪とはなお異なった側面を有するものと言える。すなわち、第1の類型は、傷害罪の加重類型としての罪と、精神的虐待を独自に処罰する罪とが合わさったものと評価できる(ドイツ刑法225条につき、池田・前掲注(11)31頁)。

(18) ドイツ刑法171条、スイス刑法219条、オーストリア刑法199条。

(19) 本章に属する罪としては他に、扶養義務違反罪(ドイツ刑法170条、スイス刑法217条、オーストリア刑法198条)や重婚罪(ドイツ刑法172条、スイス刑法215条、オーストリア刑法192条)などが挙げられる。なお、厳密に言えば、スイス刑法では章のタイトルは「家族に対する重罪及び軽罪」である。

(20) 但し、ドイツ刑法171条は、スイスやオーストリアが18歳未満の児童を保護客体とするのとは異なり、16歳未満の児童を客体とする。

(21) オーストリアでは専ら家族法上の義務に基づくとされる(Ramsauer, in: Salzburger Kommentar §199 (2008), Rz. 8)のに対して、ドイツ・スイスでは、契約や事実的な保護の引受けでも足りるとされている(Frommel, in: Nomos Kommentar zum Strafgesetzbuch 5. Aufl. Band 2 (2017), §171 Rn. 7; Eckert, in: Basler Kommentar 3. Aufl.(2013), Art. 219 Rn. 3)。

(22) Eckert, a. a. O.(Anm. 21), Art. 219 Rn. 9.

(23) 例えば、ドイツにおいては、年間の有罪件数は70〜90件程度であり(Frommel, a. a. O.(Anm. 21), §171 Rn. 3)、オーストリアに至っては一桁台(Ramsauer, a. a. O.(Anm. 21), §199 Rz. 6)である。こうした状況を踏まえ、ドイツやオーストリアでは、本罪の意義は小さいものと評価されている。これに対して、スイスにおいては、かつては有罪件数は一桁台であったものの、近時は年間の有罪件数が50件以上と急増している(vgl. Eckert, a. a. O.(Anm. 21), Art. 219 Kriminalstatistik (T. Freytag))。

(24) 本条例は、保護者に家庭外においても受動喫煙防止の努力義務を課し(7条)、また、およそ喫煙をしようとする者一般に対しても、一定の場所における子どもの受動喫煙を防止する努力義務を課している(8ないし11条)。

(25) 東京都議会厚生委員会速記記録第10号(平成29年9月29日)岡本こうき委員の発言による。

(26) 岡本・前掲注(25)参照。

(27) 岡本・前掲注(25)参照。

(28) 現在、東京都は飲食店などでの受動喫煙を防止する条例(受動喫煙防止条例)についても制定を予定しており、子ども受動喫煙条例のみを先に制定する必要性についても問題となった。

(29) 東京都議会厚生委員会速記記録第10号(平成29年9月29日)小宮あんり委員の発言による。

(30) 岡本・前掲注(25)参照。

(31) Ramsauer, a. a. O.(Anm. 21), §199 Rz. 23. だからこそ、未成年者喫煙禁止法は保護者に喫煙阻止義務を課し、その違反に刑事罰を科している。

(32) もちろん、公共建造物や飲食店における受動喫煙についても、刑事罰を科すのは行き過ぎであるとの理解もありうるところであろう。その限りでは、「法は家庭に入らず」を超えて、受動喫煙それ自体の害悪性に関する評価の問題も関わってくる。また、路上喫煙を禁止する条例についても、刑事罰を科すことの妥当性は問題となりうる。この点については、深町晋也「路上喫煙条例・ポイ捨て禁止条例と刑罰論――刑事立法学序説」立教法学79号(2010年)57頁以下参照。

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