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連載

家族と刑法――家庭は犯罪の温床か?

第4回 児童が家庭の中で性的虐待に遭うとき その2

立教大学大学院法務研究科教授 深町晋也〔Fukamachi Shinya〕

4 前回を振り返って

 まずは、読者の皆さんと一緒に、前回の議論をざっと振り返ってみたい。児童に対する虐待は身体的なものや心理的なものなど様々なものがあるが、その中でもとりわけ性的虐待は、決して無視・軽視し得ない実態を有する。「犯罪の温床」としての家庭という視点から見ると、性的虐待は、まさに家庭という場の中で行われるものであり、かつ、外から見た被害の痕跡が残りにくく、更に、被害児童からの被害申告も行われにくいといった特徴を有し、外部からは極めて可視化されにくい事象である。

 それゆえ、強制性交等罪(旧強姦罪。刑法177条前段)や強制わいせつ罪(刑法176条前段)における「暴行」「脅迫」や、準強制性交等罪(旧準強姦罪。刑法178条2項)や準強制わいせつ罪(刑法178条1項)における被害者の「抗拒不能」といった点の立証は極めて困難となり、こうした刑法典上の性犯罪の成立は実際にはなかなか認められない。その結果、こうした暴行・脅迫や被害者の抗拒不能を要しない性犯罪として、条例の淫行罪や児童福祉法上の児童淫行罪(児童福祉法34条1項6号)、殊に後者が実務上大きな意義を有することになる(1)

 しかし、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会においては、家庭内で被害児童の意思に反してなされる性交という極めて当罰性の高い事例に対する刑罰としては、児童淫行罪の法定刑(2)が軽すぎるという点が問題とされ、新たな処罰規定の創設が提言された。そして、監護者による性交等・わいせつ行為を、(準)強制性交等罪・(準)強制わいせつ罪と同様に処罰する規定として、監護者性交等・わいせつ罪が刑法典に新たに規定されるに至ったのである。

 それでは、なぜ監護者性交等・わいせつ罪は、(準)強制性交等・わいせつ罪と同様に処罰されるのであろうか。本稿では、まず、監護者性交等・わいせつ罪が導入された経緯及びその内容について、一定の地位を利用してなされる児童に対する性犯罪に関する従来の立法動向と比較しつつ、分析を行う。そして、なぜ監護者性交等・わいせつ罪が(準)強制性交等・わいせつ罪と同等の当罰性を有するのか、果たしてそのような立法には合理性があるのかについて検討を加える。その上で、監護者性交等・わいせつ罪を巡って今後生じることが予想される問題についても、多少の分析・検討を行うことにする(3)

5 監護者性交等・わいせつ罪(刑法179条)の導入とその分析

⑴従来の立法提案との差異と導入の経緯

 親などの身分や雇用関係などに基づいて保護・監督する児童に対する性犯罪を、(旧)強姦罪・準強姦罪とは別個に規定しようとする立法動向は、従来から存在したところである。例えば、1940年の改正刑法仮案394条(4)(5)や、1974年の改正刑法草案301条(6)は、こうした地位利用型の性犯罪(7)を規定していた。

 これに対して、今般の改正法で導入された監護者性交等・わいせつ罪は、被害者と一定の関係を有する者のみが主体となる性犯罪という点で、前述した従来の地位利用型の性犯罪と共通するが、本罪の立法段階で特に想定されていた事案を分析する限り、必ずしも従来の地位利用型の性犯罪とは軌を一にしない。というのは、本罪の適用対象として想定されているのは、親子間の長年の虐待などで、当該児童が親に対して抵抗する意欲をおよそ喪失している(あるいは、親に迎合している)状況下で、その状況に乗じて、親が当該児童に対して性交等・わいせつ行為をする事例であり(8)、いわば「家庭内での児童に対する性犯罪」に特化した規定と言えるからである。これに対して、従来の地位利用型の性犯罪は、雇用関係や業務関係など、家庭外の支配―被支配関係をも取り込んだ規定となっており、後で検討するように、ドイツ語圏など(9)でも広く採用されている規定形式である。

 このように、監護者性交等・わいせつ罪は、従来の地位利用型の性犯罪とは異なる性質を有している。そこで、以下では、従来の地位利用型の性犯罪と比較しつつ、本罪の内容・特質をより明確化してみよう。

⑵監護者性交等・わいせつ罪の概観

 ①条文の確認

 本条は、以下のように規定されている。

(監護者わいせつ及び監護者性交等)

刑法179条① 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条の例(10)による。

② 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条の例(11)による。

 ②本罪の特徴

 従来の地位利用型の性犯罪と比較して浮かび上がる本罪の特徴は、①本罪の行為主体が「現に監護する者」に限定されていること、②偽計・威力といった行為手段に代わり、「影響力があることに乗じて」という手段が要求されるに留まること、及び③法定刑が強制性交等罪(5年以上の懲役)又は強制わいせつ罪(6月以上10年以下の懲役)と同じものとして、極めて重く設定されていること、である。すなわち、本罪は行為主体を限定することによって、行為手段の限定性を緩め、かつ法定刑を極めて重く規定しているものと理解することができる(12)

 それでは、なぜ行為主体を限定することで本罪の行為手段を緩和し、かつ極めて重い法定刑を規定することができるのであろうか。この点を考察するためには、「現に監護する者」とは何かという点の分析が不可欠であるため、項を変えて検討することにする。

⑶「現に監護する者」とは

 「現に監護する者」とは、立法担当者の解説によれば、「法律上の監護権の有無を問わないが、現にその者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点のほか、生活上の指導監督などの精神的な観点も含めて、依存・被依存ないし保護・被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められることが必要」であるとされる(13)。既に検討したように、従来の地位利用型の性犯罪と比べると、雇用・業務関係を除外し、親子関係と同視しうる程度(14)の保護・被保護関係を要求している点が特徴的である。

 こうした規定は、従来の地位利用型の性犯罪のみならず、ドイツ語圏各国における児童に対する地位利用型の性犯罪規定と比較しても特徴的である。ドイツ語圏各国においては、絶対的保護年齢と相対的保護年齢とを区別し、絶対的保護年齢(ドイツにおいては14歳未満)に属する児童に対する性犯罪については、暴行・脅迫といった行為手段の有無や同意の有無、地位利用の有無を問わずに一律に処罰される。これに対して、相対的保護年齢(ドイツにおいては〔14歳以上〕18歳未満)に属する児童に対する性犯罪については、親子関係や教育上の関係といった地位利用型の性犯罪の他、児童の困窮状況を利用してなされる性犯罪などが処罰されるが、その法定刑は、絶対的保護年齢に属する児童になされる性犯罪や、暴行・脅迫を用いてなされる性犯罪などと比べて明らかに低く設定されている(15)

 一例を挙げると、ドイツにおいては、絶対的保護年齢に属する(すなわち14歳未満の)児童との性的行為については6月以上10年以下の自由刑(ドイツ刑法176条1項)が、性的行為のうち性交又は性交類似行為については2年以上(15年以下)の自由刑(同176条a2項1号)がそれぞれ規定されている。これに対して、相対的保護年齢に属する(すなわち18歳未満の)児童に対して、親子関係や教育的関係にある者が行う性的行為については3月以上5年以下の自由刑(ドイツ刑法174条1項)が規定されるに留まる。

 こうした立法例と比較すると直ちに思い浮かぶ疑問は、監護者性交等・わいせつ罪の行為主体が親子関係又はそれと同視しうる関係を有する者に限定されたとして、なぜ強制性交等・わいせつ罪と同等の不法性あるいは悪質性が肯定されるのか、である。というのは、従来の地位利用型の性犯罪やドイツ語圏各国などの立法例においても、親子関係又はそれと同視しうる関係に基づく性的行為という、最も悪質性の高い事例について想定をした上でその法定刑(特にその上限)が設定されているからである。親子関係又はそれと同視しうる関係に限定したというだけでは、強制性交等・わいせつ罪と同等の不法性を有する性犯罪としての類型化が十分になされていると言えるのかはなお疑問である(16)

⑷監護者性交等・わいせつ罪の重罰化根拠

 それでは、親子関係又はそれと同視しうる関係に限定することにより、いかなる意味で本罪が強制性交等・わいせつ罪と同等の不法性・悪質性を有するのか、その実質的な根拠が問題となる。こうした根拠づけを巡っては、大きく分けて、①当該関係が、被害児童の意思自由又は性的自由(性的自己決定)を類型的に害することを理由とするアプローチと、②当該関係を有する者に課せられた特別な保護責任を理由とするアプローチがある(17)

 ①のアプローチは、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会において、法務省の担当者によって言及されていた(18)ものであり、その後の立法解説でより明示的に述べられている(19)。すなわち、「現に監護する者であることによる影響力」とは、「被監護者が性的行為等に関する意思決定を行う前提となる人格、倫理観、価値観等の形成過程を含め、一般的かつ継続的に被監護者の意思決定に作用を及ぼし得る力」が含まれるとして、被害児童の意思決定に対する作用(の可能性)が問題とされている。

 しかし、こうしたアプローチが、あくまでも被害児童の個々の性的自己決定(個々の性的行為に関する意思決定)に対する影響・作用を問題とする(20)以上、こうした影響・作用につき、「一般的・継続的」な力が必要とされる理由は存在しないように思われる。強制性交等・わいせつ罪がまさに、暴行・脅迫という「当該」性的自己決定を歪める力を問題にしていることとパラレルに考えれば、雇用関係や教育関係においても、ある一定の局面においては、被害児童の「当該」性的自己決定に与える影響が極めて強い場合は容易に想定しうる。したがって、このような個々の性的自己決定に焦点を合わせるだけでは、本罪の主体を親子関係又はそれと同視しうる関係を有する者に限定する理由は必ずしも存在しない(21)。それにもかかわらず、このアプローチが敢えて「一般的・継続的」な力を問題とし、被害児童の「人格、倫理観、価値観等の形成過程」までも視野に入れて、その影響力を論じるのは、単に被害児童の当該性的自己決定を超えた観点、すなわち、当該児童の健全な性的発達それ自体をも考慮しているからに他ならないように思われる。

 こうした観点を直截に考慮することが可能なのが、②のアプローチである。そもそも、こうしたアプローチの萌芽は既に、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会においても示されていた(22)ところであるが、②のアプローチによれば、監護者とは、被害児童の個々の性的自己決定が自由になされるように保護すべき立場にあるのみならず、むしろ、被害児童の健全な性的発達が阻害されないように一般的・継続的に保護すべき立場にある者と言える。

 こうした理解は、本罪の保護法益との関係でも十分に説得的なものであるように思われる。ここで読者の皆さんに想起してほしいのは、既に前号で論じたように、刑法176条後段・177条後段の保護法益は、(絶対的保護年齢に属する)13歳未満の児童の性的自己決定の自由のみならず、児童の性的な健全育成をも併せて保護する規定と解される(23)ということである。そして、本罪もまた、一般的に見てなお精神的に未熟である(24)18歳未満の児童を保護する規定であることに鑑みれば、単に児童の性的自己決定の自由のみならず、その性的な健全育成を保護する規定と解するべきであろう。このような保護法益の理解からすれば、児童の性的な健全育成という本罪の法益を特に保護すべき責任を負っているのが、本罪における監護者であることになる。

 以上の理解からすると、前回検討した児童福祉法上の児童淫行罪と本罪とは、実は連続的な関係にある。前号においては、児童福祉法上の児童淫行罪の主体(25)は、親や学校の教師など、被害児童の心身の健全な発達に重要な役割を果たす地位を有する者である旨を論じた。学校の教師のように、児童の心身の健全な発達に対して包括的・継続的に保護を委ねられていない者であってもなお、その役割の重要さに鑑みれば、一定の保護的な立場にあると解することができ、したがって、児童淫行罪の行為主体たりうる。

 これに対して、そうした重要な役割を果たす者の中でも、特に被害児童の健全な性的発達に対して包括的かつ継続的に保護を行うべき地位を有する者こそが、本罪における監護者である。したがって、本罪は、児童淫行罪と比べて更に加重された保護責任を有する者としての監護者のみを行為主体とする犯罪と考えることができる(26)

 以上の見解からすると、監護者性交等罪は、児童淫行罪よりも更に保護責任が加重されているからこそ、児童淫行罪よりも法定刑が重く規定されていることになる。また、監護者わいせつ罪は、児童淫行罪における「淫行」(27)に包摂されないようなわいせつ行為についても、監護者という重大な保護責任が課される者によるものとして、強制わいせつ罪と同様に処罰するものとした規定と言える。

6 監護者性交等・わいせつ罪の成立の限界

 以上で、監護者性交等・わいせつ罪の大まかな分析は終了したが、以下では、本罪の成立の限界が問題となるいくつかの局面について、多少の検討を加えることにしたい。

⑴児童が睡眠中である場合

 立法解説においては、準強制性交等・わいせつ罪が成立する場合には、重ねて監護者性交等・わいせつ罪が成立することはない(いわゆる補充関係に立つ)との見解が主張されている(28)。しかし、このように考えると、被害児童の睡眠中に性交等やわいせつな行為を行った場合には、常に準強制性交等・わいせつ罪のみが成立すると解されることになる。このような解釈を採用する場合には、被害者が睡眠中であったか否かの立証が極めて重要となり、「家庭内の性犯罪」という外部から極めて可視化されにくい犯罪について処罰範囲を拡張するために新たに規定した本罪の趣旨が損なわれるおそれもある。

 こうした観点からすれば、監護者による保護の影響下にあるからこそ、被害児童が監護者の手の届く場所で睡眠しているとして、なお「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」性交等・わいせつな行為を行ったと解する余地は十分にあるように思われる(29)。これに対して、被害児童が家出をして一人暮らしをしているところに、監護者たる親が偶然に当該児童の姿を見かけて後をつけ、夜間に室内に忍び込んで被害児童の睡眠中に性交等・わいせつな行為を行うような場合には、もはや監護者であることによる「影響力があることに乗じて」とは言えず、専ら準強制性交等・わいせつ罪が成立することになろう。

⑵行為者と児童との間に愛情関係がある場合

 特に問題となるのは、児童が監護者に対して愛情を有し、積極的に性交等・わいせつな行為を行う場合である。児童の側が暴行・脅迫によって監護者に性交等・わいせつな行為を強いる場合には、もはや監護者に本罪は成立しない(30)と言えるとしても、それ以外の様々な事例が容易に想定されるところである。

 この問題を一律に解決することは極めて困難であるが、監護者の保護責任を強調する立場を徹底すると、原則として監護者には、児童が監護者に対して有する愛情を性的関係に転化させないように配慮する義務があることになろう。すなわち、監護者には、児童が監護者自身を性的パートナーに選択しないように保護する責任があるのであり、かかる保護責任に反して性交等・わいせつな行為を行った場合には、原則として本罪成立が肯定されるとの帰結が導かれることになる。但し、こうした保護責任の限界をどのように設定すべきかは、なお慎重な検討が必要であろう。

7 終わりに

 監護者性交等・わいせつ罪は、「犯罪の温床」としての家庭における児童に対する性的虐待を処罰する規定であるが、それゆえに、家庭における様々な人間関係をどのように法的に規律すべきかを巡って、極めて困難な問いを提供するものとも言える。本罪を巡る議論は、今後ますます重要になると思われる。

 最後に、架空の事例を記して終わりとしたい(31)。甲は、乙女との結婚を望んでいたが、乙女は自分の親友でもある丙との結婚を選んだ。乙女と丙との間にはA女が生まれたものの、丙はその後死亡した。甲は再び乙女に結婚の申込みをしたものの、乙女はこれを断った。時が経ち、A女が小学校を卒業する頃になり、乙女はA女の養育に悩むようになり、甲にA女の養育を依頼した。甲はA女を自己の手元で心を込めて養育するうちに、A女を愛するようになり、また、A女も甲を愛するようになった。A女が18歳になる直前に、甲とA女とは性的な関係を有するに至った。その後、甲とA女とは結婚した。

 このような事例で、果たして甲に監護者性交等罪が成立するのであろうか。読者の皆さんにも一緒に考えてもらえれば幸いである。

(1) 但し、前回も触れたように、実務上、二者間での性交・性交類似行為について本罪の適用を認めるに至ったのは、最決平成10・11・2刑集52巻8号505頁によってである。

(2) 6月以上10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科である(児童福祉法60条1項)。

(3) 前回の連載以降に公刊されたものとして、加藤俊治「性犯罪に対処するための刑法改正の概要」法律のひろば70巻8号(2017年)52頁以下、今井將人「﹁刑法の一部を改正する法律﹂の概要」研修830号(2017年)39頁以下、及び樋口亮介「性犯罪規定の改正」法時89巻11号(2017年)112頁以下に接した。それぞれ、今般の性犯罪改正についての理解を深める上で必読の文献と言える。

(4) 改正刑法仮案 394条

 業務、雇傭其ノ他ノ關係ニ因リ自己ノ保護又ハ監督スル婦女ニ對シ偽計又ハ威力ヲ用ヒテ之ヲ姦淫シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ處ス

(5) 但し、前注を見ればわかるように、厳密に言えば18歳未満といった保護年齢の限定があるわけではない。

(6) 改正刑法草案 301条

 身分、雇用、業務その他の関係に基づき自己が保護し又は監督する18歳未満の女子に対し、偽計又は威力を用いて、これを姦淫した者は、5年以下の懲役に処する。

(7) 以下、本文中でこの2つの規定に言及する際に、「従来の地位利用型の性犯罪」と呼ぶことがある。

(8) 法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会第3回議事録9頁(森委員)。

(9) ドイツ、オーストリア、スイスといったドイツ語圏各国の他、筆者の知る限りでは台湾(中華民國)刑法228条も同様の規定を有している(陳子平『刑法各論(上)2015年9月増修版』〔2015年〕285頁以下参照)。

(10) 強制わいせつ罪と同様に扱われることを意味する。したがって、法定刑は6月以上10年以下の懲役である。また、致死傷罪の規定(刑法181条1項)が適用される。

(11) 強制性交等罪と同様に扱われることを意味する。したがって、法定刑は5年以上の懲役である。また、致死傷罪の規定(刑法181条2項)が適用される。

(12) 深町晋也「児童に対する性犯罪について」『西田典之先生献呈論文集』(2017年)339頁。

(13) 加藤・前掲注(3)57頁以下。

(14) 法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会第3回議事録3頁(中村幹事)。但し、加藤・前掲注(3)57頁や今井・前掲注(3)43頁ではこの点には言及されていない。こうした表現を回避することで、「現に監護する者」の成立範囲に柔軟さを残しておきたいという意図があるようにも受け取れるが、そのことによって本罪の成立範囲が(更に)不明確になる可能性もまた否定できないところである。

(15) なお、ドイツ刑法2016年改正により、被害者の明示又は黙示の拒絶意思に反して性的行為を行った場合には、6月以上5年以下の自由刑が科されることになったが(ドイツ刑法177条1項)、暴行・脅迫といった行為手段を伴わない場合には、なお法定刑を低く設定するという態度が貫徹されていると見ることができる(深町晋也「ドイツにおける2016年性刑法改正について」法時89巻9号〔2017年〕97頁以下参照)。

(16) こうした観点から、深町・前掲注(12)341頁では、「本罪はむしろ近親相姦罪に接近しているとすら言える」と評している。本罪が近親相姦罪とは別の意味で「家庭内の性犯罪」を規律するものである以上、それにふさわしい実質を明確化すべきというのがその批判の趣旨である。なお、本罪を加重的な身分犯と構成しつつ、近親相姦罪の禁止規範を規定するものではないとする見解として、森川恭剛『性暴力の罪の行為と類型』(2017年)202頁参照。

(17) なお、以下の本文を読み進めると分かるように、両者のアプローチは必ずしも相互排他的なものではない。むしろ、両者を一定程度併用するという見解も十分にありうる(樋口・前掲注(3)115頁も参照)。

(18) 例えば、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会第3回議事録2頁(中村幹事)。

(19) 加藤・前掲注(3)58頁。

(20) このアプローチは、本罪の保護法益を専ら被害児童の性的自己決定権に限定する見解(法制審議会刑事法〔性犯罪関係〕部会第3回議事録18頁〔佐伯委員〕参照)と親和的と言える。

(21) だからこそ、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会においても複数の委員から、本罪の行為主体について、親子関係に限定する合理的理由はなく、教育関係にも広げるべきであるとの指摘がなされていたのである(法制審議会刑事法〔性犯罪関係〕部会第3回議事録12頁以下の角田、木村、小西各委員の発言を参照)。

(22) 法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会第3回議事録23頁(橋爪幹事)。監護者を「本来は被害者を保護すべき者」とした上で、こうした保護責任を有する者が「その地位、権限を濫用して被害者の意思決定に介入し、性交等を行わせる点に強い不法性を認める」と述べており、①のアプローチと②のアプローチを併用するものと言える。

(23) 13歳未満の者に対して、その意思に反する性交を強要することが、「被害者の健全な成長に多大な影響を及ぼす」点においても被告人に不利な情状として考慮しうる点につき、渡辺裕也「新判例解説(平成28年5月26日福岡高裁判決)」研修829号(2017年)27頁参照。

(24) 加藤・前掲注(3)57頁。

(25) 但し、ここでの主体はあくまでも二者関係型における主体である。二者関係型と三者関係型の区別については、前号を参照されたい。

(26) 多少細かい議論になるが、本文のような理解からは、児童福祉法上の児童淫行罪と本罪との関係については、前者が児童の健全育成を、後者が児童の性的自己決定を保護するといった形で明確に切り分けた上で、両罪が観念的競合の関係に立つ(加藤・前掲注(3)58頁)と解することはできない。むしろ、両罪の保護法益には重なり合いがあることを正面から認めた上で、本罪が成立する場合には、児童淫行罪は別個に成立することはないと解するべきであろう(深町・前掲注(12)343頁。吸収関係にあると明示するものとして、樋口・前掲注(3)118頁参照)。

(27) 児童淫行罪における「淫行」が性交又は性交類似行為に限定されることについては、前号の説明も参照。

(28) 加藤・前掲注(3)58頁。

(29) 樋口・前掲注(3)116頁以下も参照。

(30) 加藤・前掲注(3)58頁。

(31) 本事例については一応のモデルとなった作品がある。もし気づかれた方は、機会があれば筆者にお尋ね頂きたい。

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